独立行政法人産業技術総合研究所
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近藤淳教授の業績

 近藤淳博士は、金属中では温度が低くなるほど伝導電子は流れやすく(電気抵抗は小さく)なるという一般原則に反し、温度を下げていくとある温度以下で電気抵抗が増大する「電気抵抗の極小現象」を示す磁性合金が存在するという長年の謎に対し、1964年、金属中に微量に含まれる磁性原子の電子スピンによる伝導電子散乱が、低温領域では電気抵抗を温度の対数関数として上昇させることを発見し、温度が下がると共に減少する原子振動による散乱との和が電気抵抗に極小を出現させることを明らかにし、「電気抵抗の極小現象」を理論的に解明した。電気抵抗極小現象に関連した多くの異常特性は「近藤効果」と呼ばれている。

 近藤効果の理論は、1立方センチメートルの金属内に存在する約1024個という途方もない数の電子の振る舞いを扱うものであり、学術的に見て「多体問題」と呼ばれる分野に属し、同じ多体問題研究のフロンティアである素粒子物理学や理論化学等の固体物理学以外の研究分野にも大きなインパクトを与えている。


近藤効果とは



【金属の電気抵抗】 金属の電気抵抗は通常温度を下げると減少します。これは電気抵抗の原因になっている原子の熱振動が、温度が下がるとともに減少して、金属の電子が通り易くなるためです(図1 (A))。電気抵抗の原因には、ほかに不純物原子があって、これによる電気抵抗は通常温度で変化しません。

【抵抗極小現象】 ところが鉄やマンガンなどの原子が不純物の場合、それから来る電気抵抗は温度が下がるとともに増大して、原子の熱振動から来る電気抵抗とあわせると、温度とともに減少した電気抵抗が逆に増大するという現象が1930 年代に見つかり(図1(B))、その理由が超伝導と並ぶ固体物理の難問でした。これらの不純物は磁性不純物といわれ、スピンを持っていて、小さな磁石のように振舞います。

【近藤効果】 近藤淳博士はスピンを持つ磁性不純物による電気抵抗がなぜ温度の減少とともに増大するかと言う問題に取り組みました。不純物のスピンは絶えずその向きを変えていますが、温度の高い時は電子の動きも速いので、不純物スピンは止まって見え、そのときには電気抵抗は温度で変化しないのです。ところが温度が低くなると電子の動きが遅くなり、電子からは不純物スピンが絶えず向きを変えているのが見えるようになります。そのときには電気抵抗が大きくなるという事を、近藤博士は計算で示しました。従来は不純物スピンが止まって見える場合の計算がされていましたが、近藤博士はそれに対する補正という形で不純物スピンが向きを変える効果を取り入れて、電気抵抗の増大を説明したのです(1964年)。

 近藤博士は抵抗極小現象を示す物質で現れる異常な熱起電力、帯磁率、比熱なども理論的に説明しました。「近藤効果」は、多数の伝導電子間に働く相互作用つまり多体効果が本質的に重要であることを示しており、その後の多体効果を扱う様々な理論手法の開発に繋がっていきました。現在では、関連する各種の現象が「近藤効果」と呼ばれています。
図1
図1 金属の電気抵抗

図2

図2 スピン反転散乱
近藤効果の展開




  • 「近藤効果」は単に希薄磁性合金だけに生じる効果に留まらず、粒子の相互作用による一般の多体問題に共通する最も基本的な性質であることが明らかにされ、物性物理のみならず素粒子物理にまで大きなインパクトを与えました。
  • 「近藤効果」はエレクトロニクスの微細化の最前線である量子ドットの世界の伝導現象でも著しく明瞭に現れることが明らかになるなど、ナノテクノロジー開拓にも必須の基本的概念となっています。
  • 重い電子系化合物における新しい現象
    局在スピンが周期的に並んだセリウムやウランの金属間化合物(高濃度近藤物質) で は、電子の質量が見かけ上10〜1000倍にも重くなったようにみえる現象が起きます。 これは、近藤効果によって電子が動きにくくなったことに起因しており、現在の物性 物理の大きな研究テーマとなっています。
  • 最近の展開
    近藤効果40周年記念論文集:日本物理学会(http://www.ipap.jp/jpsj/announcement/announce2004Dec.htm)
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