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要旨集

要旨集一覧
  新ジャーナル記事 要旨 著者
9巻3号 研究論文 ナノカーボン電極による人間親和型高分子アクチュエータの開発
[PDF:1.7MB]



− 人工筋肉の実現を目指して −
人体に装着して用いる機器である人間親和型機器は、今後、ますます必要とされると予測されており、それに必要なソフトアクチュエータとして、我々は、イオン導電性高分子をベースとした電気駆動ソフトアクチュエータの開発を進めてきた。この論文では、その中で特にナノカーボンを電極とした、低電圧駆動高分子アクチュエータの開発の経緯、設計指針と現状の技術、および今後の展開について詳細に述べる。 安積 欣志
プラズマを用いたグラフェンの高品質高速大面積CVD合成
[PDF:2.5MB]



− 高スループットプロセスを目指して −
グラフェンの合成技術は熱CVD法が世界の潮流となっている。グラフェンによる透明導電フィルム等の工業利用実現のためには、さらなる高スループット生産が必要である。我々はいち早くプラズマCVD法を取り入れ、グラフェンの高速・大面積成膜技術の開発に取り組んできた。この論文では透明導電フィルム利用に向けた、グラフェンの高速・大面積プラズマ成膜プロセス開発について報告し、不純物混入の解決、グラフェン核形成密度の低減による品質向上等について報告する。 長谷川 雅考
ほか
放射性セシウム汚染灰除染技術
[PDF:2.3MB]



− ナノ粒子の吸着材としての活用と実用化アプローチ −
2011年の東日本大震災に伴う、東京電力福島第一原子力発電所からの放射性物質漏えい事故に伴い、産総研では除染技術の研究開発を進めた。その課題の緊急性から、研究開発は極めて短期間に達成することが求められた。例として、プルシアンブルー(PB)ナノ粒子を利用した汚染焼却灰の除染技術を挙げ、その推進方法を紹介する。PBナノ粒子の構造制御による放射性セシウム吸着材としての最適化、材料を粒状体等製品として利用できる形にする成型、汚染灰からの放射性セシウムの抽出法等、技術全体を一貫して開発した。この全体的な開発の短期的な実現は、材料研究者、計算科学研究者、地質研究者等に加え、各企業との一体的な連携により達成できた。 川本 徹
ほか
高性能吸着剤ハスクレイ®の開発
[PDF:2.4MB]



− 粘土系ナノ粒子による省エネシステム用吸着剤の開発展開 −
温室効果ガス削減が求められる状況の中、優れた省エネシステムに利用可能な吸着剤として、水蒸気吸着性能に優れかつ低温熱源を用いて再生が可能な無機多孔質物質ハスクレイを開発した。この論文では、粘土の研究と天然に存在するナノ物質の研究を経て、ハスクレイの合成に至った経緯、および省エネ用吸着剤として広く利用されるために必要な事項を示す。 鈴木 正哉
ほか
スーパーグロース法
[PDF:2.4MB]



− 単層カーボンナノチューブの工業的量産技術開発 −
飯島澄男博士による単層カーボンナノチューブ(CNT)の発見から20年以上を経た現在も、単層CNTは既存の材料ではなし得ない電気伝導性、熱伝導性、機械的強度を実現する革新的材料として期待され、世界各国で研究開発が続けられている。しかし単層CNTは、一足先に商業化された多層CNTに比べて合成の成長効率が低く高価格になるため、未だ工業的に利用されているとはいえない状況である。産業技術総合研究所で開発された革新的な気相合成法のスーパーグロース法によって単層CNTが抱えていた複数の技術的課題が一挙に解決され、工業的応用への扉が大きく開かれた。高品質な単層CNTの合成が可能なスーパーグロース法の量産プロセス開発という、実用化を見据えて進められた技術開発について、産学連携の視点から述べる。 畠 賢治
 
  新ジャーナル記事 要旨 著者
9巻2号 研究論文 地球化学標準物質の開発と利用
[PDF:1.4MB]



− 地質試料元素分析の信頼性向上のために −
地質調査総合センターでは、旧工業技術院地質調査所時代から約50年にわたり、約50種類の標準物質を発行しており、これらは地質試料の化学分析の信頼性を高める標準物質として世界中で使われている。岩石、鉱石・鉱物、土壌、底質等の地質試料は多様な元素を高濃度で含んでいるため、正確な化学分析を行うためには、主要成分の含有量が類似し、目的元素の濃度があらかじめ定められた地球化学標準物質を用いる必要がある。この論文では、世界および日本における地球化学標準物質開発のシナリオと、その後の発展および変化を述べ、試料の選択から、粉砕過程を経て、標準値の決定およびデータの公開に至る研究プロセスを述べる。 岡井 貴司
都市域の3次元地質地盤図
[PDF:1.3MB]



− 都市平野部の新たな地質情報整備 −
都市域の地質地盤情報のニーズは高いが、地形が平坦な都市平野部では従来の紙ベースの地質図では地下の地質情報の表現に限度がある。信頼性を確保しながら地下地質をわかりやすく表現し、さらにはデータの2次利用を容易にする方策を検討した結果、インターネットを通して利用する3次元地質地盤図を構想するに至った。3次元地質モデルは、信頼のおけるボーリングデータを基準にし、高度なモデリング技術を駆使して構築する。地質災害リスク評価等に資する都市域の新たな地質情報整備として展開するために、現在、千葉県北部をモデル地域に設定してプロトタイプ作成を試みている。 中澤 努
ほか
極小微動アレイによる浅部構造探査システム
[PDF:1.5MB]



− 大量データの蓄積と利活用に向けて −
著者らの目標は、地質・地盤に関連するさまざまな社会的ニーズに対応して、できる限り高密度・高分解能で定量的な地下S波速度構造の情報を提供することである。S波速度は地盤の揺れやすさや固さに直結する物性値なので、例えば、地震災害軽減のための地震ゾーニングの高精度化等に寄与できる。その一環として、半径0.6mの極小アレイを用いて常時微動を15分間観測するだけで数mから数十mの深さのS波速度を探査する観測・解析システムを構築中である。開発のポイントは、アレイ観測・解析の徹底的な簡易化、客観化とそれによる自動化、品質管理である。構築中のシステムにより、今後取得されると期待される膨大な量の微動データに対応する。 長 郁夫
ほか
高温高圧岩石変形実験技術の開発
[PDF:1.2MB]



− 千年スケールで進行する地質現象の加速化と検証 −
地震災害に正しく備えるためには、地震発生予測に関する正確な情報を社会へ発信する必要がある。そこで地震予測精度を向上させるために、物理プロセスを考慮した地震発生モデルを構築する。地質の調査を基に過去に地下深部でおきたプロセスのモデル化を行い、実験室で再現することでそれを検証する。その際、自然界と実験室の間の、環境の違いと時間の違いという二つの点を解決するために、既存の技術と独自開発した技術を統合した岩石実験手法を開発した。千年スケールで進行する地質現象を加速化して検証する技術と手法を報告する。 増田 幸治
 
  新ジャーナル記事 要旨 著者
9巻1号 研究論文 3次元IC積層実装技術の実用化への取り組み
[PDF:1.7MB]



− 基盤技術から実用技術へどのようにしてステップアップするのか? −
ICデバイスを縦方向に積層して実装集積する3次元IC積層実装技術は、半導体デバイス、MEMSデバイス、パワーデバイス等の集積技術として、従来の基板面内での2次元的な集積化に加えて、基板を積層して3次元的に集積化できるため、近年、期待が高まっている。この論文では、半導体デバイスの3次元IC積層実装に求められる高密度・高集積の電子ハードウエア構築基盤技術を確立させるとともに、企業と連携して量産化技術への開発支援も行いながら、実用化に向けた応用システム開発の流れを作り出すために実施した、初期の応用フェーズの研究開発について、報告する。 青柳 昌宏
ほか
レアメタル資源の安定供給を目指して
[PDF:1.1MB]



− レアアース資源確保のための取り組みと課題 −
新興工業国の経済発展により、21世紀に入り金属資源価格が高騰し、さらに2009-2012年には中国のレアアース輸出制限によるレアアース危機が勃発した。これらを受けて、2010年より産総研では、レアメタル資源研究拠点の整備、海外地質調査機関との協力関係の構築を進めた。さらに、南ア、米国、ブラジル、モンゴル等でのレアアース資源調査を積極的に進めた。特に南アでは、有望な重レアアース鉱徴地を発見した。2011年秋以降、レアアース価格の暴落により、世界中のレアアース資源開発計画が頓挫し、レアメタル資源開発のリスクの高さを露呈した。民間にそのリスクに耐えて次のレアアース危機へ備えを求めるのは困難であり、産総研による調査研究体制の継続が求められている。 高木 哲一
構成型研究におけるシナリオ:その役割と表現
[PDF:975KB]



− シンセシオロジー誌の掲載論文による検証の試み −
科学技術の方法によって社会的な価値を実現するために構成型研究が民間企業、公的研究機関、大学で行われている。シンセシオロジー誌は構成型研究のプロセスと成果を記述する学術論文誌として刊行されたが、編集委員会は著者に対して論文の中で研究のシナリオを記述することを要請してきた。この論文では分析型研究と対比して構成型研究の属性を考察し、またシナリオがもっている構造と性質を明らかにする。その上で、シンセシオロジー誌にこれまで掲載された論文を調査して、シナリオは構成型研究において中心的役割を果たし、それを科学技術の言葉で表現することが可能であることを示す。 小野 晃
ほか
論説 太陽電池モジュールの信頼性向上と試験法開発に関するコンソーシアム研究
[PDF:928KB]



− 「高信頼性太陽電池モジュール開発・評価コンソーシアム」の運営 −
太陽電池モジュールの信頼性向上と長寿命化、さらにはモジュール寿命を正確に評価可能な試験法の開発を目的として、モジュール部材メーカーを中心に延べ90以上の機関が参画した「高信頼性太陽電池モジュール開発・評価コンソーシアム」の設立経緯と運営方針について紹介する。競合する企業を含む多数の機関が参画するコンソーシアムが円滑に運営されるには、どのような点に留意すべきかを運営側の視点で解説する。 増田 淳
ほか
 
  記事 要旨 著者
8巻4号 研究論文 プレス加工の課題解決における中小企業と産総研との連携の成果
[PDF:1.2MB]



− 現場へ与える、ものづくり思想の影響 −
製造技術における中小企業と産総研との連携では、単に技術の移転だけではなく、原因の究明、問題解決の手順が重要である。原因をいかに見出すかは、解決案の策定以上に時間が掛かるが、一度経験することにより、次のステップへの展開では迅速化が図れる。プレス加工による微細穴あけでの共同研究という事例を通して、企業側、産総研側で原因の究明と問題解決がどのように展開したかを紹介する。結果的には、初期に考えた対策である表面処理による工具寿命の長期化ではなく、共同研究を継続することで分かった別の問題点を克服したことが製造現場にとって展開がしやすくコスト効果の高いものであった。このような経験を得ることで、企業とは研究が継続し、その後別テーマのサポインテーマの展開へと進んだ。企業の担当者視点と産総研の研究者視点の両面から製造技術での連携を紹介する。 小松 隆史
ほか
内燃機関の熱効率向上に向けた先進着火技術
[PDF:1.9MB]



− レーザー着火によるガスエンジンの高度化実証研究 −
近年の非在来型天然ガス資源開発の拡大に伴い、コジェネレーション等に用いられる天然ガスエンジンが注目されている。その導入普及の促進のためにはさらなる熱効率の向上が重要であり、そのためには過給を組み合わせた燃焼の希薄化が必須である。しかし、従来から用いられているスパークプラグでは、この高圧で希薄な予混合気への着火は困難になりつつある。その様な状況のなか、産総研においてこれまで取り組まれてきた代替着火技術としてのレーザー着火研究を紹介する。レーザー着火によるガスエンジンの希薄安定動作限界の拡大、過給下での安定着火、並びに多点レーザー着火による熱効率の向上の実証研究について解説し、レーザー着火技術の今後の可能性も含めて論じる。 高橋 栄一
ほか
糖鎖微量迅速解析システムの開発
[PDF:1.4MB]



− 誰でも簡単に糖鎖を調べることができる時代へ −
糖鎖構造解析は専門家が職人芸で行ってきた、いわば匠の技であり、そのことが糖鎖研究普及の一つの大きなボトルネックになっていた。誰でも簡単に糖鎖構造解析ができるようになれば、糖鎖研究の裾野が広がり、謎に包まれた糖鎖の機能解明とその応用が急速に進展することが期待される。糖鎖研究の基盤構築の一つとして取り組んだ糖鎖多段階タンデムMSスペクトルデータベースの構築と、それを活用した糖鎖微量迅速解析システムの開発について述べる。 亀山 昭彦
ほか
ガスセンサを用いたヘルスケアセンシング技術の開発
[PDF:893KB]



− 呼気分析用医療機器に向けて −
人間の生体情報を非侵襲的に得る呼気等の生体ガスモニタリング技術において、呼気分析システムが広く普及するためにはシステムの低コスト化が必須となる。この研究では、複ガスセンサ素子単体に十分な感度とガス選択性を持たせることにより、複雑な前処理システムを必要とせず、かつ医療診断が可能なレベルまでの高性能な呼気ガス検知機器の作製を目標として、センサデバイスおよび検知機の開発を行った。センサおよび検知機器開発に必要な構成要素を、社会的なニーズという境界条件に合わせて、各要素の特長を最大に引き出すことができた。 申 ウソク
ほか
 
  記事 要旨 著者
8巻3号 研究論文 大気圧電子顕微鏡ASEMによる水中観察法の開発
[PDF:1.6MB]



− 半導体の超薄膜技術とバイオ顕微鏡の融合研究 −
タンパク質の組織内・細胞内での分布は高度に制御されており、刺激に応じて数秒以内にダイナミックに変化することも多い。このような分子機構が脳等の情報処理を支えており、その解明には多要素の変化を時間経過と共に解析する必要がある。そのため、迅速な試料作製と高分解能観察が可能な高スループット電子顕微鏡(電顕)が求められている。新開発の大気圧走査電顕(ASEM)は、水溶液中の試料をディッシュ底の薄膜を透して倒立走査電顕で観察する。試料は脱水なしに光学顕微鏡(光顕)並の短い手間で作製でき、分解能は薄膜近くで8nmである。細胞や組織の分子分布、さらには電気化学反応や金属の融解・凝固も観察でき、癌や感染症の診断機器として期待される。 小椋 俊彦
ほか
交流電圧標準を導く薄膜型サーマルコンバータの開発
[PDF:4.1MB]



− 交流電圧標準のトレーサビリティ体系構築の取り組み −
国家標準の交流電圧標準は、サーマルコンバータと呼ばれる交直変換器を用いて、直流電圧標準と交流電圧を比較測定して導かれている。しかし、サーマルコンバータを作製可能な標準機関は少なく、入手が困難であるため、国家標準の範囲拡張が難しい状況であった。また、従来のサーマルコンバータは、壊れやすく、大量の校正を行う校正事業者の校正器物として使いにくいため、国家標準機関で普及するのみであった。今回、作製方法の簡易化と従来の性能を改善する目的で、新型のサーマルコンバータの開発を行った。新型サーマルコンバータは窒化アルミ基板を採用することで、耐久性が向上し、産業現場に近い校正室でも校正器物として使用可能となった。 藤木 弘之
ほか
製造工程と製品のグリーン化を実現するためのレーザーを用いた材料プロセッシング技術の開発
[PDF:1.4MB]



− 光を用いたものづくり手法の確立と社会への貢献を目指して −
レーザーを用いた材料プロセッシング技術は、高い加工精度を要求される産業分野で着実に応用の幅を広げている。ニーズ側からの高速化、微細化、高品位化等の加工要求は年々増大しており、レーザー加工への期待は大きい。レーザー加工機システムのハード面が進歩し、光照射による励起状態に続く多様な過程の現象理解が進むことで、局所場における高速・高品位な表面加工が実施できる状況が整いつつある。この論文では、光励起過程に基づくレーザープロセッシング技術を用いた局所場表面加工技術を主題とし、製造工程と製品のグリーン化を実現するためのシナリオならびにそれを達成する道筋、要素技術の選択と構成の考察を行った。さらに、実用化に向けた課題を整理した。 新納 弘之
高度な専門知識不要のIT システム開発ツール:MZ Platform
[PDF:1.2MB]



− 製造業におけるエンドユーザー開発の実現 −
短納期や多品種生産への対応、品質保証責任、トレーサビリティの確保等、製造業に対する社会的要求が高まりつつある中、業務革新を推進し、競争力の維持向上を図るためにはIT化への取り組みが不可欠であると広く認識されている。しかし、特に中小企業では、ITシステムの開発や導入、運用のための負担が企業規模に対して非常に大きく、IT化を進められないというケースが多く見られる。このような問題を解決するため、高度な専門知識を持たずとも製造業の技術者が自らITシステムを構築・運用できるツールMZ Platformを開発した。その研究開発アプローチ、成果普及活動について述べるとともに、有効性について考察する。 澤田 浩之
ほか
 
