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経営方針

第4期の研究開発

はじめに

 持続可能な社会の構築に向けて、地球温暖化やエネルギー問題、少子高齢化の急速な進展など21世紀型課題の解決が求められています。これら諸課題に対し、私たち産総研が注力すべきテーマとして、「豊かで環境に優しい社会を実現するグリーン・テクノロジー」、「健康で安心・安全な生活を実現するライフ・テクノロジー」、「超スマート社会を実現するインフォメーション・テクノロジー」を三本柱として掲げ、研究開発を進めています。

第4期の基本方針

 平成27年度は、新たに始まる産総研の第4期中長期目標期間の初年度です。第4期の事業を開始するにあたり、目指すべき研究所として掲げた研究所像「社会ニーズ、産業ニーズを踏まえた世界最高水準の研究とその成果の“橋渡し”により、イノベーションの中心となって持続可能な社会の実現に貢献し、社会から信頼される研究所」に沿って世界最高水準の研究とその成果の「橋渡し」を行うため、以下の基本方針に基づいて第4期の事業に取り組みます。

○社会ニーズ、産業ニーズを踏まえた戦略的な課題設定
 技術マーケティング活動により、社会ニーズ、産業ニーズを的確にとらえ、戦略的に研究課題を設定し、そのための研究実施体制を機動的に編成、構築します。

○地域イノベーションの推進
 地域センターでは、地域の産業集積などの特徴を踏まえて重点化研究テーマ(看板)を設定し、最高水準の研究開発を行うとともに、公設試などと連携して地域の中小・中堅企業のニーズを把握して、オール産総研による技術の「橋渡し」を行い、地域産業の発展に貢献します。

○国民から強い信頼を寄せられる研究組織へ
 企業や社会からの信頼を得る研究活動を持続的に推進し、併せて研究成果の信頼性や業務の透明性を確保するため、安全管理・業務管理体制を強化して、リスク要因の把握と問題発生の未然防止に努め、業務遂行におけるガバナンスの向上を図ります。

○国内外の英知を結集したオープンイノベーションの牽引
 国内外の大学や地域の公設試、および企業などの多様かつ優れた技術シーズや人材を産総研内に積極的に取り込み、産総研の研究ポテンシャルを高め、わが国のイノベーションシステムの中心(ハブ)となります。

○イノベーションを創出する人材の育成と継承
 あらゆる職種・年代の人材が活躍できる人事制度と、組織への貢献を適正に評価する仕組みの導入を通じ、イノベーションを創出する人材を育成、継承します。

研究実施体制の見直しと7つの領域

 研究実施体制の見直しにあたっては、産総研のもつ技術的強み(コアコンピタンス)を伸ばし、その技術をより多くの産業界が実用化に向け利活用できるようにわかりやすく集合化するため、以下の7つの領域(5領域・2総合センター)に再編しました。情報と人間工学、材料と化学、そしてエレクトロニクスと製造をそれぞれあわせて新たな領域とし、産総研がもつ総合力を充分に発揮していくことで、持続可能な社会の構築に向けた取り組みを強化していきます。

①エネルギー・環境領域
 創エネルギー、蓄エネルギー、省エネルギーの三つの観点からエネルギー技術を体系的にとらえ、目的基礎研究・橋渡し研究を推進します。再生可能エネルギー技術では、その最大限の利用を目指したシステム実証研究を進めるとともに、電池技術では、リチウムイオン電池を超える新概念蓄電技術を、省エネルギー技術では、SiC 半導体電力変換機器の実用化技術を開発します。また、環境リスクや社会影響を評価するためのリスク評価技術、環境負荷低減のための資源リサイクル技術を開発します。

②生命工学領域
 健康長寿社会を実現するための産業技術を創出することを目指し、創薬基盤技術の開発においては、産総研が優位性を有しているバイオとIT を統合した医薬リード化合物(新薬候補化合 物)最適化技術の高度化・高速化を進め、新薬開発の加速および開発コストの低減に資する開発を行います。第4期では、製薬企業との連携をさらに深め、ベンチャー企業の創出をはじめとする技術の事業化と社会への実装を目指します。

③情報・人間工学領域
 産業競争力の強化と豊かで快適な社会の実現を目指して人間に配慮した情報技術の研究開発を行います。ビッグデータから価値を創造する人工知能技術、産業や社会システムの高度化に資するサイバーフィジカルシステム技術の開発に取り組みます。また、高齢者の運転時の状態測定などの人間計測評価技術や生活の中で使われるロボット技術を開発し、快適で安全な社会生活の実現に貢献します。

