趣旨
人類が真の豊かさを共有するためには解決すべき課題がいくつも残されている。ここで言う「豊かさ」とは、単にその場限りの物質的な豊かさではなく、社会が安全で、精神的にも物質的にも繁栄しており、将来にわたってもその状態が持続的に保証されているであろうという安心感を持ちうる状態である。
これら社会の抱える課題の一部は科学技術の発展による解決が望まれているものであり、科学者・技術者の集団(科学コミュニティ)に対する社会の期待は大きい。これからの科学技術開発に求められることは、個々の技術発展の追求のみでなく、その技術が社会や自然環境に与える影響までよく考慮された、制御された(理知的な)発展であり、科学コミュニティ自身が、発展の方向性について責任をもち、社会に対して必要な提言を行っていくことが望まれる。産総研、また、産総研に働く私たちは、科学コミュニティの一員として、関係機関と協力し、科学コミュニティが社会でこれまで以上に重要な役割を果たせるよう努力していくべきである。
「科学」あるいは「研究」という行為は、人類特有の行為であり、社会の営みのなかの一部である。研究は、社会から切り離されて行うものでなく、専門としない人たちにとっても常に身近なものであってほしいものである。産総研で働く私たちは、研究活動が社会の営みの中にあることを常に意識しなくてはならない。また、上述のような社会からの負託、すなわち、自らの使命と責任を自覚し、良識に基づいて誠実に行動しなければならない。私たちは「社会とともに、社会のために(Full Research in society, for society)」活動すべきである。
以上のような理念のもと策定した。