  記事 要旨 著者
8巻2号 研究論文 水素エネルギー社会実現に向けた高圧水素ガス中材料試験装置の開発と材料評価方法の国際比較
[PDF:938KB]



− 国際標準化への貢献を目指した取り組み −
安全性と経済性を両立させた水素エネルギー社会の実現に向けて、燃料電池自動車および水素ステーションの普及を進めるためには、高圧水素ガス関連機器に使用される材料の使用基準について国際調和を図ることが重要である。そのため、高圧水素ガス中で使用される金属材料に与える水素の影響を正確に評価できる手法の確立と、その手法を用いた高圧水素ガス関連機器に使用可能な鋼種の見極めが求められている。我々は、120 MPaまでの高圧水素ガス中で引張試験、破壊靭性試験、遅れ破壊試験等が可能な材料試験装置群を開発し、その運用ノウハウを蓄積するとともに、汎用金属材料についての材料試験データを収集している。特に、サンディア国立研究所と協力して、Cr-Mo系低合金鋼の日米の規格材について破壊靭性試験方法の国際比較を実施し、変位増加法で求めた破壊靭性値は高圧水素ガス中での金属材料の評価に有効なことを見いだした。 飯島 高志
ほか
NEDOプロジェクト開発成果の社会的便益に関する研究
[PDF:2.2MB]



− 「NEDOインサイド製品」トップ70に関する考察 −
NEDOプロジェクトにより生み出された開発成果をコア技術として活用した製品やプロセスを「NEDOインサイド製品」と定義し、直近の売上、将来の売上見込等の売上効果、雇用創出効果、CO2削減効果等について分析、試算を行ったところ、直近の売上は4.08兆円/2010年、2011~2020年までの将来の売上見込額は69.1兆円と試算された。また、2011年~20年までの雇用創出効果は、10.9~18.5万人/年、CO2削減効果では、5,300万トン/年程度の削減効果があることが明らかとなった。さらに、2000年以降に開発された部材・部品、加工技術の成果が、最近の家電製品、コンピューター、自動車関連製品の中で数多く利用されていることを体系的に示すと共に、社会的便益が大きい事例としてリサイクルシステムの構築に、NEDOプロジェクトが大きく貢献していることを明らかにした。 山下 勝
ほか
電子加速器を利用した研究の産業技術への橋渡し
[PDF:1MB]



− レーザーコンプトン光子ビームの発生と非破壊検査への応用 −
原子核の研究等に用いられているレーザーコンプトン光子ビームを非破壊検査技術に応用し、透過力の強い産業用ラジオグラフィ技術の実証研究を行った。大型加速器の利用研究・維持管理等を行いながら新しい研究を立ち上げた経過を整理し、要素技術の開発と高度化に始まり、ユーザー利用研究の推進、研究成果の検証、そして新たな研究の方向性を定めて、それに向かって進んでいく過程について、技術的な説明を交えて解説した。研究実施例を基に、橋渡し研究の方法論を抽出することを試みた。 豊川 弘之
導波モードセンサーを用いたインフルエンザウイルスの検出
[PDF:1.6MB]



− 手のひらサイズの高感度センサーを開発 −
我々はかつてシンセシオロジー誌において、導波モードセンサーの開発を報告した。この論文では、波長掃引方式の開発や装置の小型化方法についての研究紹介を行うとともに、応用例としてインフルエンザウイルスH3N2とその他の亜型の識別が明確にできたことを報告する。また我々はシアル酸の吸着の違いによるH3N2型とH5N1型の識別が導波モードセンサーで可能であることを示した。イムノクロマトグラフィー、ELISA、SPRとの感度比較をH3N2 Udorn株を用いて行い、この中では導波モードセンサーが最も高感度であることを確認した。このような小型高感度センサーは感染症の国内への侵入防止に対する水際対策として空港、航空機内、アリーナ等で有効であると考えている。 粟津 浩一
ほか
 
  記事 要旨 著者
8巻1号 研究論文 技術アーキテクチャ分析の提案
[PDF:2MB]



− カーナビゲーション開発への適用事例 −
近年、製品開発には多くの要素技術を必要としており、どのような要素技術を組み合わせるかは研究開発マネジメント上の重要な課題である。この研究は、製品の機能と要素技術の関係、要素技術の間の補完・代替関係といった技術アーキテクチャ(要素技術の組み合わせ方)を図示して分析する新たな手法を提案した。また、カーナビゲーションのイノベーションにおいて、要素技術の組み合わせ方は何度も変化して、製品が進化したので、この分析手法をこの事例に適用した。これにより、技術アーキテクチャの検討手法についての重要な知見を得た。 能見 利彦
ほか
過酸化水素を用いるクリーンで実用的な酸化技術
[PDF:2.3MB]



− 新規触媒の開発とファインケミカルズへの展開 −
酸化反応は全化学プロセスの3割以上を占めると言われる最重要な反応だが、同時に環境負荷の大きなプロセスとしても知られている。我々は反応後に水しか排出しない過酸化水素に注目し、過酸化水素を用いるクリーンな酸化反応の開発に取り組んだ。その結果、ハロゲンフリー、有機溶媒不要、金属触媒設計等の技術要素を統合した過酸化水素酸化技術の開発に成功し、グリーン・サステイナブルケミストリーの具体例として世界で最初に示した。次に、開発した過酸化水素酸化基盤技術の実用化に挑戦した。企業との緊密な共同研究により、コスト削減やスケールアップ等の適切なマイルストーンを設置して触媒開発を進め、超長寿命絶縁膜など高機能な化学品の製造につなげた。 今 喜裕
ほか
有害物質規制に対応するためのプラスチック認証標準物質の開発
[PDF2.2MB]



− RoHS指令対応の重金属分析用および臭素系難燃剤分析用に −
RoHS指令は日本の産業界へ大きなインパクトを与えた。規制対応の製品を製造するためには原料・素材の評価が重要であるが、特にプラスチック標準物質が当時世界的にほとんどなく、産総研計量標準総合センター(NMIJ)では産業界の求めに応じて迅速にプラスチック標準物質を開発した。まずはどのような標準物質を作るべきかを考えて開発プランを設計した。候補標準物質に特性値を付与するために、分析法(均質性評価法、分解法、定量法)の開発が重要で色々な試行錯誤を行った。また、世界的に通用するものにするために、メートル条約下の相互承認協定に関わるデータベースへの校正・測定能力の登録を目指した。国内外への頒布の状況や、開発から今日までの活動を紹介する。 日置 昭治
ほか
マグネシウム合金連続鋳造材の鍛造プロセス開発
[PDF:2.4MB]



− 結晶粒微細化を利用した鍛造技術 −
省エネルギー・省資源等の社会的要請を背景に、広範囲の工業製品において軽量化が課題となっている。マグネシウム合金は構造用金属材料の中で最も軽量であるため、この課題解決に対する有力な候補である。マグネシウム合金部材の作製法として、寸法精度、部材強度の点で優れている鍛造技術の確立が産業界から求められている。産総研および鍛造企業は双方の技術ポテンシャルを融合してマグネシウム合金連続鋳造材の鍛造プロセス開発に取り組み、現状よりも低コストで高強度のマグネシウム鍛造部材の試作に成功した。そして、特に軽量化が求められる用途では開発プロセスが実用化できる見通しを得た。この論文では技術的成果の概要を述べるとともに、研究背景、目標設定、課題解決のための要素技術、その統合プロセスと構成等を述べる。 斎藤 尚文
ほか
 
  記事 要旨 著者
7巻4号 研究論文 人工物工学研究の新しい展開
[PDF:3.1MB]


− 個のモデリング・社会技術化へ −
東京大学人工物工学研究センターは、人工物工学に関する諸問題を解決するために設立され、現在第Ⅲ期に入っている。問題解決シナリオとして、まず、問題解決を問題設定の側面から扱う共創的なアプローチを採用する。データ分析法や計算科学、シミュレーションを基盤とし、実験経済学、実験心理学的手法を組み入れたモデル化を指向する。個の認識過程、認識に基づく個の活動、さらには個の価値形成という3つの側面に注目したモデル化を行う。この提案は、マルチステークホルダーの存在による社会技術的な側面と、個のモデリングという人間的な側面の両者を包含しており、製品サービスシステムのモデル化等の新しい問題設定がなされている。 太田 順
ほか
日常的に利用可能な疲労計測システムの開発
[PDF:2.6MB]



− フリッカー疲労検査をPCやスマートフォンを使って生活環境で実現 −
日々の精神的疲労状態のモニタリングは、交通安全や健康管理のための非常に重要な要素である。これまでに疲労状態を評価するさまざまな指標が開発され、人間工学や産業衛生等の研究分野における研究ツールとして用いられてきた。我々は、研究のために用いられてきた精神的疲労のロバストな計測技術を、日常生活における実用的精神的疲労モニタリングのために低コストで提供することを目的とした技術開発を行った。 岩木 直
ほか
メタンハイドレート開発に係る地層特性評価技術の開発
[PDF5.9MB]



− 現場への適用を目指して −
メタンハイドレート(MH)は次世代のエネルギー資源として期待されており、有効なガス生産手法として減圧法が提案されている。この減圧法を適用した場合にはMH層の圧密やMH分解に伴う変形が予想されており、変形の影響範囲の把握や変形に伴う坑井等の海底設備への影響を評価することが長期的に安全な生産技術を開発する上で必要である。そこで、地層の変形挙動や坑井の健全性評価を進めるために地層変形シミュレータ(COTHMA)の開発を中心とした地層特性評価技術の開発を進めた。現在、地層特性評価技術として「地層変形シミュレータの開発」、「坑井の健全性評価」と「広域の地層変形評価」の3課題の研究開発を進めており、この論文ではその実用化に向けた技術の体系化に関して論じる。 天満 則夫
4次元放射線治療システムに関する国際標準化
[PDF:3.2MB]



− 照射効果の向上と安全性の確保 −
がんの放射線治療においては患者の呼吸等にともなって放射線の照射中に患部の位置が変化する可能性がある。放射線の患部への照射効果を向上させるとともに、周辺の正常部位へのダメージを最小化するために、患部の3次元的な位置の時間的な変化を考慮した4次元放射線治療が最近日本で開発され治療効果を上げている。この時間軸を付加した4次元放射線治療を実現するシステムの安全性に関する技術的要件を盛り込んだ規格を日本から国際電気標準会議(IEC)に提案した。理由は、IECの国際標準は、各国の規制当局によって引用されると、強制力を有するようになるため、IECにおける国際標準化活動は、4次元放射線治療システムの確固とした安全性担保のために非常に効果的であるためである。この論文は、今後さらに需要が増す4次元放射線治療システムに関する国際標準化の戦略について分析した内容をまとめたものである。戦略の要は、4次元放射線治療システムの安全性に関する技術的要件の国際標準化に焦点を絞り、臨床的視点を盛り込む形で、幅広い分野の専門家の意見を結集して国際的な合意形成を図ることである。今後4次元放射線治療を一層普及させるために、このような戦略にもとづいて、4次元放射線治療システムを構成する個別装置に関する既存規格の改訂に加えて、4次元放射線治療システム全体についてシステムとしての安全性評価を行ったうえで、新しい規格の作成を推進する。 平田 雄一
ほか
塗布熱分解法による超電導膜の合成
[PDF:3.1MB]



− 限流器等への研究展開 −
酸化物超電導体を薄膜や長尺テープ状に加工できれば電力分野やマイクロ波デバイス等への応用が図れるが、これら超電導体は脆く難加工性であるため、まず超電導薄膜製造技術の確立が重要である。この論文では、事故電流抑制に有望な限流器応用を目的として、塗布熱分解法(MOD)により高品質な大面積超電導膜の合成技術を開発した際に、製品ニーズに対応する目標を達成するために採用したシナリオや要素技術等を紹介する。塗布熱分解法は、原料溶液を基板に塗って焼成するだけという低コストで簡便な金属酸化物の成膜技術である。 真部 高明
ほか
 
  記事 要旨 著者
7巻3号 研究論文 放射線による生体障害を軽減する高安定化細胞増殖因子の開発
[PDF:2.3MB]


− 放射線防護剤の創薬に向けた基礎研究機関における研究開発 −
高線量の放射線被ばくによって生体が受ける障害を軽減・治療するための生物学的機構を介する放射線防護剤の有望な候補として、既存の医薬品を凌ぐ活性を有する新規シグナル分子(細胞機能を調節する生理活性タンパク質)「FGFC」(fibroblast growth factor chimeric protein)を開発した。今後、放射線関連機関に備蓄する放射線防護剤として採用される可能性のある、このタンパク質を医薬開発するための環境整備を、基礎研究機関において可能な限り高いレベルで進めることを目指している。 今村 亨
自己抗体解析のためのプロテインアレイ開発
[PDF:2.6MB]



− 生体防御系を利用した総合的疾患診断に向けて −
我々はポストヒトゲノム研究としてプロテオミクス研究を推進し、ヒトタンパク質の機能解析、タンパク質相互作用、タンパク質構造解析等を大規模に行うための技術基盤の整備を行ってきた。これまでに開発したヒトタンパク質発現リソース、タンパク質発現技術を利用し、プロテインアレイを作製することで血清中に含まれている自己抗体のプロファイリングを世界で最も正確に行うことができる。生体の異常に敏感に応答する生体防御システムを、疾患の検出に利用することは非常に理にかなっていると考えられる。我々が開発するプロテインアレイは生体防御システムを利用した早期診断を可能にし、安全・安心な国民生活を実現する。 川上 和孝
ほか
内部熱交換式蒸留塔(HIDiC)の技術開発
[PDF3.3MB]



− バイオエタノール蒸留のベンチプラントに至る実証研究 −
化学産業界における分離技術の主役である蒸留技術の抜本的な省エネルギー化のために、内部熱交換式蒸留塔(HIDiC)の実用化のための基盤技術開発をNEDOプロジェクトとして遂行してきた。大きな省エネ効果を確認できた本開発技術の普及のために、ソフトバイオマスからの発酵エタノールの蒸留濃縮プロセスに適用を試み、その省エネ効果を実証するベンチプラントを設計・製作・建設することができた。試運転の結果、NEDOプロジェクト「セルロースエタノールの環境調和型統合プロセス開発」において設定された濃縮および省エネの目標を達成でき、成功裏に終了した。この技術中の圧縮機不要のHIDiCが将来のプラントの大型化につながる可能性を有していることも含めて、研究開発とその進め方について論じる。 片岡 邦夫
ほか
漏えいに強いパスワード認証とその応用
[PDF:1.8MB]



− 短いパスワードを許容しながら情報漏えい耐性を実現 −
パスワードはネットワーク上のユーザーを確認し、そのユーザーとの間に暗号化通信路を作成する遠隔ユーザー認証や、ファイルの暗号化等の用途で広く利用されている。しかし、パスワードには、それが盗まれ悪用されるセキュリティ上の問題や、長いパスワードを複数覚えられない利便性の問題があり、それらの改善が求められている。この研究の目的は、これらの問題を解決する新たな方式を考案、実用化し、社会に提供することにある。この論文において、この目的を達成するために取り組んだ研究の戦略と道筋について紹介する。 古原 和邦
ほか
低環境負荷表面処理技術の開発
[PDF:2.3MB]



− 有機フッ素化合物および凹凸加工を用いない新規はつ液処理の実用化を目指して −
液滴が残りにくい固体表面の開発は、汚れ付着防止、防食性の向上、目詰まり防止、液流制御等、さまざまな工業分野で望まれている。この論文では、新規はつ液処理技術の短期実用化を目指した我々の研究戦略を紹介する。既存技術を類型化し、研究開始前に綿密な戦略を立てることで、第1種基礎研究から第2種基礎研究、実用化への移行時間を大幅に短縮することができた。また、広報活動や企業への試料提供を通じ、我々が開発したはつ液処理技術を活かすことが可能な要素技術を持つ企業との出会いにより、わずか1年足らずで量産規模でのコーティング技術を確立するに至った。
穂積 篤
ほか
 
  記事 要旨 著者
7巻2号 研究論文 通信の大容量化に対応する「長さ」の国家標準
[PDF:2.2MB]



− ファイバー型光周波数コムの開発 −
光周波数コムは、可視~近赤外波長域において、等しい周波数間隔でモードが並ぶ光周波数のものさしであり、光とマイクロ波領域の周波数とを精密に比較するなど、大きな技術革新を起こした。しかし、当初用いられていた、固体レーザーを用いた光周波数コムは、大型・高価で、かつ長時間安定に動作させることが困難だった。我々はファイバーレーザーを用いた光コムに早くから着目して研究開発を進めてきた。特に、レーザーも含めた光コムシステムの産総研内での開発に成功してからは、通信帯波長におけるレーザー周波数の校正をはじめ、長さの国家標準、そして次世代光周波数標準のための新しいレーザー制御技術を開発するなど、独自性のある成果を挙げている。 稲場 肇
ほか
ソーラー水素製造の研究開発
[PDF:2.1MB]