④材料・化学領域
 最終製品の競争力の源となる革新的部材・素材を提供することを目指して、材料の研究と化学の研究を統合し、グリーンサステイナブルケミストリーの推進および化学プロセスイノベーションの推進に取り組みます。また、ナノカーボンをはじめとするナノ材料の開発とその応用技術、新たなものづくり技術を牽引する無機機能材料および省エネルギー社会構築に貢献する先進構造材料と部材を開発します。

⑤エレクトロニクス・製造領域
 情報機器以外の「もの」がインターネットにつながったIoT(Internet of Things)社会の実現に向けて、「もの」から情報を得るためのセンシング技術や、その情報を低消費電力で効率よく伝送して処理する電子デバイス技術、光ネットワーク技術の研究開発を行います。これにより、社会インフラ診断の高度化や生産設備をネットワーク化した革新的生産システムの実現を目指します。

⑥地質調査総合センター
 わが国において、安心・安全な社会構築のための重要な基盤情報である地質情報を基礎として、地球環境の保全、資源・エネルギーの開発、地質災害の軽減などに関連するさまざまな問題を解決するための技術開発を行います。また、これらの地質情報や開発された技術については、効果的な発信により社会における利活用をさらに進めることを目指します。

⑦計量標準総合センター
 国の知的基盤整備計画に基づき、長さ、質量、時間などの物理標準と標準物質の整備を行い、法定計量を着実に実施するとともに、単位の定義改訂に対応して次世代計量標準の開発を推進します。これらの計量標準をより広いユーザーが利活用できる環境の整備と、情報提供や相談による普及促進に取り組みます。また、計量標準にかかる計測・分析・解析手法や計測機器などの開発・高度化を通じて、ユーザーへのソリューション提示につなげます。
 

第4期の研究体制方針図


 

「橋渡し」のための取り組み

人を育て活かす

人を呼び込みシーズを育てる
 大学などの研究者を大学などに在籍したまま産総研の正式な職員として受け入れるクロスアポイントメント制度を積極的に活用し、大学などで創出された技術シーズを産総研でブラッシュアップします。産学官の人材・技術の流動性を高め、組織の枠組みを超えたトップクラスの研究開発体制を構築することで、迅速かつ円滑に産業界へ橋渡しします。
 企業で技術シーズをおもちの方をいったん産総研に受け入れ、産総研で技術をさらに磨いて起業・事業化を支援するカーブアウト事業を行っています。企業単独で事業化するにはリスクが高いシーズについて、産総研の技術や人材を活用することで事業化の可能性を追究します。


イノベーション人材を社会へ
 若手研究者をポスドクとして雇用し、産総研での研究や産業界での実務を経験できるカリキュラムを構築し、将来のイノベーション創出を牽引する人材を育成します。また、大学院生が、大学院に在籍したまま産総研の職員として研究開発プロジェクトに参画できるようになりました。実際の開発現場で実務を経験し、社会で活躍できる人材を育成・輩出します。

もっと身近に

知財を使いやすく
 これまで産総研との共有知財を非独占実施する場合にいただいていた不実施補償料を廃止し、共有知財についておのおのの共有者が互いに単独で第三者企業と実施許諾契約を締結できるようになりました。これにより、多くの企業の皆さまに産総研の知財をお使いいただき、研究成果を活用したイノベーション創出を促進します。


施設・設備を使いやすく
 産総研の研究成果が活かされた施設・設備を使って作製した自社サンプルを出荷・販売できるようになりました。新材料の開発などでは、ユーザーに試用してもらって用途開発を進めなければならず、サプライチェーンが長ければ長いほど、実用化に至るまで時間がかかっていましたが、これにより、材料開発と用途開発を並行して進め、実用化までの時間を短縮できます。


知財・設備を出資します
 研究開発力強化法の改正により、産総研の成果を実用化し、事業活動に活用しようとする中小企業・ベンチャー企業などに対して知財や設備を現物出資することができるようになりました。一段の飛躍を図る企業への新しい支援ツールです。

技術シーズを創出し、育て、皆さまにお渡しします

全国どこでも

全国どこでも 地域企業の皆さまが求める技術について、全国の産総研の地域センターが窓口となり、オール産総研で開発します。また、公設試の職員が産総研のイノベーションコーディネータとして活動できる制度の整備など、全国47都道府県の公設試と産総研の研究拠点のネットワークを強化して全国をカバーします。開発品の貸与、技術移転、人材育成などを通じて成果を地域企業へ迅速に橋渡しします。

安全な生活を守る

安全な生活を守る 第4期では、知的基盤である地質と計量標準を二つの総合センターに再編します。防災・減災や環境保全を実現し、安全な生活を守る知的基盤として、地震や火山による自然災害の軽減や環境保全のための地質調査、あらゆる科学技術の進化に欠かせない計量標準、ライフ・テクノロジーに貢献する標準物質の研究開発などを通して安全な社会の構築に寄与します。


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