発表・掲載日:2001/12/11

人間の歩行を精密に再現する進化型3次元CGシミュレーション


概要

 独立行政法人産業技術総合研究所(以下産総研、理事長:吉川弘之)と独立行政法人通信総合研究所(以下CRL、理事長:飯田尚志)けいはんな情報通信融合研究センターは共同で、リハビリテーションへの応用を目指した、人間の多様な歩行動作を精密にシミュレーションし、リアルタイムで遠隔地間3次元可視化するシステムの開発に成功しました。これにより、最適な義足の設計などを可能にしました

背景

 産総研では、生物的な原理に基づく運動生成メカニズムの解明とその工学的実現に関する研究開発を推進しています。一方、CRLけいはんな情報通信融合研究センターでは、臨場感のある超高精細な3次元バーチャルリアリティ空間を通信し共有する「3次元空間共有通信」(Internet- 3D)の研究を推進しています。今回の歩行シミュレーション技術は、両者の技術の融合により実現しました。

今回の成果

(1)人の精密な神経・筋骨格モデルによる3次元歩行生成
近年の神経生理学の知見である、生体の筋肉骨格系と神経系の相互作用によるリズミカルな運動の生成原理に基づいた、精密な「人の3次元歩行シミュレーション」を完成しました。

(2)人の神経系モデルの進化的生成
従来、試行錯誤が必要で大変な手間がかかっていた神経制御システムの構築を、「遺伝的プログラミング技術」を用いて自動的に精密に再現することに成功しました。様々な体格の人の多様な歩き方に自動的に対応できるので、義足歩行も容易にシミュレーションすることができ、義足の最適な設計寸法を、自動的に求めることが可能になりました。

(3)リアルタイム3次元CGアニメーションとその遠隔地間共有通信先進のCGテクノロジー「超幾何図形モデル」をベースにして、3次元バーチャル空間内で、歩行動作をリアルタイムで3次元アニメーションすることに成功しました。また、この「バーチャル人間の歩行動作」を遠隔の多地点間で3次元空間共有通信することに成功しました。

今後の発展

 今後、今回確立した基礎技術をベースにして、遠隔地間でのリハビリテーション、義足の設計支援、高齢者の転倒予防を目指した歩行訓練システム、そしてヒューマノイドロボットのシミュレーション等の応用を目指します。

問い合わせ

独立行政法人 産業技術総合研究所 産学官連携部門
知能システム研究部門  分散システムデザイングループ
宮下 和雄  Tel: 029-861-5963
人間福祉医工学研究部門 高齢者動作支援工学グループ
              長谷 和徳  Tel: 029-861-6169
独立行政法人 通信総合研究所
  けいはんな情報通信融合研究センター 画像グループ
              荒川 佳樹  Tel: 0774-95-2470