− 独創的な光触媒−電解ハイブリッドシステムの実現を目指して −
新しい太陽エネルギー変換技術の実用化および再生可能エネルギー社会の実現のためには、今から方向性を見定めて段階的かつ戦略的に研究することが重要である。この論文では、「ソーラー水素製造」の意義を明確化した。さまざまなソーラー水素製造技術を比較し、その実現可能性を議論した。特に著者らが開発した産総研の独自技術である「光触媒−電解ハイブリッドシステム」について、他の技術と比較しながらその有効性を検討した。コスト試算を行うことで、このシステムが低コストのソーラー水素製造のための有力な候補技術になることを示すとともに、その実用化に向けたシナリオについて議論した。 佐山 和弘
ほか
モジュール化に基づく高機能暗号の設計
[PDF:2.4MB]



− 実社会への高機能暗号の導入における障壁の低減に向けて −
この論文では新たに設計される高機能暗号技術が提供する機能や安全性について第三者が理解することが容易でないことが同技術を実社会へ導入する際の大きな障壁となっていることを指摘し、それを軽減するための設計思想について議論を行う。そのような高機能暗号技術の例として代理再暗号化技術を取り上げ、提案する設計手法によってそのような障壁が軽減されていることを論ずる。 花岡 悟一郎
ほか
糖鎖プロファイリング技術がもたらすパラダイムシフト
[PDF:3.4MB]



− フロンタル・アフィニティ・クロマトグラフィーからエバネッセント波励起蛍光検出法へ −
糖鎖は、遺伝子、タンパク質に次ぐ第3の生命鎖と言われるが、複雑な構造等が障害となり機能の解明は大幅に遅れている。近年、グライコミクスと呼ばれる糖鎖の総合解析が、プロテオミクスの隆盛に後押しされるかたちで進行し出した。その中で、糖鎖プロファイリングと呼ばれる簡易解析法が注目を浴びている。レクチンマイクロアレイは、特異性の異なる数十種の糖結合タンパク質(レクチン)をスライドガラス上にプリントし、蛍光標識された糖タンパク質や細胞抽出液を反応させるという新たな解析手法である。従来法と異なり、糖鎖の遊離と相互分離を必要としない点が利点であり、これにより、細胞の起源や状態を反映した糖鎖プロファイルが迅速、簡便に得られるようになった。レクチンマイクロアレイは、今や、腫瘍マーカー探索、幹細胞品質管理、バイオ医薬品開発等、さまざまなバイオ分野で利用される先鋭技術である。しかし、その実現には先行技術であるフロンタル・アフィニティ・クロマトグラフィーの高性能化とそれを用いた原理検証が必要であった。開発からの10年を振り返る。 平林 淳
ボールペン技術による家庭用高精細映像光伝送システム開発
[PDF:2.5MB]



− 安価で簡易な光接続を可能とするボールペン型光インターコネクトの提案 −
ハイビジョン映像の品質を超える高精細なビデオ・フォーマットが開発されているが、その伝送のための高速データ通信技術は必ずしも一般家庭への適用が容易ではない。家庭向けには、高速通信というテクニカルな要求だけではなく、取り扱い易さ、接続不良のない信頼性、入手しやすい価格等の条件が満たされる必要があり、高速通信で代表的な石英系光ファイバーは、脆く折れやすい上、低コストで精度のよい簡単接続が困難なため、消費者のニーズに合わない。この研究では、折れにくく高速通信が可能な屈折率分布型プラスチック光ファイバーの端面に、球状のガラス・コリメータレンズを組み込んだ超小型ビーム拡大インターコネクトを、低コストで精度の高いボールペン製造技術の応用で実現し、4K3D高精細非圧縮映像伝送実験によるシステム検証を行った。 当麻 哲哉
ほか
 
  記事 要旨 著者
7巻1号 研究論文 熱物性データの生産と利用の社会システム
[PDF:7.2MB]


− レーザフラッシュ法による熱拡散率の計測技術・計量標準・標準化・データベース −
レーザフラッシュ法による熱拡散率の計測技術の開発、計量標準と標準物質の整備、計測技術の標準化に体系的に取り組み、信頼性の高い熱拡散率データを効率的かつ迅速に社会に供給するシステムを実現した。レーザフラッシュ法を精密化するために開発されたレーザビームの均一化技術、高速放射測温技術およびデータ解析技術により実用測定装置による熱拡散率計測の不確かさが低減され、新規に制定された複数のJIS規格およびISO規格に反映された。さらにJIS規格の最新の改定に際しては不確かさの評価法と標準物質による校正法が記載された。このようなシステムにより生み出される熱物性データはデータベースに収録されインターネット公開されている。 馬場 哲也
ほか
オープンイノベーションと先端機器共用施設
[PDF:2.1MB]



− 共用施設が実現する協創場とその戦略的活用方策 −
先端機器を設置した共用施設を産学官、国内外に公開し、異分野融合や人材流動を促進する場を整備することが、研究開発力を効率的に強化し、オープンイノベーションを推進するための実行力を伴う施策であると広く認識されるに至り、世界各国の公的機関で先端機器共用施設の整備が進められている。この論文では、産総研が運営する先端機器共用施設であるナノプロセシング施設を紹介し、その運営戦略を説明する。そして、ナノプロセシング施設が、ユーザーへの研究開発支援を通じて創出した研究成果や要素技術からなる知識パッケージを形成し、そのパッケージをユーザーに対して公開する“協創場”を構築するとともに、その協創場空間を持続的に拡げるエコイノベーション推進シナリオを述べる。 秋永 広幸
次世代型下水汚泥焼却炉「過給式流動燃焼システム」の実用化
[PDF2.3MB]



− 新規下水汚泥焼却炉の開発における産総研の役割 −
国内の下水汚泥排出量は年々増加しており、その大部分は焼却処理されている。現状の下水汚泥焼却システムは、エネルギーを大量に消費し、また汚泥中の窒素含有量が高いため、燃焼により温暖化ガスであるN2Oを大量に排出することが懸念されている。この研究では、研究機関と民間会社との共同で、省エネルギー運転に加え、低環境負荷運転をも達成できる加圧流動焼却炉と過給機を組み合わせた次世代型汚泥焼却システムである「過給式流動燃焼システム」を提案し、実用化に至った。この論文では、提案したシステムの実用化に至るまでの研究開発について主に紹介する。 鈴木 善三
ほか
オンデマンド材料開発を目指した材料設計システム
[PDF:2MB]



− 開発現場から生まれた新規な材料設計手法 −
最先端の半導体用材料の開発現場では、毎月のように新しい材料を開発しなくてはならない。開発期間の短縮を目的に、線形計画法、組合せ最適化、グラフ理論等をベースに独自の材料設計支援システムを構築した。このシステム(弱条件組合せ線形計画法)により、複数の特性を満たす配合候補を見いだすことが可能になった。また、複素特性値やクリープ等の時系列特性を含む材料の最適化にも適用可能であるほか、供給リスク計算等も開発時に行えるようになった。この手法を活用することで目標値を満たす材料を効率的に開発することが可能になった。 稲田 禎一
ほか
持続発展可能な大容量・低消費電力の通信ネットワーク実現に向けて
[PDF:2.7MB]



− ダイナミック光パスネットワークのためのトポロジ検討 −
映像関連アプリケーションの発展により、通信ネットワーク上の通信需要が増大し続けている。映像関連アプリケーションは将来、高臨場感双方向映像通信、遠隔診断医療、遠隔教育等への発展が期待されている。しかし、現状のネットワークは消費電力が通信量に依存して増加するため、消費電力増大が大容量通信ネットワーク実現のボトルネックとなることが懸念される。この論文では、持続発展可能な通信ネットワーク技術の確立に向け、通信量に対する依存が小さな消費電力特性を持つネットワークアーキテクチャ(ダイナミック光パスネットワーク)を提示する。トポロジとノード構成との詳細検討を通し、収容ユーザー数、通信帯域、および消費電力の観点からその有効性を明らかにする。 石井 紀代
ほか
 
  記事 要旨 著者
6巻4号 研究論文 再生・細胞医療のための自動細胞培養システムの開発
[PDF:2.1MB]



− 高品質細胞製品を調製するロボットシステム −
再生・細胞医療技術を生かした基礎研究と臨床応用の間の橋渡し研究の大きな障壁の一つとなっている臨床用細胞調製を飛躍的に容易にすることを目標として研究を行った。川崎重工業が信州大学、産総研に設置し、すでに具体的評価を開始している世界初の細胞培養ロボットシステム(MDX)の技術を基に、建設や運営の困難な専用の細胞調製施設(Cell Processing Center:CPC)を設置せずとも高品質の細胞試薬を調製できる実用的な培養システム(Robotized - Cell Processing eXpert system;R-CPX)を開発した。この開発を通じた多様な細胞医療の迅速な実現と世界標準品質の確立を目指した。 脇谷 滋之
ほか
リスクトレードオフを考慮した次世代低GWP冷媒の選定
[PDF:2MB]



− R-1234yfに対するリスクトレードオフ評価 −
現行の空調機器の冷媒は地球温暖化係数(GWP)が高いため、R-1234yfをはじめとした、よりGWPの低い物質が次世代冷媒候補として検討されている。しかし低GWP物質は相対的に化学反応性が高く、燃焼性、有害性、分解物生成、省エネ性能低下によるCO2排出量増加の側面ではリスクを高める可能性、すなわちリスクトレードオフの可能性がある。この研究では(1)環境特性、(2)燃焼特性、(3)有害性、(4)温室効果ガス排出量、(5)実装可能性の5項目から構成されるリスクトレードオフ評価の枠組みを提示し、絞り込み過程を明示しながら次世代低GWP冷媒物質の選定を行った。リスクトレードオフを考慮した意思決定において、複数の評価項目の組み合わせ方と評価基準を明示することが重要であることを示した。これにより、意思決定に必要なデータの迅速な把握と、社会情勢に柔軟に対応した意思決定が可能となった。 梶原 秀夫
産業保安と事故事例データベースの活用
[PDF:1.7MB]



− リレーショナル化学災害データベース(RISCAD)と事故分析手法PFA −
産業技術総合研究所では、化学物質が関連する火災、爆発、漏洩などによる事故事例を集めた「リレーショナル化学災害データベース(RISCAD:Relational Information System for Chemical Accidents Database)」を開発し、運用している。この論文では、RISCADの概要とその開発経緯を紹介する。また、複雑な事故を容易に理解するために、RISCADの一部の事故事例には、事故を時系列で整理し、原因を分析した「事故進展フロー図」を収録している、この「事故進展フロー図」を作成するために開発され、組織の安全意識の向上に有効な「事故分析手法PFA」(PFA:Progress Flow Analysis)の実施手順と企業の産業保安への活用手法について検討した結果を報告する。 和田 有司
高速充放電型蓄電デバイス“キャパシタ”の開発
[PDF:3MB]



− キャパシタデバイスの高性能化を目指した電極材料の開発戦略 −
省エネルギーかつ利便性の高いシステムを構築するため、蓄電デバイスには、電気をたくさん貯めるだけでなく、電気の出し入れを高速で行うことも求められるようになってきた。高速充放電型蓄電デバイスの研究開発は、ナノテク材料製造技術とエネルギーデバイス製造技術という対象スケールの大きさがかなり異なる分野の融合領域であり、また、実用デバイス製造では要素技術の選択と融合が鍵となることから、構成学的にも興味深い研究開発分野と言える。この論文では、高性能キャパシタデバイス開発を目的に産学官連携で実施されたプロジェクトの開発経緯を実例として示しながら、材料技術シーズの探索からデバイス製造までの研究開発のアプローチや手法等を紹介する。 羽鳥 浩章
ほか
都市鉱山の戦略的な開発を支える物理選別技術
[PDF:2MB]



− 未利用・難処理資源の開発と我が国の資源ビジョン −
我が国ではものづくりを支える天然金属資源のほとんどを海外からの輸入に依存しており、近年、価格の急騰や輸出規制等によりその安定供給が危ぶまれる事態が続いた。都市鉱山はこのようなリスクに対応し得る有望な自国資源であるが、レアメタル等の金属集積度は必ずしも高くなく、省コストに1次濃縮できる物理選別技術の適用が欠かせない。廃製品からレアメタルを元素ごとに取り出す行為はまだ誰も経験したことがなく、新しい思想の選別技術が必要となる。本報では、物理選別の技術革新によるレアメタルリサイクルの実現から、物理選別を核に金属資源の国内循環を図る「戦略的都市鉱山」を目指した将来構想について紹介する。 大木 達也
座談会 システムデザイン・マネジメント学とシンセシオロジー
[PDF:1MB]



− 現代社会の課題に挑み、研究成果を社会に活かす方法論 −
シンセシオロジー誌が創刊された2008年に、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科が創設されました。当該研究科は、社会のさまざまな課題の創造的な解決を図る全体統合型学問を目指しています。この考え方は研究成果を社会に出していく構成学的方法論を探っているシンセシオロジー誌にとって大変参考になるので、今後の共通の課題や連携のあり方などを話し合いました。 シンセシオロジー編集委員会
 
  記事 要旨 著者
6巻3号 研究論文 電力不足発生リスク回避のための節電率設定方法への一提言
[PDF:2.3MB]



− 電力供給量逼迫環境下での電力不足発生確率評価システム −
現状において、再生可能エネルギーの利用を含めた電力供給量の確保および節電対策に関するシステム策定は緊急を要する。 ただし、天候等の影響により、電力需要量や再生可能エネルギーによる電力供給量は変動する。また、火力発電システム等による電力供給量も設備故障等の要因からやはり確定値とはいいがたい。よって、電力の需要・供給量に関する不確定な予測のもとで電力不足を回避するための計画策定が必要である。この研究では、電力需給バランスのもとでリスク回避を目的とした電力不足発生確率評価システムを提案し、現状の電力不足リスクの水準を維持しつつ、電力不足を回避するための節電率の一設定方法について提案する。 有薗 育生
ほか
ダイヤモンドパワーデバイスの優位性実証研究開発
[PDF:2.5MB]



− 究極のパワーデバイスを目指して −
省エネルギーのカギとなるパワー半導体分野で、群を抜いた材料特性から、SiCを上回る低損失電力変換デバイス用材料として期待されているダイヤモンドの、デバイス応用に向けた先導研究を行った。高い絶縁破壊電界の実証、ドリフト層エピ成長改善によるキラー欠陥撲滅、高温動作を可能にする超耐熱ショットキー電極開発、電界緩和構造や高電流素子の実現等の一連の開発である。その結果、250 ℃で30万時間以上動作可能な耐熱ショットキーバリアダイオードを開発し、高速スイッチング特性を確認し、ダイヤモンドのパワーデバイス用材料としての可能性を実証することができた。冷却フリーという新しいコンセプトの低損失デバイス実現に向けた、大型ウェハと大電力デバイスの研究が急がれる。 鹿田 真一
ほか
沖縄海域の海洋地質調査
[PDF2.5MB]



− 海底鉱物資源開発に利用できる国土の基盤情報の整備 −
沖縄海域の海洋地質調査は、国土の基盤情報整備の一環として2008年度から開始された。沖縄海域の九州から台湾に続く島嶼は琉球弧と呼ばれ、フィリピン海プレートの琉球海溝における沈み込みに伴って形成された島弧である。琉球弧の西側には沖縄トラフと呼ばれる背弧海盆が形成されており、活動的な海底火山や海底熱水活動が知られている。鉱床の胚胎場には地質構造の規制が存在すると考えられるので、海底鉱物資源が期待される場の海洋地質情報の整備は資源賦存場の絞り込みにとても有効である。周囲を海洋に囲まれた日本にとって、海底鉱物資源の開発に向けて期待はますます大きくなる。国土の基盤情報の一つの利用方法として、地質現象に基づく海底鉱物資源の開発に向けた方法論を提示する。 荒井 晃作
ほか
基礎研究および応用・開発研究における標準化活動に係る投入資源の計量方法および差異について
[PDF:2.3MB]



− 大学・TLO等と電気機械産業の事例 −
この研究は、基礎研究、応用・開発研究における、標準化活動を定量的に収集する手法を考察することを通じて、イノベーション・マネジメントの基盤の高度化を目的とする。具体的には、一般的な標準化活動の代替量として、組織のイノベーション活動に関係が大きいと考えられる知的財産活動における標準化活動に着目する。基礎研究機関として、大学・TLO等を取り上げて電気機械製造業、情報通信業を応用・開発研究機関として取り上げる。データの複数年度間にわたる収集の安定性の有無や、標準化活動の定義の妥当性について論じた上で、基礎研究と応用・開発研究における標準化活動の差異を述べる。基礎研究においては、応用・開発研究と同程度の知的財産活動に関する標準化活動の割合を示す可能性があるとの仮説等が導かれた。 田村 傑
論説 技術開発におけるポートフォリオ構成と社会実装
[PDF:1.4MB]



