
重要文化財の基準とメートル原器について語る平井さん
平成24年11月16日(金)、つくばカピオ別棟「カフェ・ベルガ」(茨城県つくば市)にて第36回産総研サイエンスカフェ「重要文化財になった科学機器 ―メートル原器に込められた先人の想い―」を開催しました。話題提供者は計測標準研究部門 長さ計測科 長さ標準研究室 平井亜紀子 主任研究員です。
今回の内容は、メートル原器の歴史と長さ標準の現在についてです。長さ標準の歴史や産総研の保有するメートル原器、そしてそこに込められた先人の想いについて、平井さんに紹介していただきました。

メートルの誕生からメートル原器が日本に届くまで、わかりやすく語っていただきました
突然ですが、皆さんは「定規」と「ものさし」の違いをご存知ですか。前者は線を引くための道具、後者は長さを測るための道具です。カフェでは平井さんに用意していただいた「定規」と「ものさし」を参加者に比較してもらいました。今回のお話は、このうち「ものさし」のおおもとであったメートル原器についてです。
日本のメートル原器は、有形文化財の中でも学術的価値の特に高い「歴史資料」として、重要文化財に指定されました。メートル原器と同時期に日本に届いたキログラム原器は未だ現役のため、重要文化財に指定されていないそうです。
メートルの誕生からメートル原器が日本に届くまでについても、平井さんにお話いただきました。かつて長さや重さといった単位は、権威を誇示したり、都合よく税を納めさせたりするために、各地の統治者が定めていました。しかしフランス革命を契機として、単位統一の機運が高まります。「『すべての時代に、すべての人々に』を理念としてメートル法は定められました」と平井さんは語ります。誰でも平等に使える普遍的な単位が広まることで、国際貿易や科学的活動が円滑に行なえるようになったのです。
メートルの定義を原器という人工物にすると決定した後も、先人の苦労は続きます。原器に求められる条件を満たす合金の製作やX断面の特殊な形状への整形、計測時の原器の温度や置き方にいたるまで、メートル原器には隅々まで工夫が凝らされました。その結果30本のメートル原器が作成され、うち1本が日本に割り当てられています。その後、メートル原器は関東大震災や戦災を乗り越えて日本の産業発展のために活躍し続けましたが、1960年にメートルの定義が変更されて定義としての役割を終えました。
平井さんのお話は長さ標準の今に移ります。現在、メートルの定義は光の速さに基づいて定められています。メートル原器の精度は±2×10-6m(地球の半径約6000kmに対してテニスコートの横幅約10m)でしたが、最新技術では±7×10-14m(地球の半径約6000kmに対して煙の粒子約400nm)まで精度が上がりました。日本の国家標準はこの最新技術を採用しており、その装置は産総研が保有しています。人々の生活に直接必要となる精度ではありませんが、半導体製造装置など、日本の産業を支える上で重要な役割を長さ標準は担い続けています。

ディスカッションではテーブル毎に多彩な意見が出ました

メートル原器の精巧なレプリカも参加者にご覧いただきました
ディスカッションでは、日本が今後どこまで「標準」の研究に取り組むべきかを話し合ってもらいました。長さ標準や重さ標準の精度を求めることや、LEDの光量や放射線の標準物質のように新たな標準を作ることを、日本自身がどこまで行うべきか。とても難しい問題ですが、テーブルではそれぞれ多彩な話に花が咲いたようです。メートル原器のレプリカを見ていただきながら、今回のカフェは幕を下ろしました。
次回の産総研サイエンスカフェは平成25年1月25日(金)に開催されます。テーマは「小さな植物が秘めた力 〜植物の中で働く見えないアクセルとブレーキ〜」です。是非、お申し込み下さい。
| 日時 | 2012年11月16日 金曜日 18時30分 〜 20時00分 (終了後、30分程度フリーで話題提供者とお話いただく時間をご用意しています。) |
|---|---|
| 会場 | カフェ・ベルガ 〒305-0032 つくば市竹園1-10-1(つくばカピオ別棟) ※駐車場は、周辺の有料駐車場をご利用ください。 |
| 主催 | 産業技術総合研究所 |
| 定員 | 30名 ※要予約 |
| 対象 | 高校生以上 |
| 申込締切 | 11月8日 木曜日 17時00分 |
| 参加費 | 無料(ドリンク・菓子付き) |
| 申込方法 |
参加申込につきましては、お申込フォーム、Eメール、電話でお願いいたします。
[1]サイエンスカフェ専用お申込フォーム [2]Eメール:必要事項を記入の上、事務局宛に送信 [3]電話:必要事項をお伝えください ※定員を超えた場合には抽選となります。 ※ご登録いただいた個人情報を本イベントの対応以外に使用することはありません。 |
| 問い合わせ先 |
産業技術総合研究所 広報部 産総研サイエンスカフェ事務局 〒305-8568 つくば市梅園1-1-1 中央第2 つくば本部・情報技術共同研究棟8F 電話:029-862-6211 Eメール:
※「ラヂオつくば」の番組制作に協力するため、会場で録音させていただく場合があります。
※「産総研サイエンスカフェ」を紹介する目的で、Web等で公開するための写真やビデオ撮影を行うことがあります。 |
| 産総研サイエンスカフェのページ(開催報告などを掲載) | |