− GERASの開発と普及に向けての新たな展開 −
さまざまな技術体系や要素技術の融合を必要とする複雑な技術開発を対象に、構成学的な手法を用いて要素のポートフォリオ分析を実施し、重点化すべき要素や脆弱な要素を明確にしてシステム設計および社会実装を可能にした。題材として、土壌汚染診断のための地圏環境リスク評価システムGERASを取り上げ、その研究構想から社会への普及に至るまでの構成学的なプロセスを解析するとともに、震災復興等の新たな視点からの技術開発の展開について論じた。 駒井 武
 
  記事 要旨 著者
6巻2号 研究論文 視覚障害者のための音による空間認知の訓練技術
[PDF:2MB]



− リハビリテーション現場での実用化に向けて −
視覚障害者が歩行するためには、音を手がかりに周囲の様子を把握する技能を習得する訓練が必要である。そのために著者は、“安全な仮想空間の中で訓練を実現する技術を開発してリハビリテーションの現場に導入する”ことを目指し、訓練システムの開発を行った。この訓練システムの実現のために、①音による空間認知のメカニズム、②メカニズムを再現する3次元音響技術、③3次元音響演算用ハード/ソフトウエア、④頭部位置方向計測技術、⑤訓練カリキュラム等の基盤研究および要素技術の開発を行った。構築した訓練システムの有効性を検証した結果、このシステムがこれまでの実環境訓練よりも有効であることを確認した。2010年9月より、訓練システム簡易版が視覚障害関係者に配布され、指導員養成課程等で活用されている。 関 喜一
生体分子の分離法でカーボンナノチューブを分離
[PDF:2.1MB]



− 大量・安価な金属型・半導体型CNTの生産を目指して −
カーボンナノチューブ(CNT)には金属型と半導体型が存在し、その優れた電気的性質を応用するには、2者を分離する必要がある。産業応用に向けては、大量・安価な分離法が求められる。我々は、生体分子の分離法を応用することにより、CNTの新規分離法を開発することに成功した。アガロースゲルを用いた電気泳動に始まり、最終的にはカラムを用いて大量・安価な分離を達成し、試料提供も開始した。直列カラムへのCNTの過剰投入による単一構造半導体型CNTの分離法も開発した。また、本論文では研究を効果的に進めるための、特許出願、成果発表、予算申請のタイミングの要点についても論じた。 田中 丈士
ほか
セラミックカラーデータベースの構築
[PDF:1.6MB]



− 30数万点の釉薬テストピースのデータベース化と活用 −
産総研に30数万点の釉薬テストピースが保管されている。これらは、陶磁器試験所、名古屋工業技術試験所の80年以上の陶磁器研究において作成されたものである。テストピースは実験結果と実験過程が見える形で残されたものであり、釉薬および陶磁器の研究の基礎データとして貴重である。産業界等にこれらのデータを提供して、研究開発や製品化研究の省力化や加速化を実現する目的で、釉薬テストピースの情報のデータベース構築を行った。釉名称、焼成温度、焼成雰囲気、発色、化学組成、原料調合、外観性状等のデータ項目と外観画像を伴ったデータベース構成とした。データベースは、新規の研究開発等に利用されて有効性が確認された。 杉山 豊彦
業務用ビデオゲーム表示技術の変遷
[PDF:2MB]



− テレビ受像機への描画からリアルタイムグラッフィクスへ −
1970年代に本格化した業務用ビデオゲームは、さまざまな画像表示手法が投入され独自の進化をしてきた。「TTLロジック」による手法に始まり、「ビットマップ表示方式」によるスペースインベーダーの大ヒットを経て、業務用ゲーム独自の「スプライト表示技術」は市場を広げ、DSP等の高速演算機能を組み込んだ「リアルタイムポリゴン表示」等、他産業より数年早く新技術を投入活用してきた。そして、これら業務用ゲームの技術は、家庭用ゲーム、携帯電話コンテンツ、通信カラオケ等多くの産業に繋がっている。この論文では、これら業務用ビデオゲームの中心となる画像表示手法の進化とその背景を述べる。 三部 幸治
大陸棚画定調査への挑戦
[PDF:2.4MB]



− 国の権益領域拡大と地球科学の貢献 −
大陸棚画定調査は政府一体として取り組まれた事業である。その目的は国連海洋法条約に定められた「大陸棚」について、科学的根拠を含む延伸大陸棚の限界に関する情報の取りまとめを行い、国連へ提出することにあった。産総研の海洋地質に関わる研究者は、海域調査の実施、採取岩石試料の分析・解析・解釈、ならびに国連への申請書案作成のための作業部会への参加を通じて、海洋地質学の専門家集団としての総合力を発揮することにより大陸棚画定調査に貢献した。関係省庁各機関が協力してとりまとめられた日本の延伸大陸棚に関する情報は、2008年11月12日、日本政府が国連の「大陸棚の限界に関する委員会」に申請書として提出した。そして、同委員会より、申請の審査の結果としての「勧告」を2012年4月26日に日本政府は受領した。本報告では、「大陸棚」および日本の「大陸棚」に関する簡単な解説とともに、科学的な情報が基礎となってわが国の海域における権益の及ぶ範囲の増大に貢献できるという稀有な機会に、産総研の研究者が組織の一員として、また研究者として参加したことの経緯とその成果を示し、さらに、このような事業を実施するうえでの問題点について議論した。 西村 昭
ほか
論説 英国における大学評価の新たな枠組み:Research Excellence Framework
[PDF:1.5MB]



− 最近の日本の研究評価の状況との比較 −
現在英国では、高等教育機関で実施されている研究の評価の新たな枠組みであるREF(Research Excellence Framework)の実施が準備されている。REFでは、高等教育機関で行われる卓越した研究が、その潜在的な効果を最大限に発揮できるよう、評価軸として、アウトプットの質、インパクト、研究環境の3つの要素が設定された。特に着目される点として、大学等での研究評価にも関わらず、社会的なインパクトも明示的に取り入れられていることである。また、アウトプットの質の評価においても、専門家パネルによるレビューとともに、論文被引用情報を中心とする計量書誌学的な定量的データを参考として用いることが提案されている。本稿では、REFにおける、アウトプットからインパクトまでの評価の考え方について紹介するとともに、わが国の研究評価や大学評価への示唆について考察する。 大谷 竜
ほか
報告 研究・技術計画学会第27回年次学術大会での講演
[PDF:1.1MB]



構成学(シンセシオロジー)の論文分析による技術の社会導入に向けた方法論
2012年10月に一橋大学で開催された研究・技術計画学会第27回年次学術大会において行われた講演と質疑応答の概要をご報告します。 シンセシオロジー編集委員会
 
  記事 要旨 著者
6巻1号 座談会 Synthesiology 発刊5周年記念座談会
科学・技術・イノベーション時代の新しい研究方法
[PDF:1.2MB]



− 基礎的研究における構成的アプローチについて −
製品化あるいは事業化のための研究開発はその目標達成のために必要な要素技術を統合していくアプローチがとられるのに対し、基礎研究は知的好奇心を原動力として進められることが多い。一方、公的資金による研究開発では民間企業としては実施できないような基礎的・基盤的研究を行うことが期待されるとともに、公共の益になる成果を出して社会にイノベーションを起こすことが期待されています。発刊5周年を機に関係する有識者の方々にお集まりいただき、こういった期待を持たれている基礎的・基盤的研究をどのように進めるべきか、そしてSynthesiology が取り組んできた構成的アプローチの意義やその可能性、さらに今後の科学・技術・イノベーション推進の方向性を議論いただきました。 シンセシオロジー編集委員会
研究論文 高効率SOFCシステムによる分散型発電の実現に向けて
[PDF:3.4MB]



− SOFCシステム早期導入に向けた性能評価手法の開発と規格標準化 −
高効率分散型発電システムとして期待される固体酸化物形燃料電池(SOFC)の早期導入と公正な商取引を実現するには、性能評価手法の確立とその試験方法の規格標準化が重要である。この研究では、SOFCシステムの基本構成パーツのSOFC単セル、スタックおよびシステムの発電効率の評価手法について、市販の測定器、計量標準にトレーサブルな高精度流量計・標準物質、触媒技術等を組み合わせて、計量標準から製品までつながるSOFCの高精度性能評価手法・試験装置等を開発するとともに、SOFC開発企業等と連携して開発した装置の性能と実用性を評価した。さらに、発電効率試験方法のJIS規格化を中心に、性能試験方法の規格標準化への取り組みを報告する。 田中 洋平
ほか
地下水観測による地震予知研究
[PDF:2.3MB]



− 地下水位変化から地殻変動を推定することによる地震予測 −
我々は、長期の地下水観測・解析に多孔質弾性論と前兆すべりモデルを組み合わせた第2種基礎研究の結果として「前兆的地下水位変化検出システム」を構築し、国の東海地震予知事業に貢献している。この「前兆的地下水位変化検出システム」を東南海・南海地震予測にも適用するために、四国から紀伊半島地域にも地下水等総合観測網を拡大し観測を続けている。また、このシステムを用いて東南アジアの地震防災にも貢献するため、台湾で2002年から国際共同研究も行っている。2011年東北太平洋沖地震では、地震の規模を過小に予測したことが震災の要因の一つになった。しかし、この規模を過小評価してしまったことについて科学的に吟味した上で、さらに地震予知研究を進めるべきと考える。 小泉 尚嗣
高齢者でも読める文字サイズはどのように決定できるか
[PDF:2.1MB]



− 文字表示のアクセシブルデザイン技術とその標準化 −
高齢者・障害者の不便さを解決する技術として、アクセシブルデザイン研究の概念と進め方および成果の普及方法について、視覚の研究を例にとり説明した。福祉用具とは異なる視点をもつアクセシブルデザインの特徴を、問題解決の方法、デザインの対象、公共性の点についてそれぞれ言及し、公共性の点からアクセシブルデザインにおける標準化の役割について説明した。次に、これらの研究の特徴を、特に高齢者に読みやすい文字サイズを推定する視覚的技術を例にとり、その研究の流れに沿って技術的内容を述べた。年齢を考慮した最小可読文字サイズ推定方法を開発するため、まず、年齢や視距離によって変化する視力の基盤データの収集からスタートし、実際の日本語に出てくる文字の可読性に関するデータの収集を行い、そこから一般性のある可読文字サイズ推定式を導き、その実用性を確認した。この推定技術は、さらに国内外における標準的技術へと進展させた。特に国際標準確立に必要な国際比較テストを行い、この研究成果の有用性を確かめた。最後に、これらの一連の研究を基礎技術とその展開という二つのサイクルに分けて説明することによって、アクセシブルデザイン技術体系の開発における本格研究の位置付けを明確にした。 佐川 賢
ほか
光ファイバ広帯域振動検出システムの開発
[PDF:2.4MB]



− FBGセンサを用いたひずみ・AE同時計測技術 −
打音検査や超音波検査のように振動を利用すると構造物の健全性を評価することができる。光ファイバセンサは電気センサの適用が困難であった極限環境下における構造体健全性評価を可能にすることが期待されている。近年、多機能、多重化可能、電磁波非干渉といった特長を有するファイバ・ブラッグ・グレーティング(FBG)による振動検出の研究が盛んに行われている。しかしこれまでのFBGセンサシステムは温度・ひずみ変動下で超音波を検出することが困難であった。我々はこの技術的障害を乗り越えるシステムを新たに開発した。この論文ではコンパクトで経済性に優れた数Hz~2 MHzの広帯域な振動検出が可能なFBGセンサシステムの開発過程を構成的アプローチに基づいて紹介する。 津田 浩
ほか
 
  記事 要旨 著者
5巻4号 研究論文 マンモグラフィの安全を支える線量計測
[PDF:2.4MB]



− マンモグラフィ用X 線の線量標準の確立と標準供給体制の構築 −
乳がんの早期発見のため、乳房X線検査(マンモグラフィ)が2000年より乳がん検診に導入され、受診者数は増加の一途をたどっている。診断の高い信頼性と人体への十分な安全性を両立させるためには、X線照射を適切な線量に抑えた上で、高品質なX線診断画像を得ることが必要となる。マンモグラフィでは、乳房撮影に特化した通常とは異なる特殊なエネルギースペクトル(線質)のX線が用いられる。しかし、その線質は、これまでの線量計の校正に用いられているX線とは大きく異なるため、線量計の校正の信頼性が十分であるか心配する声が、学会や産業界から挙げられた。そこで、産総研ではマンモグラフィ用のX線の線質に基づいた線量の国家標準を開発し、それを産業界へ供給した。既存の研究設備や技術を最大限活用したり、現行の精度管理体制の中にこの標準を組み込むことにより、この標準の迅速な開発を可能にした。また、国内・国外の両方を意識した研究開発のシナリオをあらかじめ策定したことが、国際的な同等性の確認された標準の迅速かつ広範な供給へ結びついた。 田中 隆宏
ほか
西暦869年貞観津波の復元と東北地方太平洋沖地震の教訓
[PDF:2.6MB]



− 古地震研究の重要性と研究成果の社会への周知の課題 −
歴史文書に記録されている西暦869年貞観地震を解明するため、地層に残された津波堆積物を詳細に調査し、津波の数値計算を組み合わせて津波規模を推定した。2011年東北地方太平洋沖地震は、その推定よりかなり大きかったが、津波堆積物が過去の巨大津波の証拠であり、巨大津波の警告であることを証明した。この貞観地震に関する研究成果は地震調査研究推進本部に提出され、2011年3月にはおよそ評価が終わっていたが、社会に周知する直前に地震が発生してしまった。このようなことを繰り返さないためにも、巨大地震に関する研究成果はできるだけ早く社会へ伝える必要がある。同時に、信頼できる研究を進めることも重要である。 岡村 行信
固体酸化物形燃料電池(SOFC)単セル/ スタックの発電性能試験方法の規格化における不確かさ評価
[PDF:2MB]



− SOFCの普及に向けた試験方法の規格化と測定結果の信頼性担保 −
高効率発電が期待されるSOFCは、実用化の段階に近づきつつあるが本格的な商業化に向けて試験方法の国際規格を作成し、商取引の活性化による普及を考えなければならない段階に来ている。規格作成にあたってはその試験対象について中身を具体的に記述することや具体的な形を想定して作ることができないこと、さらに試験条件にしても規格化して統一することが適当でないことという制約があった。一方、試験結果の信頼性を担保するために試験結果の不確かさ評価を導入したが、その性能が多くのパラメータに依存するSOFCの試験結果の不確かさ評価については、規格においてその評価方法を具体的に規定しておく必要があると考えた。この論文では、我々がSOFCの試験方法の国際規格作成および試験結果の不確かさ評価にあたって行った取り組みを報告する。 門馬 昭彦
ほか
調光ミラーガラスの開発
[PDF:2.2MB]



− 実用化のための研究戦略 −
「調光ミラー」は透明な状態と鏡の状態がスイッチングできる新しい薄膜材料で、これを窓ガラスに用いると、太陽光を効果的に遮ることで、特に夏の冷房負荷を大きく低減できる省エネルギーガラスを実現することができる。この調光ミラーガラスを実用化するために、これまでどのような研究戦略を立て取り組んできたかを紹介する。単に材料自体の研究開発にとどまらず、実際にそれを建物に用いた場合の省エネルギー性能の計測も行い、その結果を材料研究にフィードバックすることで、より省エネルギー性能の大きな窓の開発を行っている。 吉村 和記
ほか
有害化学物質の環境分析法の標準化
[PDF:2.4MB]



− 最先端の分析技術を用いた国際的化学物質管理への貢献 −
有害化学物質の環境負荷量の把握、安全性評価、国際条約有効性の評価および政策立案を行ううえで、質の高い分析データの蓄積が重要であるが、そのためには信頼性の高い分析法と標準物質の開発・普及が必要である。我々は、特定の国や業界団体に限定したニーズが顕在化する前に、化学物質の有害性、使用量、環境残留性等に関する最新データを基に、必要とされる環境分析技術を予想することで国際的有害化学物質規制条約に先んじて国際規格を提供した。この論文では有害化学物質の環境挙動解明から分析法開発、そして2件のISO規格と2件のJIS規格の標準化に至るまでの研究過程とその意義について述べる。 谷保 佐知
ほか
 
  記事 要旨 著者
5巻3号 研究論文 地球観測データの統合的利用のための国際連携
[PDF:2MB]



− 全球地球観測システムの共通基盤の標準化 −
さまざまな地球観測データが世界各国で個別に取得・加工・利用されている中で、それらの情報の統合的な利用を容易にするための全球地球観測システムが必要とされている。そのため国際的な合意のもとに組織された地球観測に関する政府間会合が全球地球観測システムのための共通基盤を構築した。複数の機関から共通基盤を構成する要素の提供の申し出があったが、政府間会合は構成要素のそれぞれについて公正な評価を行い、最適な構成要素を組み合わせた共通基盤を推奨した。特定の構成要素を選定して共通基盤を推奨することは、全球地球観測システムに関連するいくつかのデジュール標準を策定することに相当した。日本は独自の構成要素の提供を申し出なかった関係で、構成要素を評価するにあたって中立的立場をとり、デジュール標準の策定においてイニシアティブをとることができた。その結果、日本で広く利用されている方法のいくつかをデジュール標準に採用することができた。今回の経験は、一つの事例として、日本にとって今後の国際標準化活動のあり方を示唆している。 岩男 弘毅
圧電体薄膜を用いた圧力センサーの開発
[PDF:2.9MB]



− 量産車用燃焼圧センサーへの応用 −
この論文では、著者らが世界で初めて窒化アルミニウム(AlN)系薄膜圧電体を用いて開発した、量産車用燃焼圧センサーの研究開発の経緯について述べる。この研究開発の構想当時(2003年以前)は、単結晶を用いたセンサーが一般的であり、薄膜圧電体を用いた燃焼圧センサーは未開拓領域であり、その有用性は認識されていなかった。しかし、この研究開始以降、国内外の自動車部品会社や大学などが興味を示し、実用化に向けた共同研究を実施した。その結果、冷却を必要とせず、小型で高感度の燃焼圧センサーの開発に成功した。現在、著者らはセンサーの実用化を目指し、センサー信号の安定化、センサー構造の簡素化などの課題を解決するために研究を行っている。 秋山 守人
ほか
新機能性ゲル材料と試薬化
[PDF:2MB]



− 機能性ソフトマテリアルの新展開 −
種々の溶媒系を擬固体化できる新しいゲル化剤を開発した。水等の極性溶媒に親和性を有する電解質構造をもつこの材料は、極めて簡便に大量合成できる。さらに、イオン液体等電解液の擬固体化、歪崩壊後の自己修復性、さらにはカーボンナノチューブとの容易な複合化等、既存材料にはないさまざまな特性をもち、現在では新しいゲル化用化学試薬として販売が開始されている。 吉田 勝
観光地の集客施策に対する効果測定の試み
[PDF:1.9MB]



− オープンサービスフィールドにおける行動調査技術 −
観光地では毎年なんらかの集客施策を実施しているが、施策の効果測定はほとんど行われていない。集客施策によって観光客がどれくらい変化したのか、回遊経路がどのように変化したのかを計測することは観光地づくりの基礎データになるが、合理的費用で定量的かつ継続的に回遊行動を捕捉する技術がなかった。我々は観光地等で定量的かつ継続的に観測・調査を実現する「オープンサービスフィールド型POS(Point of Service)」を開発し、実用化に向けたプロジェクトを実施した。この論文では、兵庫県城崎温泉における事例を、地元関係者と技術者との共同作業という観点から考察する。 山本 吉伸
糖鎖研究のための基盤ツール開発およびその応用と実用化
[PDF:2.3MB]



− 過去10年間の産総研糖鎖医工学研究センターの研究戦略 −
糖鎖研究という新しい科学技術領域を開拓するにあたり、10年間の長期戦略を最初に考案した。多くの研究者・技術者がこの領域に参入できるよう基盤ツールの開発を行った。まずは、糖鎖遺伝子の網羅的発見と機能解析を遂行した。この成果は、糖鎖合成技術、糖鎖構造解析技術、糖鎖の生物機能解析へつながる布石となった。開発された基盤技術ツールを応用して、癌診断等に有用な糖鎖バイオマーカー開発を実施した。肝線維化マーカー、胆管癌マーカー等の実用化に成功した。その他の種類の癌マーカーの開発も進行している。10年の長きにわたる研究成果はアジア諸国をはじめ世界へ輸出され、国内および諸外国との共同研究へと発展している。 成松 久
座談会 値の創造とシンセシス
[PDF:1MB]
東京大学の石川正俊教授は、分析的な真理の探求だけではなく新しい社会的な価値の創造が必要であると主張され、2004年4月から2006年3月まで東京大学の副学長を務められ、独創性の高い研究成果を社会に導入していくための制度作りをされてきました。シンセシオロジーが目指す研究成果の社会導入を大学の立場で実践されている石川教授と小野編集委員長(当時)と赤松編集幹事が座談会を行い、価値創造に向けた社会づくりについての議論を行ないました。 シンセシオロジー編集委員会
 
  記事 要旨 著者
5巻2号 研究論文 サンゴ骨格分析による過去の気候変遷の復元
[PDF:2.8MB]



− 生体鉱物を用いた地球化学的手法による地球環境研究 −
大気中の二酸化炭素増加による地球温暖化が注目されている。産業革命以降の温暖化傾向や過去の温暖化事象を精密に復元することにより、地球温暖化予測モデルの高度化に寄与できる。海域では、サンゴ骨格の化学分析から過去数百年にわたる水温や降水量、塩分を高い時間分解能で復元する技術が注目を集めている。また、18世紀頃の小氷期用語1や約2万年前の冷涼な最終氷期、あるいは350 万年前の鮮新世用語3温暖期といわれる時代のサンゴ化石から、さまざまな指標を複合的に評価し、当時の気候を正確に復元することも重要な課題である。サンゴ骨格を用いた研究手法は、異常高水温によるサンゴ白化現象や、海洋酸性化現象の解明にも貢献することができる。 鈴木 淳
Development of methane hydrate production method
[PDF:2MB]



− A large-scale laboratory reactor for methane hydrate production tests −
Natural gas hydrates off the shores of Japan are valuable resources for the country. To utilize these resources, it is necessary to establish a gas production technology and investigate suitable conditions for extraction of methane from methane hydrate reservoirs. While core-scale dissociation experiments yield reproducible results on how methane hydrate dissociates under various conditions, a production test at a real gas field would provide information about the type of dissociation phenomena occurring in a geological reservoir field. The performance of natural gas production from methane hydrate reservoirs is dependent upon the size and characteristics of reservoirs, such as temperature and permeability. In other words, while a core-scale dissociation test in a laboratory can demonstrate the heat transport process, dissociation in an actual reservoir is dominated by the material flow process. Thus, I believe that it is important to couple data obtained from core-scale tests with the results of field-scale tests by using a large-scale laboratory reactor in which dissociation experiments can be conducted under similar conditions to the actual reservoir. In this paper, I report the goals of the Methane Hydrate Research and Development Program being conducted by the Ministry of Economy, Trade and Industry, Japan, and describe the research objective of a large-scale laboratory reactor for methane hydrate production tests at MHRC (Methane Hydrate Research Center) of AIST (National Institute of Advanced Industrial Science and Technology). Jiro Nagao
鉄鋼厚板製造プロセスにおける一貫最適化に向けて
[PDF:2.7MB]



− 生産管理に関するマルチスケール階層モデルの提案 −
鉄鋼業において、製造工期の短縮と能率向上を両立する生産の一貫最適化は、どのように可能であろうか。先行例としてのリーン生産方式では、生産の時間スケールをメインラインのそれに同期化したのに対して、鉄鋼業では自動車と同水準の製造の同期性と時間スケールの圧縮は本質的に難しい。この事例は、生産管理を時間に関するマルチスケール階層構造としてモデル化することにより、鉄鋼産業において工場単位の最適一貫生産がどのように探究されたか、そのプロセスを明らかにした。この論文は、幅広いキャリアを積んだ現場の技術者の生きた知識を構成学的にモデル化し、産業界からの製造知識の体系化を目指した試みである。 西岡 潔
ほか
災害救助支援のための情報共有プラットフォーム
[PDF:4.6MB]



− データ仲介による情報システム連携 −
東日本大震災ではさまざまな「想定外」に国や自治体の防災体制が翻弄されることとなった。このような事態を軽減するためには、さまざまな要請に臨機応変に対応して構成していける災害情報システムが望まれる。この論文ではその基盤として、データ仲介による緩い情報システム連携の考え方とそれに基づく減災情報共有プラットフォームを提案する。このプラットフォームではさまざまな情報システムを簡便に連携させることができ、災害時の多様な状況に対応してシステムを迅速に組み上げることができる。データ仲介によるシステム連携の考え方は東日本大震災でも有効に働いており、今後、この考え方に基づく設計の在り方を普及させていくことが重要である。 野田 五十樹
ロボット技術を用いたスピニング加工(へら絞り)
[PDF:2.4MB]



− 手作りの現場密着型ものづくり −
スピニング加工とは、金属素材を回転させながら加工ローラーを押し付けて成形する塑性加工法で、金型コストが低く多品種少量生産に有利である。スピニング加工にロボット技術を導入して、これまでは困難だった異形形状の成形を実現し、加工機メーカーとの連携により実用的な加工機のプロトタイプを開発した。この研究では、実用化の優先を基本的方向性としてボトムアップかつ探索的に進め、現在の状況に応じ目標やシナリオを常時修正した。その場で入手可能な有限のリソースの組み合わせを活用するブリコラージュが研究活動において大きな役割を果たした。現場・現物・現実を重視する三現主義の立場で意思決定を行った。顧客満足度の向上を価値基準に加え、営業活動も研究のうちに位置づけた。 荒井 裕彦
座談会 科学技術政策と構成学、その具体化と価値への"つながり"
[PDF:1MB]
第4期科学技術基本計画では、グリーン・イノベションやライフ・イノベーションのように「課題解決型」のイノベーションの創出が目指されています。科学技術振興機構社会技術研究開発センター(JST-RISTEX)では、この方向に沿って研究成果の社会での実装までを目指した種々の研究開発プログラムを推進しています。この考え方は、シンセシオロジーにも共通する考え方なので、座談会においてセンター長の有本建男さんにその考え方をお聞きしました。 シンセシオロジー編集委員会
 
  記事 要旨 著者
5巻1号 研究論文 高品質なプロジェクトマネジメントを実現するトレーサビリティ・マトリックスの構築
[PDF:3.1MB]



− プロセス中心から情報中心のプロジェクトマネジメントへの変革に向けた基礎理論の提案 −
ソフトウエア開発プロジェクトにおいて、設計に関する情報は予算や品質を左右する重要なものである。そこで、この研究ではプロセス中心のプロジェクトマネジメント技術では見え難い情報に着目し、情報がプロジェクト内でどのように移転していくのかトレースを可能とするモデルを構築した。そのモデルにより、トレースの複雑性を定量化するトレーサビリティ・マトリックス手法を構築した。そして、ソフトウエア開発プロジェクトにそのモデルと手法を適用することで高品質な情報中心のプロジェクトマネジメントを実現する手法を示した。 榮谷 昭宏
ほか
モノピボット遠心血液ポンプの実用化開発
[PDF:2.2MB]



− 製品につながる医工連携とは −
長期埋め込み人工心臓の前に4週間以内のつなぎに使用できる、補助循環遠心ポンプを製品化することに成功した。独自の軸受として採用した1点支持型のモノピボット軸受は、世界に先駆けて提唱した機構である。医工連携として大学医学部と意見交換をする中から、動物実験前の設計検証のために提唱した流れの可視化実験で血液適合性を定量的に評価・改良し、独自に開発した模擬血栓試験で抗血栓性を評価・改良し、最小限の動物実験数で生体適合性の評価を実施できた。技術シーズを提供して一つの製品を世に出したばかりでなく、その評価技術を他機関の製品化にも提供し、さらに医療機器ガイドライン事業にも協力して広く産業界に貢献している。 山根 隆志
ほか
マグネシウムおよびその合金中の不純物酸素分析手法
[PDF:2.8MB]



− 研究開発と併行した国際標準化への取り組み −
マグネシウムおよびその合金中の不純物酸素を対象とする簡便かつ信頼性の高い分析手法を開発した。今回、分析対象の不純物酸素を直接分析するのではなく、不純物酸素が含まれる酸化物の部分を試料から分離した後に酸素分析を行うという「多段階昇温法」を考案した。酸化物中の酸素の分析は、金属中酸素の分析手法として広く用いられている不活性ガス融解-赤外線検出法を用いて試験装置毎の温度校正を行うことで、十分な精度での分析が可能であることを実証した。また、これらの研究開発と併行して国際標準化の準備を進めた。韓国への技術協力により日韓両国で整合性のあるデータが得られることを示し、ISO専門委員会への提案を円滑に進めることができた。 柘植 明
ほか
Synthesiology論文における構成方法の分析
[PDF:2.9MB]



− 研究の成果を社会につなげるための構成学的方法論をめざして −
2008年に創刊された学術雑誌Synthesiology(構成学)に掲載された70編の研究論文を対象にして、構成の方法論を分析した。その結果、研究分野ごとに構成方法に特色があり、バイオテクノロジー分野やナノテクノロジー・材料・製造分野ではブレークスルー型の構成に特徴があり、標準・計測分野で戦略的選択型が多いことが判明した。また、全体としては共通の構成方法として、本格研究においては「技術的な構成」と呼ぶべきものの方法論が重要であり、その研究成果を社会に導入させて行くためには、さらに「社会導入に向けた構成」と呼ぶべきものも連続して起こすことが特徴の一つであることが明らかになった。その際、前者においても後者においてもフィードバック・プロセスが見られるが、後者においては社会的試用によりフィードバック・プロセスを何回も回していくスパイラル・アップとも呼ぶべきダイナミックな構成方法が観察された。 小林 直人
ほか
家庭用固体高分子形燃料電池の実用的耐久性確保のための技術開発
[PDF:2MB]



− 固体高分子形燃料電池の劣化加速試験法のための劣化要因解明 −
クリーンで小型でも高効率発電が可能な固体高分子形燃料電池を利用し、電気と熱を供給できるコージェネレーションシステムは、家庭内での大幅な省エネルギー化が可能で、その市場化が期待されてきた。市場化には燃料電池の40,000時間の耐久性が目標であった。この実現のため燃料電池の耐久性の技術見通しを立て市場化を目指して、燃料電池メーカー、エネルギー供給会社、大学、産総研がコンソーシアムを形成し、劣化加速手法の確立に取組んだ。産総研は仮説であった劣化機構を実験的に確認することを通して、開発した劣化加速手法の合理性を示した。これにより、開発された劣化加速手法を実際の燃料電池の耐久試験へ適用して実用的耐久性を見通すことができ、家庭用燃料電池コージェネレーションの市場化へ繋がった。 谷本 一美
ほか
報告 研究・技術計画学会構成学ワークショップ
[PDF:1.3MB]



− シンセシオロジー(構成学):知の統合からイノベーションへ −
2011年10月に山口大学常盤キャンパスにて開催された研究・技術計画学会年次学術大会における構成学ワークショップ「シンセシオロジー(構成学):知の統合からイノベーションへ」の概要をご報告いたします。 シンセシオロジー編集委員会
 
  記事 要旨 著者
4巻4号 研究論文 フレキシブル太陽電池の高性能化技術開発
[PDF:1.8MB]



− 「フレキシブル太陽電池基材コンソーシアム」の運営と成果 −
フレキシブル太陽電池開発に必要な要素技術課題を明らかにし、課題解決のための産学官からなるコンソーシアム体制を構築した。フレキシブル薄膜シリコン太陽電池の高効率化に必須のポリマー基材への凹凸形成技術を開発し、ガラス基板上と同等の性能をもつ薄膜シリコン太陽電池をポリマー基材上に作製することに成功した。現在は、コンソーシアム研究の段階から企業内での実用化研究の段階に移行している。当該コンソーシアムの設立過程、運営方針、特許戦略さらには若手人材育成の考え方について概説する。 増田 淳
地質学から見た高レベル放射性廃棄物処分の安全性評価
[PDF:1.9MB]



− 事象のシナリオに基づく長期予測の方法論 −
高レベル放射性廃棄物の地層処分では、閉鎖後の処分システムの安全性評価の対象期間は数十万年を超えるとされるが、そのような長期の安全性をいかに示すのか、いかなる基準を設け規制を課すべきなのかが大きな問題となっている。特に日本は地震や火山活動が活発な変動帯にあり、安全性評価に必要な地質学的課題は多岐に及ぶ。この論文では、火山活動の噴火履歴の解析結果を例にして、一つの出来事がプロセスを経て次々に出来事を誘発するという一連の事象(シナリオ)に基づく課題の抽出と地質事象の成因に踏み込んだ長期の将来予測の方法論を提示した。 山元 孝広
圧力計測の信頼性向上と国際相互承認
[PDF:2.6MB]



− 工業用デジタル圧力計の計量標準体系への組み込み −
信頼性の高い圧力の計測は社会と産業のあらゆる活動の基盤をなすとともに、国際貿易の中でも各国が高い関心を払っている。最近工業用デジタル圧力計の特性が進歩し、環境変化および輸送に対する安定性だけでなく、短期・長期の安定性が著しく向上した。産総研ではこれらの進歩に着目し、工業用デジタル圧力計の特性を詳細に評価した上で、それらを計量標準体系のいくつかの局面、すなわち圧力の国家標準の整備、国家標準の国際比較、国内標準供給に組み込んだ。これらの結果、産業現場での圧力計測の信頼性確保が効率的に行えるようになり、また、多くの国際比較を実施して圧力計測の国際相互承認の推進に貢献した。 小畠 時彦
ほか
微生物変換による活性型ビタミンD3の効率的生産
[PDF:1.7MB]



− 分子の改良から細胞膜改変までの包括的アプローチ −
生体触媒を用いた物質変換プロセスは、一般に反応特異性が高く、効率的な物質生産を行う上で極めて重要な技術である。加えて、生体触媒は有害物質の排出が少なく、環境汚染のリスクが少なく、生産過程におけるエネルギー消費量が少ないという利点がある。この論文では、放線菌ロドコッカスエリスロポリス細胞を用いた生体触媒変換系による活性型ビタミンD3の生産に関して記述する。この微生物変換の触媒反応を担う酵素の性能向上は、進化工学および立体構造を基にした手法の組み合わせにより達成した。これにより、活性型ビタミンD3の実生産効率を高めることに成功した。さらに、抗菌物質であるナイシンを用いて細胞を処理することにより、ビタミンD3の細胞膜透過効率を飛躍的に向上させることに成功し、新たなビタミンD3水酸化反応プロセスの基盤開発に成功した。 田村 具博
ほか
座談会 システムと構成学を考える
[PDF:619KB]
総合科学技術会議の前議員であり、元日立製作所副会長で現日立マクセル名誉相談役の桑原洋氏のもとを、本誌の小野編集長と赤松編集幹事が訪問しました。桑原氏は前号で対談を行った科学技術振興機構(JST)木村英紀上席フェローが主宰したJSTのシステム科学技術委員会の委員でもあり、これまでの多くのシステム開発の実績をもとに、同委員会での提言作りを主導してこられました。そこでシステムと構成学をキーワードとして座談会を行いました。 シンセシオロジー編集委員会
 
  記事 要旨 著者
4巻3号 研究論文 札幌市庁舎ビルの空調システムの省エネルギー化実証実験
[PDF:2.2MB]



− 界面活性剤を用いた流動抵抗低減によるポンプ動力の低減 −
近年、二酸化炭素の排出量が民生業務部門でも増加している。この実験ではビルの冷暖房用循環水の搬送動力を低減させることを目的として、循環水に高分子や界面活性剤を混ぜると発現する流動抵抗低減効果、いわゆるToms効果を利用し、その有効性を検証した。この効果については、多くの基礎研究やビルへの適用例もいくつかあるが、複雑な配管路から構成される実際のビルの循環水に界面活性剤をどのように注入するか、注入後管内の流動や伝熱の性能はどのように変化するか、さらにこの効果を長期にわたり維持継続する方法等について明確にした報告がなく、この技術の普及の妨げとなっている。この論文では札幌市役所本庁舎の冷暖房システムを使用して行った実証実験で得られた知見を示し、それを一般化してこの技術の普及につなげたい。 武内 洋
人の認知行動を知って製品やサービスを設計する
[PDF:1.8MB]



− 構成的研究のための認知的クロノエスノグラフィ法の開発 −
単に開発者のアイデアだけで技術開発を行っていると、人に受容される製品やサービスを実現することは容易ではない。それは、さまざまな個性を持つ利用者が実際にそれを使う状況下で何を考え、何を感じているかを、開発者が正しく知ることが困難だからである。そこで、実際の状況下での人の認知行動を把握する手法である認知的クロノエスノグラフィ法を開発した。この方法は、対象とする人の条件を明確化して選定したエリートモニターを用い、製品やシステムの設計につながる変数であるクリティカルパラメータを事前に検討して、それを統制したうえで実生活場面での行動を記録して、それを基に回顧的インタビューを行うことによって認知行動過程を明らかにする。製品やサービスの設計につながることを指向する構成的な研究プロセスの初期段階に適用する手法である。 赤松 幹之
ほか
緊急時に飲料水を確保するための技術
[PDF:2MB]



− 硝酸イオン選択吸着「材」 −
地下水は古くから清浄な飲料水源として使用されてきたが、近年、硝酸性窒素および亜硝酸性窒素による汚染のため、飲料水として用いられなくなった井戸も少なくない。緊急時にこれらを活用し、安全な飲料水を確保するため、「機動的浄水システム」の開発を行った。これは、私達の健康リスクとなる物質を除去・無害化するために開発した「硝酸イオン選択吸着剤」と、企業が開発した機能性物質の性能を低下することなく取り扱いが容易な形に成形する「非接触担持成形技術」を組み合わせることによって成し得たものである。
「機動的浄水システム」の技術要素である硝酸イオン選択吸着「材」の開発を中心に述べる。
苑田 晃成
自動車用ナビゲーションの総合的開発
[PDF:1.6MB]



− 夢の実現のための製品開発と社会受容のための標準化 −
自動車用ナビゲーションは、電子技術の急速な発展を背景として、目的地に効率的に行きたいというニーズが自動車開発の企画にのり、搭載する多くの技術、通信や道路データ等支える多くの技術が長年にわたる官学民の協力で実現し、普及してきた。またそれらの技術はITS標準化の名の下に国際的な整合が行われている。なかでもナビゲーションは運転中の視認・操作を伴う車載装置でもあり、安全性、特にヒューマンファクタが重要なアイテムになる。この論文は開発の歴史を紐解き、社会受容が可能になるヒューマンファクタの研究と標準化を紹介する。 伊藤 肇
軽元素原子を可視化する新型低加速電子顕微鏡の開発
[PDF:2.7MB]



− "トリプルC"プロジェクトのねらいと取り組み −
近年のソフトマター分野における単分子・単原子レベルの構造観察の需要に応えるためには、かつての分解能向上のみを追求した超高圧化とは一線を画する革新的な電子顕微鏡装置の開発が不可欠である。筆者らは低加速電圧の有用性にいち早く着目し、既存装置では到達し得ない大幅な低加速化と高性能化を同時に実現するため、軽元素物質の観察に特化したまったく新しい電子顕微鏡の開発に取り組んでいる。この論文では、球面収差(Cs)補正、色収差(Cc)補正、カーボン(C)ナノ材料、という三つの"C"に重点を置いた、この"トリプルC"プロジェクトのねらいと成果をまとめるとともに、将来の低加速電子顕微鏡の応用について展望する。 佐藤 雄太
ほか
座談会 システム科学技術の研究開発[PDF:1MB] 科学技術振興機構(JST)の研究開発戦略センター(CRDS)では、システム科学技術推進委員会を設けて、システム科学技術研究として何を推進すべきかを検討してきました。研究領域が細分化に進むのに対して、システムとは統合することであることから、シンセシオロジーが目指しているところと共通しているものがあります。システム科学技術推進委員会を牽引されてこられた木村英紀上席フェローにお話を伺いました。 シンセシオロジー編集委員会
 
  記事 要旨 著者
4巻2号 研究論文 適応学習型汎用認識システム: ARGUS
[PDF:2.3MB]



− その理論的構成と応用 −
近年、映像の監視や目視検査等、さまざまな分野で視覚システムのニーズが高まっている。特に、簡便で高速な実用的な視覚システムの実現が望まれている。この論文では、その目標に向けて筆者がこれまで行ってきた理論研究とその応用について概説する。まずこれまでのアプローチの問題点を指摘し、基礎としてのパターン認識の基本的な枠組、特に特徴抽出理論について言及する。次にその実践として提案した高次局所自己相関と多変量解析手法の2段階の特徴抽出からなる適応学習型汎用認識方式と、その応用事例を示す。実験結果は本方式の柔軟で効果的な性能を示している。 大津 展之
ヒューマノイドロボットのコンテンツ技術化に向けて
[PDF:2MB]



− クリエイターによる多様な表現の創出が可能な二足歩行ヒューマノイドロボットの実現 −
ヒューマノイドロボットは人間と同様に多様な振る舞いを表現する能力を秘めていることが大きな特徴であり、これをコンテンツ技術として利用することが期待できる。この利用法を実用的にするための技術的課題をロボットハードウエア、動作表現支援、音声表現支援、統合インタフェースの観点から考察し、それらの課題を解決する技術の開発と統合を行った。その結果人間にとても近い外観を有する二足歩行ヒューマノイドロボットHRP-4Cと、その動作をCGキャラクタと同様に振り付け可能な統合ソフトウエアChoreonoidを実現した。また、これらを用いたコンテンツ制作実験により、ヒューマノイドロボットのコンテンツ技術としての可能性を検証した。 中岡 慎一郎
ほか
水素センサーの研究開発
[PDF:2.1MB]



− 水素安全技術から国際規格まで −
水素ステーションでの水素漏れ検知に向けて開発した熱電式水素センサーは、優れた水素選択性と、0.5 ppmから5 %までの広範囲の水素濃度検知性能という特徴を示した。1年間のフィールドテストにおいてこれまでの技術を超える高感度と信頼性を実証し、その技術を実用化することで社会へ還元した。触媒燃焼と熱電変換技術を組み合わせた新しい原理、それを最大限活用するための微細加工技術、ガス燃焼に欠かせない高性能のセラミックス触媒部材、これら三つの構成要素を社会的なニーズという境界条件に合わせて、各要素の特長を最大に引き出すことができた。さらに、開発中に検討したセンサー性能評価技術を国際標準の提案へ発展させた。 申 ウソク
ほか
超高精細映像送受信を支える光通信ネットワークの実証実験
[PDF:2.4MB]



− ダイナミック光パス・ネットワーク映像配信実験 −
現在の通信ネットワークを構成する装置群の消費電力、通信容量等の限界を超えるために、産業技術総合研究所(AIST)は、情報通信関連企業5社と共同で、情報通信研究機構(NICT)、NHK放送技術研究所の協力のもと、高精細大容量映像時代を支える新しい光通信ネットワークの実証実験を実施した。この実験は研究開発テストベッド等による光ファイバー線路を用いて東京の秋葉原・大手町・小金井の3点を結び、AISTが中心に開発する「ダイナミック光パス・ネットワーク」を実際の環境下で動作させる試みである。異種間ネットワーク接続としてNICTの光パケット・光パス統合ネットワークと協調すると共に、NHKの超高精細映像の配信も合わせて行っている。この論文では開発された要素技術を用いて行った実証実験について、その目的や狙いとともに、動作結果を得るまでの技術的構成と成果について述べる。 来見田 淳也
ほか
論文補遺:PAN系炭素繊維のイノベーションモデル
[PDF:1.4MB]



− 励振モデル;研究者の活動とマネージメントの相乗効果 −
Synthesiology誌第2巻第2号159-169頁にて発表された論文「PAN系炭素繊維のイノベーションモデル」に関して、誤りや不正確な表現があり、著者の意図が必ずしも十分に伝わらず誤解を招く可能性もあったので、以下に正誤表、原論文を補遺するための追加参考文献および追加的な解説を記す。 中村 治
ほか
座談会 シンセシオロジー創刊3周年記念著者座談会
[PDF:1MB]
創刊3周年を迎え、これまでに執筆された方々を代表して、各研究分野からお一人ずつ出席していただき、シンセシオロジーだから書けたこと、執筆した論文がどう役立ったか、シンセシオロジーの特徴の一つである「査読者との議論」の感想等について語っていただきました。 シンセシオロジー編集委員会
 
  記事 要旨 著者
4巻1号 研究論文 レーザー援用インクジェット技術の開発
[PDF:2.1MB]



− 高スループットとファイン化の両立を目指した配線技術 −
次世代のエレクトロニクスデバイス製造技術において、多品種、小ロット生産および低コストかつ大面積化に対応できるフレキシブルな製造技術が求められている。この研究では、配線工程における高スループット化とファイン化を目指して、レーザー援用インクジェット技術を開発した。配線の微細化を実現するに当たり、外部からレーザーを照射して液滴を乾燥させ、基板上でのインクの濡れ広がりを抑制するという新たな着想に基づいて、これまでは困難であった高スループット化とファイン化を同時に実現し、配線幅10 µm以下でアスペクト比1以上の微細配線描画に成功した。この論文では、レーザー援用インクジェット技術開発に至る、ニーズに基づく技術開発課題設定、それを克服するための過程等、研究開発の流れと展開について報告する。 遠藤 聡人
ほか
研究戦略の形成とそれに基づいた構成的な研究評価
[PDF:2.2MB]



− 創造的営みとしての研究プログラム評価にむけて −
この論文では研究戦略の形成とそれに基づく構成的な研究評価について考察した。特に研究遂行にあたっては、戦略形成の一環として研究プログラムの目標とそれを達成するためのシナリオの設定が大切であることを強調し、その研究戦略に沿った研究評価を行うことの重要性を指摘した。また研究評価にあたっては、研究の進展(progress)、深さ(depth)、位相(phase)の3側面から評価を行うとともに、それらを研究戦略と対比しつつ演繹・帰納・仮説形成(アブダクション)用語1による推論を組みあわせて構成することの重要性や、最終的に総合的な評価を形成する際にも構成的な評価法が重要なことを述べた。さらに産総研における研究ユニット評価および長崎県における公的研究機関の研究プログラム形成と評価の実情を紹介して、構成的な評価法との対比を試みた。構成的な評価法は、研究の価値を引き出し、次の進化に向けるために必要な創造的営みの一つとして捉えることができる。 小林 直人
ほか
有機化合物のスペクトルデータベースの開発と公開サービス
[PDF:1.7MB]



− 大規模データベースの運用の継続と成功の秘訣 −
産業技術総合研究所の有機化合物スペクトルデータベース(SDBS)は1982年に開発を開始し、以来30年間変わらない部分と大きな変化を遂げた部分を混在させつつ高度化されてきた。標準スペクトルとして信頼性の高いものを収録すること、1種類の化合物に複数種類のスペクトルを収録することの二つの基本コンセプトと、汎用化合物を対象とする点は、開発当初から現在まで変わらず引き継がれている。一方、データベースを収集するプラットフォームと公開形式は大きく変わった。データのウェブ公開に伴ってユーザーからの声を取り上げ、各種の依頼や指摘に対応するようになったことも、大きく変わった点である。長期間にわたって開発と公開サービスを継続し、現在ウェブを通して多くの研究者、技術者、教育者、学生らによって利用されるにいたった。データベースの全体構想から、構造の設定、データの収集方法、データの公開方法等主要なプロセスを統合的、構成的に記述する。 齋藤 剛
ほか
マイクロ燃料電池製造技術開発への挑戦
[PDF:2MB]



− 革新的セラミックス集積化プロセスを活用するコンパクトSOFC −
コンパクトで急速な起動と停止が可能な、高出力かつ高効率の発電モジュール製品の実現が望まれている。新規エネルギー製造産業市場での新たなアウトカム創出を目指して、セラミックス集積化製造技術のプラットフォームを活用し、独創的アイデアから試作および評価へ連続的に直結する開発を行なった。その結果、世界的にも新しいコンセプトに基づく独創的なコンパクトで高出力な低温作動型集積SOFCモジュールをセラミックスの機能から構造融合技術の高度化により実現しており、独創的な技術として関心を集めている。この論文では、下記の構成で、産業ニーズとその製品化に向けた課題を克服するための産学官連携研究でのアプローチや手法等を示す。 藤代 芳伸
ほか
座談会 日本のものづくりとシンセシオロジー
[PDF:1.8MB]
日本が優位を保ってきたものづくりに、新たな強みを付加することが求められています。そのためには、研究開発における新たな仕組みを構築する必要があります。日本においてものづくりを主導してこられた方々に、新たなものづくりの戦略とその中でのシンセシスの重要性、また、産総研の目指す本格研究の役割を語っていただきました。 シンセシオロジー編集委員会
報告 シンセシオロジーワークショップ
[PDF:1.6MB]



− オープンイノベーションハブに向けた技術統合の方法論 −
2010年10月に産業技術総合研究所が主催する「産総研オープンラボ」の講演会の一つとしてシンセシオロジーワークショップを開催しましたので、その概要を報告いたします。
このワークショップでは、シンセシオロジー誌にこれまで掲載された学術論文を題材として構成的研究の類型化を試みるとともに、イノベーション推進の方法論について構成的研究開発を自ら推し進め、多くの実績を挙げてきた産業界の研究者とともに議論しました。
シンセシオロジー編集委員会
 
  記事 要旨 著者
3巻4号 研究論文 SiC半導体のパワーデバイス開発と実用化への戦略
[PDF:1.8MB]



− 新規半導体デバイス開発における産総研の役割 −
SiC半導体のパワーデバイスの実現は、その省エネルギー効果により大きな期待が持たれている。SiCのような新規半導体のデバイスとしての実用化には、乗り越えなくてはならないいくつもの技術上の壁がある。産総研が関与した国家プロジェクトを中心として15年を越える実用化に向けての研究開発活動を、産総研内の組織の変遷に対応させて、1)研究目標、2)個別課題の設定と解決のための戦略およびその成果、3)戦略の妥当性の評価に分けて記述し、最後に今後の課題について述べる。 荒井 和雄
単結晶ダイヤモンド・ウェハの開発
[PDF:1.6MB]



− マイクロ波プラズマCVD法による大型化とウェハ化技術 −
ダイヤモンドは超高圧安定相であることから大型結晶の合成が困難であり、応用は工具など硬度を利用した用途に限られていたが、大きさとコストの課題をクリアできれば、その用途は計り知れない。特に究極の半導体と称され、半導体開発ロードマップ上では、炭化ケイ素SiCや窒化ガリウムGaNの次に位置している。高温動作が可能であり、物質中最高の熱伝導率が活かせるパワーデバイスが実現すれば、例えば、車載用インバータを冷却フリー化でき、低電力損失と冷却システムの軽量化の両面から省エネに貢献できる。本稿では、大型化が可能な気相合成による単結晶ダイヤモンド合成と難加工材であるダイヤモンドをウェハ形状にする技術開発について述べる。 茶谷原 昭義
ほか
日本全土の元素分布の調査とその活用
[PDF:1.6MB]



− 陸と海を統合した地球化学図の作成 −
日本全土における海と陸の元素分布を調査し、日本の地球化学図を初めて作成した。これにより日本列島の海と陸のバックグラウンド値が明らかになり、陸から海への元素の連続的な流れを知ることができるようになった。地球化学図作成に用いた試料は、陸では河川堆積物3,024個、海では海底堆積物4,905個で、分析した元素はヒ素、水銀、カドミウムなどの有害元素を含む53元素である。この研究では、特定の地域で確立した方法を適用し、現実的な実施可能性を考慮した発想の転換により一挙に全国カバーへの展開を実現し、陸域から海域、さらに土壌へと対象を拡大している。地球化学図は、人間・産業活動による土壌や海底堆積物の汚染の評価にも使用される。また、結果は出版やweb公開により、社会的なインパクトを与えている。本稿では、日本の地球化学図を作成するために採った研究シナリオを述べ、次に試料採取から試料処理、化学分析・元素濃度測定、地図作成、データ公開に至る一連の研究プロセスを述べる。 今井 登
いかにしてカーナビゲーションシステムは実用化されたか
[PDF:1.4MB]



− 開発マネージメントと事業化について −
日本が実用化の先鞭をつけた車のカーナビゲーションシステムは、今や全世界に広がりたいへん有用なものとなり、日本だけでも約5000億円/年を超える事業規模となっていると思われる。しかし、これを実現するためには、当時にはなかった全国のデジタル地図作成のための仕組みづくりと作成、交通情報を車に流す仕組みや米国によるGPS整備とその利用等環境整備が必要であり、これに多くの労力を割いた。またマップマッチング等位置検出技術、ジャイロセンサー、ディスプレー、メモリー、マイコン等ナビに必要なソフトウエア、ハードウエア開発が必要であった。今ではカーナビゲーションシステムは車載情報通信システムとして発展拡大している。まだ世の中に同システムに必要な要件が整備されていなかったところから始めた開発と事業化について、開発マネージメントの観点から述べる。 池田 博榮
ほか
鋳造技術と粉末冶金技術の融合による新材料開発
[PDF:1.5MB]



− 金属間化合物を活用した高機能硬質材料 −
セラミックス粒子を金属で結合した硬質材料は、わが国の高度加工技術を支える金型や工具の材料として利用されている。しかし、硬質材料は資源的に少ないレアメタルを大量に含むため、新しい材料開発が求められていた。そこで、Fe-Al金属間化合物を結合相とした硬質材料を開発した。この硬質材料は鋳造と粉末冶金の技術を組み合わせたプロセスで合成することにより高硬度で高強度とすることができた。本稿では開発した材料を工業的に利用するための第2種基礎研究への取り組み、さらに異なる専門分野の研究者の融合による効率的な研究開発の方法論について紹介する。 小林 慶三
ほか
対談 臨床医学研究とシンセシオロジー
[PDF:632KB]
医学研究の分野においては、基礎的研究の成果を治療というかたちで社会に活かす研究のことを臨床研究と呼んでいます。我が国におけるこの臨床研究の状況がどのようになっているのか、国立精神・神経医療研究センターの樋口理事長と本誌小野編集委員長が対談し、医学領域における臨床研究とシンセシオロジーとの共通の目標などについて話し合いました。 シンセシオロジー編集委員会
 
  記事 要旨 著者
3巻3号 研究論文 映像の安心な利用を可能にする映像酔い評価システムの開発
[PDF:2.2MB]



− 人間特性研究/映像分析技術/映像制作技術の融合による安心・快適な映像を提供するための環境づくり −
映像制作者が、自ら制作した映像によって生じ得る映像酔いの程度について、その時間推移を確認できる映像酔い評価システムの開発を行った。映像技術の進展に伴い映像酔いに対する社会的認知が広まりつつあり、娯楽や教育、医療など映像の有効な利用に対する可能性を損なわないために、映像制作者に理解を求めるためのツールとして本システムは有効である。この開発には、映像酔いの基礎特性を基盤として、これを一般の映像評価に適用するために、映像解析、映像制作、生体影響計測に関する研究協力が不可欠であった。 氏家 弘裕
戦略的システムデザインによる最適化設計法の提案
[PDF:1.8MB]



− 排熱の再利用によるデータセンターと農業のCO2排出量の削減 −
データセンターはICT(Information and Communication Technology)の重要なインフラであるが、地球環境問題の観点から電力消費の削減およびCO2排出量の削減が重要な課題となっている。しかし、データセンター単独の効率化だけでは大幅なCO2の削減は難しい。そこで、異なるステークホルダー間における「物理システム」と「価値システム」の二層の概念空間と、その中で最適化をはかる「戦略的システムデザイン」の思考を提案し、事例としてデータセンターの排熱をハウス栽培農家で再利用するシステムについて物理面および価値面の両方から考察した。こうした戦略的システムデザイン思考による複合システムの設計は単独のシステムと比較して、CO2排出量削減に効果があり、価値的にも優れたシステムとなることを明らかにした。 福田 次郎
ほか
複雑システムの信頼性を向上させる開発手法
[PDF:2.3MB]



− アーキテクチャ設計手法とモデル検査の融合 −
本稿では、システムの仕様を、システムを構成する要素間による協調動作が整合している構成要素の仕様および構成要素間のインタフェース仕様に分解する開発手法を示す。本開発手法は、システム開発において既に有効性が認められているシステムエンジニアリング標準におけるアーキテクチャ設計手法およびモデル検査を、ブリッジ技術で融合して構築される。産業用ロボットの開発に対して本開発手法を適用した結果を示す。適用結果から、産業界の複雑システムに対して本開発手法が有効であることを示す。 加藤 淳
ほか
ものづくり産業の国際競争を支援する電気標準
[PDF:2.4MB]



− キャパシタンス標準の実現と計量トレーサビリティ体系の確立 −
キャパシター(コンデンサー)は電子部品の中でも最も基本的な素子の一つであり、各種電気機器に多数用いられている。電気機器などの産業界において、最近、キャパシターの品質の国際規格への適合要求が強くなっている。特に国家標準への計量トレーサビリティは必須の事項として要望されている。産業界の要望に応えるため、産総研において世界トップクラスのキャパシタンス標準を開発し、それを迅速に供給するための技術開発を行った。具体的には従来法に代わって新たに量子化ホール抵抗に基づくキャパシタンス標準を開発し、また校正事業者の認定を支援して標準供給体制の確立を行った。さらに供給の迅速化、低コスト化のために遠隔校正システムを開発した。 中村 安宏
ほか
遺伝子解析の精度向上と試薬の開発
[PDF:1.9MB]



− ライフサイエンスに用いる化学試薬の製品化 −
遺伝子解析は、複数の要素技術が統合されて構築されている。多くの要素技術の中で、筆者らは化学試薬に着目し、その機能を高度化することで遺伝子解析技術全般の精度を向上させることを目指した。本稿では、遺伝子解析用試薬の開発に関する着想から製品化に至るまでの展開を述べた後、そのプロセスに関して考察する。 小松 康雄
ほか
安全・安心のためのアニマルウォッチセンサーの開発
[PDF:2.1MB]



− 無線センサーによる鶏健康モニタリングシステム −
動物の健康状態をモニターする無線センサー端末と、動物集団の健康管理を行うアニマルウォッチセンサーネットを開発している。特に、パンデミック対策として、鳥インフルエンザ発生の早期発見システムへの応用に主眼をおいた小型・軽量・フレキシブル・メンテナンスフリーな無線センサー端末を実現することで、人への感染防止など、人類の健康と食の安全の確保に資することを目的としている。システム実現のため、特に、これまで培ってきたMEMS技術と、鶏の生体・行動特性やインフルエンザ症状などの解析にかかわる生命分野、無線技術などの情報分野の各技術との融合により、イベントドリブン型の超低消費電力端末や、超短電文化に対応したダイレクトコンバージョン方式の受信システムなどを開発している。 伊藤 寿浩
ほか
インタビュー イノベーションを推進する根本的エンジニアリング
[PDF:1.5MB]
日本工学アカデミーには、社会のための工学という立場から、どのような科学技術政策が必要かを分析し、有効な政策提言を行なう政策委員会があります。その政策委員会のもとで、我が国が重視すべき科学技術のあり方に関する提言が行なわれました。この提言のためのタスクフォースの幹事の鈴木浩さんに本誌赤松幹之編集幹事がインタビューして、ここで提唱されている「根本的エンジニンリング」の考えをうかがい、シンセシオロジーとの関連について話し合いました。 シンセシオロジー編集委員会
 
  記事 要旨 著者
3巻2号 研究論文 サービス工学としてのサイバーアシスト
[PDF:2.7MB]



− 10年早すぎた?プロジェクト −
サイバーアシスト計画は2000年に発動し、2001年より2005年まで産総研サイバーアシスト研究センターを中心として研究開発が行われた。これは日本におけるユビキタス・コンピューティングやサービス工学の先駆けであったと同時に、世界的にも先見性を持った計画であった。おそらく、現在であれば高く評価された活動であると考える。ポイントは人間中心の情報システムを謳ったこと、実空間でのサービス提供を行ったこと等である。本稿は同センターが当時残した文書を中心にセンターの目標と活動を再構成する。また、それを受けて今後の研究方向を示す。 中島 秀之
ほか
学問分野を超えた「システムデザイン・マネジメント学」の大学院教育の構築
[PDF:2.3MB]



− 大規模・複雑システムの構築と運用をリードする人材の育成を目指して −
環境共生や安全等の社会的価値に配慮した大規模・複雑システムの構築や運用をリードする人材の育成を行うためには、学問分野を超えた文理融合型の「システムデザイン・マネジメント学」教育が必要である。そこで、技術システムのみならず社会システムを含むあらゆるシステムを教育の対象とし、システムのライフサイクルに沿ったデザイン能力、システムの実現に必要なマネジメント能力を身につけることのできる大学院教育を構築した。まず、社会・産業界や関連する国内外の教育研究機関等のステークホルダーと連携し、教育カリキュラムの整備や教員の採用、教育設備や研究拠点の整備、学生の募集、教育の実施、更には成果公表の方法を設計した。設計にあたっては、学生が身につけるべき能力と知識を六つに分類し、それらの能力と知識を身につけることのできる教育研究機関として2008年4月に大学院を開設した。現在まで約2年間大学院教育を実施し、学生の自己評価、外部評価委員による評価、論文等の学生の成果に基づいて検証した結果、構築した大学院教育の有効性を確認した。 神武 直彦
ほか
紫外線防御化粧品と評価装置の製品化
[PDF:2.3MB]



− 産総研の論理・戦略的方法と工業技術院の経験・試行錯誤的方法を組み合わせた地域連携型の製品化研究 −
紫外線防御化粧品の製品開発の研究事例を紹介する。最近の化粧品は、UV防御・透明感・使用感の3課題を同時に解決する必要がある。しかし、最適な製法と使用感の評価法は確立していない。本研究は、産総研の戦略的地域連携とAIST認定付与ベンチャー、事前シナリオを設定しない工業技術院時代の即効的な技術指導とを組み合わせ、新製法と新評価法を具現化し、独自性の高い化粧品および粉体評価装置を製品化した。特に社会的要素(地域連携)について、Synthesiology誌の提唱するアウフヘーベン型・ブレイクスルー型・戦略的選択型の研究開発の方法論と、進化論など自然現象とのアナロジーによる人文系のアイデアとを比較検証し、方法論としての一例証を示す。 高尾 泰正
ほか
コンパクトプロセスの構築
[PDF:2.4MB]



− 高圧マイクロエンジニアリングと超臨界流体との融合 −
持続可能な発展をめざすためには、大量集中生産方式をベースに構築された産業構造・社会システムおよび技術体系を早期に変革していくことが強く望まれる。必要なものを必要な場所で必要な量、かつ多品種で生産しうる分散適量生産方式の実現に向けて高速で制御性の高いコンパクトプロセスの確立が求められており、そのコア技術としてマイクロリアクタ技術と超臨界流体利用技術の融合が注目されている。これらを実現するためには、急速熱交換や精密な温度制御等高圧マイクロエンジニアリングの基盤確立が初めに必要であり、次にそれに基づいたプロセス開発が行われる。ここでは、超臨界水条件下での有機合成を中心に、無機合成、および二酸化炭素を用いた革新的塗装技術についても議論する。 鈴木 明
ほか
正確性・コストパフォーマンスに優れた遺伝子定量技術の開発と実用化への取り組み
[PDF:2.2MB]



− 蛍光消光現象を利用した遺伝子定量技術の開発 −
遺伝子定量技術は医療、農業、水産業、環境、食品等の幅広い分野で利用されており、社会的にも重要な技術である。筆者等は、グアニン塩基との相互作用により蛍光が消光する現象に着目し、それを利用した正確性・コストパフォーマンスに優れた新しい遺伝子定量技術を開発した。本稿では、既存の遺伝子定量技術に内在する問題を克服するために選択した要素技術とその統合・構成による新規遺伝子定量技術開発に関する研究展開を中心に、企業と取り組みつつある開発技術の実用化に関するシナリオについて論じる。 野田 尚宏
報告 シンセシオロジー(構成学):知の統合を目指す学問体系
[PDF:1.9MB]
2009年12月に横断型基幹科学技術研究団体連合(横幹連合)が主催する第3回コンファレンスが東北大学で開催されました。その中に「シンセシオロジー(構成学):知の統合を目指す学問体系」という特別企画のセッションを設けていただき、講演と総合討論を行いました。ここでは横幹連合のご了解を得て、基調講演の論文を再掲し、総合討論の概要をご報告します。 シンセシオロジー編集委員会
 
  記事 要旨 著者
3巻1号 研究論文 1550 ℃に至る高温度の計測の信頼性向上
[PDF:2.8MB]



− 熱電対のための温度の標準体系構築 −
1990年代後半から、熱電対による1550 ℃までの温度計測のための国家計量標準を整備し、それに基づく標準体系を構築して、高温域の温度計測の信頼性を向上させた。温度の国家計量標準が何段階かの校正の連鎖を経て、実際の計測に使われる熱電対に移転される仕組み(トレーサビリティ体系)を、標準器の利用の容易さ、校正事業者と産総研との役割分担など、多くの要素を考慮に入れて設計した。新しく開発した標準技術と、現在までに民間企業が培ってきた技術とを適切に融合させて、新しい技術の普及を見定めながら、全体として我が国にとって最も望ましいトレーサビリティ体系を構築した。 新井 優
ほか
マイクロチップを用いたバイオマーカー解析コア技術の開発
[PDF:2.2MB]



− POCTデバイスとしてのマイクロチップ基板の可能性を探る −
近年、「医療現場での臨床検査」Point of care testing(POCT)つまり患者の傍らでの即時検査が求められている。そして疾患関連バイオマーカーの迅速・省サンプルな測定デバイスの構築に向け、各種ナノバイオデバイスを用いたPOCTへの応用研究が多数なされている。我々は、臨床経験を踏まえた生物系ユーザーの立場から、市販のマイクロチップ電気泳動による血液中に存在する糖を対象とした解析への応用や、マイクロ流体を利用したマイクロ流路上での抗原抗体反応による迅速な血中タンパク質検出系の構築を行っている。これらの知見をもとに、本論文ではマイクロチップ基板を用いたPOCTデバイス実用化への可能性を検討した。 片岡 正俊
ほか
石油流量国家標準の確立とわが国の標準供給体制
[PDF:2.3MB]



− 信頼性のある効率的なトレーサビリティ体系の構築への取り組み −
膨大な石油製品の取引や課税の数量の根拠となる石油類の流量測定の計量標準は、通商上、省エネ政策実施の観点、プラントの高度な品質管理の観点から重要である。そこで、標準の信頼性、達成可能な不確かさ、利便性について石油流量の標準供給体制を調査・分析し、わが国に適した国家標準の性能および供給の仕組みを設計した。これに基づいて、校正技術の検討、安全対策と不確かさ低減のための技術開発を行い、中核となる液種と流量範囲で世界最高水準の国家標準を確立するとともに、校正事業者の国家認定制度を利用した標準供給体制の発足を技術的に主導した。さらに、国際比較による国家標準の同等性の検証などを通して本事業の評価を行った。 嶋田 隆司
ほか
臨床情報学のための野外科学的方法
[PDF:2.1MB]



− 技術移転の方法論に向けて −
情報処理に関するリスクを抱える現場に対して、情報学の研究成果を用いてそのリスクを軽減する活動に固有の学術としての臨床情報学を提唱する。本稿では特に、数理的なシステム検証技術のシステム開発現場への技術移転を例にとり、技術移転の過程の体系化を試みる。具体的には、技術移転のシナリオを野外科学的方法論のなかに位置づけ、シナリオで用いるフィールドワークやインタビュー、参与観察などの各要素技術の役割を論じる。 木下 佳樹
ほか
製造現場における熟練技能の抽出に関する研究
[PDF:2.8MB]


− 技能の可視化および代替に関する研究 −
中小製造業の現場にある熟練技能者の技能を抽出し、後継者に円滑にその技能を継承するため、鋳造、鍛造、メッキなどの加工技術について、熟練技能者のもつ判断の技能を抽出する方法を提案する。この方法に基づき、各加工法の個別の技能について、その代替となる実際の加工現場で利用可能な計算機システムを開発した成果を報告する。また、将来の製造業における熟練技能者の在り方についても議論する。 松木 則夫
暗号モジュールの安全な実装を目指して
[PDF:3.9MB]



− サイドチャネル攻撃の標準評価環境の構築 −
近年、暗号アルゴリズムを実装した暗号モジュールの利用が急速に拡大しており、その実装の安全性評価手法の標準化と、公的機関による評価・認証制度の確立が求められている。特に、暗号モジュールの消費電力や電磁波を解析して、その内部の秘密情報を盗み出すサイドチャネル攻撃が大きな注目を集めている。しかし、各研究機関における独自の実験環境が、その解析結果の追試や評価手法の標準化を妨げていた。そこで我々は、サイドチャネル攻撃の標準評価環境として暗号ハードウエアボードおよび解析ソフトウエアを開発し、世界中の研究機関での利用を進めながら、国を超えた産学官連携により、国際標準規格策定への貢献を行っている。 佐藤 証
ほか
論説 “社会のための科学”と研究開発評価
[PDF:1.9MB]



− プログラム評価の構造とSynthesiologyへの示唆 −
“社会のための科学”が叫ばれて久しいが、そのような研究開発をどのように評価すればよいのであろうか。本稿では、研究開発評価のそもそもの考え方に立ち戻って概念整理することで、“社会のための科学”研究に有効な評価とは何かについて分かりやすく解説することを試みた。そのポイントは、評価はそれ単独では意味をなさず、研究開発を通じて実現させたいことへの道筋(戦略)と一体となって初めて機能すること、そして評価の役割は、戦略をより良く実行していくために実態をつまびらかにすること、などである。 大谷 竜
座談会 座談会:シンセシオロジー創刊2周年を迎えて
[PDF:1.9MB]
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  記事 要旨 著者
2巻4号 研究論文 実時間全焦点顕微鏡の開発・製品化
[PDF:2.8MB]



− 微細なものを思いのままに −
本論文では、マイクロ環境下での光学的なスケール効果の問題を“実時間”で解決する実時間全焦点顕微鏡の構成にあたり、システムを必要となる構成要素に分解し、その構成要素を製品として構築するためのいくつかの試みを紹介しながら、実時間全焦点顕微鏡のシステム構成方法について論じる。実時間全焦点顕微鏡の構成に際しては、マイクロ環境下での作業を前提とし、理論だけにとどまらず、製品化を見据えた実現を視野に入れながら構成した。 大場 光太郎
誰でも作れて携行できる長さの国家標準器
[PDF:2.2MB]



− ヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザ共振器の機構設計 −
長さの国家標準として用いられるヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザの発振波長は、レーザ共振器の機械的長さで決まる。従来、機械的安定度の高い共振器を実現するためには特殊な材料や素子を使ったり、周囲環境を厳重に管理したりすることは当然と考えられてきた。しかし、レーザの動作や共振器に要求される性能を詳しく調べた結果、レーザ共振器の機構に要求される機械的特性の多くは、市販の汎用部品で十分実現可能であることが明らかとなった。汎用部品を多用して大幅な価格低下を実現しつつ、発振波長の安定度や周囲環境の変動に対する耐性を大幅に向上させることが可能となり、国家標準器として十分な精度で、かつ保守や移送が容易なものを実現した。この設計にもとづくヨウ素安定化ヘリウムネオンレーザは、日本の長さの国家標準として長年用いられただけでなく、民間の校正事業者が持つ標準器として、また発展途上国の国家標準器としても用いられている。 石川 純
騒音計測の信頼性をいかに確保するか
[PDF:2.3MB]



− 音の標準の開発と新しい供給体制 −
騒音計測をはじめ音響分野での計測結果に対する信頼性を確保するため、産総研は必要となる要素技術を開発し、我が国の計量法に基づいて標準マイクロホンを頂点としたトレーサビリティ体系を整備した。この体系のもとで、新たな音の標準の供給サービスを開始したことにより、我々の日常生活の安全・安心を支えるために社会が必要としている、不確かさの小さな騒音計測が可能となった。 堀内 竜三
循環発展的なプロジェクト構造を生むバイオインフォマティクス戦略
[PDF:2.1MB]



− 創薬ターゲット遺伝子の網羅的機能解析 −
 大量の生命情報データの情報洪水の中、バイオインフォマティクス技術の役割は高まり、実験上の大きなリスクを軽減し、実験の設計に資する情報を提供する形で貢献することが期待されている。この目的のもと、私たちは細胞膜に存在するGタンパク質共役型受容体(GPCR)を中心に、ゲノム配列から遺伝子を同定してそれらの機能解析を行うための計算パイプラインを構築し、その応用結果を網羅的な機能解析総合データベース(SEVENS)として練り上げてきた。このコア技術が共同研究の呼び水となり、その後循環発展的に展開しながら今日も続いている。この流れは、三つの要素(長期熟成されたコア技術、実験研究者との密な連携、技術インキュベーションを生む環境)を駆動力として進む研究の方向性と、進展の速いライフサイエンス分野の方向性の相互作用として進み続けるダイナミックな形態である。 諏訪 牧子
ほか
バイオ燃料を木材からナノテクで生産する
[PDF:2.8MB]



− セルロースの構造特性を利用した酵素糖化前処理技術 −
現在、木質バイオマスを原料として、セルロース成分等を酵素加水分解して糖に変換した後、発酵してエタノールを製造する技術が注目されている。そのプロセスではセルロースの反応性を高める前処理が必要となる。粉砕処理は効果的な前処理技術の一つであるがコスト高が課題であった。近年我々は、経済的な粉砕前処理方法として湿式メカノケミカル処理技術を開発した。この技術ではセルロース成分をナノサイズの繊維にまでほぐしている。生成したナノ繊維は、セルロースの結晶性が保持され、さらにリグニンが残存していても、高い酵素反応性を示した。我々が開発した前処理技術は、木材やセルロースが持つナノ構造の特徴を活用した方法である。 遠藤 貴士
最先端の地質研究と国土の基礎情報
[PDF:3.9MB]



− 5万分の1地質図幅の作成 −
地質図幅は、地層や岩石など国土の構成物を表した図面であり、人間が自分の周囲の地球環境を科学的に理解するための基本的な情報が記載されている。資源、防災、立地、環境、学術など、多種多様な用途がある。大学や企業が作成する地質図は、それぞれが興味をもつ特定の地層・岩石を対象にすることがほとんどであるが、産総研が作成する地質図幅は、その地域に分布するすべての地層・岩石に関わる調査結果を、その地域の形成史を矛盾なく表せるよう1枚の図面に統合したものである。地質図幅は個々の研究成果を統合して作成していくが、これまで作成の考え方と過程を記した研究論文がないので、著者が関わった5万分の1地質図幅を例に地質図幅の作成方法論を示す。 斎藤 眞
インタビュー インタビュー:工学の克復とシンセシオロジー
[PDF:1.9MB]
日本工学アカデミーは工学に関するさまざまな事項を高い見地から検討・議論し提言をまとめていますが、その中の「工学の克復研究会」は現代における工学のあり方をさまざまな角度から検討しています。工学のあり方はシンセシオロジーの理念とも深く関係していますので、研究会メンバーのお一人である長井寿さんに本誌小野編集委員長がインタビューして「工学の克復」に関する考えを伺い、シンセシオロジーとの関係を話し合いました。 シンセシオロジー編集委員会
 
  記事 要旨 著者
2巻3号 研究論文 活断層からの地震発生予測
[PDF:2MB]



− 活動セグメント固有カスケード地震モデルによる活断層の活動確率予測 −
活断層の過去の活動から将来の地震発生を予測するため、活断層を固有の活動繰り返しを持つ活動セグメントという単位に区分し、それぞれの活動セグメントがあるときは単独で活動し、あるときは隣接する活動セグメントが連動するという「カスケード地震モデル」を採用した。これにより、野外での調査結果に矛盾することなく、統一的な基準により活断層の将来の活動確率を評価することが可能となった。その成果を「全国主要活断層活動確率地図」として公表した。 吉岡 敏和
2タイプのリード・ユーザーによる先端技術の家庭への導入モデルの提案
[PDF:1.8MB]



− IH技術に対する調理システムの開発と普及 −
本研究は、induction heating(IH)技術の家庭への普及に関する実証分析により、企業と独立した多様なリード・ユーザーが先端技術を家庭へ普及・導入に貢献するモデルを提案する。大企業がIHを開発しても、家庭が導入するときは、調理道具またレシピ等、付随する調理システムが必要になる。活躍するのは異なった2タイプのリード・ユーザーである。技術に通じ技術の機能性を追求する論理的リード・ユーザーは機能性の観点から調理システムを開発する。一方、技術内容には関心が薄い感性的リード・ユーザーは製品価値に対する社会トレンドの影響に対して卓越した直観力を持っており、調理システムを魅力的にすることによって製品の普及に貢献する。今後、例えばロボットなどのように普及に成功していない先端技術を家庭へ導入するためには、既存技術にはない新しい価値を提示する必要があり、そのためには、産業また大学・公的研究機関が組織から独立した多様なリード・ユーザーと柔軟に連携し、製品を魅力的にすることによって普及を推進する必要がある。 久保 友香 
ほか
スピントロニクス技術による不揮発エレクトロニクスの創成
[PDF:2.1MB]


− 究極のグリーンIT機器の実現に向けて −
不揮発エレクトロニクスによる究極のグリーンIT機器の実現を目指して、スピントロニクスの本格研究を行った。不揮発エレクトロニクスの中核となる大容量・高速・高信頼性の不揮発性メモリを実現するために、酸化マグネシウム(MgO)を用いた高性能の磁気抵抗素子とその量産技術を開発した。この技術を用いた超高密度ハードディスク(HDD)磁気ヘッドはすでに製品化され、現在究極の不揮発性メモリ「スピンRAM」の研究開発が精力的に進められている。 湯浅 新治 
ほか
ガス中微量水分測定の信頼性の飛躍的向上
[PDF:2.1MB]


− 計量トレーサビリティの確立と計測器の性能評価 −
産総研で確立した微量水分の国家標準をもとにして、ガス中の微量水分測定の信頼性が近年になって飛躍的に向上した。その結果、従来の微量水分測定法の問題点が明らかになった。本稿では、微量水分測定の信頼性向上を目標に産総研が策定したシナリオ、世界的にも独自の方法による我が国の微量水分国家標準の開発、国家標準を産業現場につなぐ計量トレーサビリティ体系の整備、そして国家標準との比較測定によって明らかとなってきた市販計測器の課題を述べる。微量水分測定の信頼性の飛躍的向上により、産業現場で使われる高純度ガスの適確な評価が可能になった。 阿部 恒
乾電池駆動可搬型高エネルギーX線発生装置の開発
[PDF:2.1MB]



− X線非破壊検査におけるイノベーションを目指して −
電子加速器の小型化及び省エネルギー化、乾電池駆動超小型電子加速器という産総研の有する要素技術と、企業が開発したカーボンナノ構造体電子源の技術を統合することによって、単三乾電池1個で駆動し、100 keV以上の高エネルギー高出力X線を発生でき、高精細なX線透過像を得ることができる実用的な可搬型X線発生装置の開発に成功した。本稿では、これらの要素技術について述べるとともに、各要素技術がいかに成果に結びついたかについて考察する。 鈴木 良一
報告 学問と技術の統合
[PDF:1.5MB]



− 横幹連合・統数研・産総研合同ワークショップ −
狭い技術分野に限定した研究開発だけでは、社会や学問の現代的要請に応えられないとの認識が強まっています。2009年1月19日(月)産総研臨海副都心センターにて、産総研シンセシオロジー編集委員会、特定非営利活動法人横断型基幹科学技術研究団体連合(横幹連合)、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構統計数理研究所(統数研)の3機関が合同で、「学問と技術の統合」に関するワークショップを開催しました。構成的研究方法論の理解や促進のために、また各機関の研究上の理念共有のために、本ワークショップにおける6名の講演概要を紹介します。 シンセシオロジー編集委員会
 
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2巻2号 研究論文 遺跡が語る巨大地震の過去と未来
[PDF:1.8MB]



− 境界領域「地震考古学」の開拓 −
考古学の遺跡発掘調査で地震の痕跡が見つかることが多いが、従来は調査の対象とされずに見逃されていた。筆者は、1988年に「地震考古学」を提唱し、遺跡の地震痕跡を用いた研究方法を広く普及させた。これによって、考古学と地震関連分野との境界領域が開拓されて様々な成果が得られた。南海トラフで発生する巨大地震について過去2千年間の発生年代がわかり、次の発生を考える基礎資料となった。内陸の活断層による地震痕跡も数多く見出されており、京阪神・淡路地域では1596年慶長伏見地震での地盤災害が詳しくわかった。液状化現象についても、遺跡での観察結果から新しい知見が得られた。また、地震痕跡は一般市民にも理解しやすいことと、マスメディアにも取り上げられる機会も多いことなどにより、地震災害軽減のための活動へ大きく寄与している。 寒川 旭
ものづくり産業を支える高精度三次元形状測定
[PDF:2MB]



− 計量トレーサビリティ体系の構築と標準化 −
近年、製造業では効率的なものづくりを行うため、設計、製造、評価の全過程で一貫したデジタルデータによる作業が行われている。製品の形状の評価に多用される三次元測定機は製品の質を確保するための重要な要素の1つであるので、形状測定の信頼性を向上させるため、長さの国家標準にトレーサブルな校正体系を我が国に構築し、あわせて校正方法の標準化を行った。この中で産総研は高精度の国家計量標準を開発するだけでなく、三次元測定機の校正事業者のための技術基準を作成し、また地域の公設研究所に技術支援を行って我が国全体の三次元測定の信頼性を向上させた。これらの活動は、我が国産業界における三次元測定の精度を世界トップレベルとすることに貢献している。 大澤 尊光 
ほか
安心・安全な次世代モビリティーを目指して
[PDF:2.6MB]



− 全方向ステレオカメラを搭載したインテリジェント電動車いす −
全方向のカラー画像と三次元情報を同時かつリアルタイムで取得する能力を持つ「全方向ステレオカメラ」を電動車いすに搭載することにより、高齢者や障害者はもちろん、全ての人が安心で安全に、しかも最小限のエネルギー消費かつ低公害で、歩行者とも共存しながら移動可能とすることを目指した新しい知的モビリティーを提案する。 佐藤 雄隆 
ほか
部材の軽量化による輸送機器の省エネ化
[PDF:1.7MB]



− 難燃性マグネシウムの研究開発 −
輸送機器の分野では、省エネルギーと二酸化炭素排出量の低減に直結する技術革新が喫緊の課題となっている。この要求に対して機器の軽量化は直接的な効果をもたらすことから、軽量で高機能の構造材料が求められている。マグネシウム合金は、その有力な候補として長らく期待されてきた材料であるが、容易に発火するという致命的な問題を有していた。難燃性マグネシウム合金は、発火性を抑制して金属材料としての実用性を飛躍的に高めた材料である。これを低環境負荷の基幹材料として育成することは、輸送機器の軽量化のための技術革新に大きく貢献する。本稿では、実用化に関わるさまざまな技術課題の解決を通じて、新素材の産業化のための1つの方法論を述べる。 坂本 満 
ほか
セラミックス製造の省エネプロセスの確立を目指して
[PDF:1.7MB]



− 新規バインダー技術の開発 −
地球環境保全の観点から、セラミックス産業においても製造プロセスにおける投入エネルギーの削減が強く望まれている。本研究では、現在稼動しているセラミックスの製造プロセスを対象にした省エネプロセスについて検討を行った。研究開発にあたっては、既存プロセスへの適用、既存装置の利用、低コスト化、機能・特性の維持等の条件を設定した。適用可能なプロセス技術の検討および抽出により、セラミックスの製造プロセスの省エネ化には有機バインダー量の低減化もしくはゼロ化が極めて有効であり、その結果新規バインダー技術の開発を進めた。得られた知見は民間企業との共同研究を通じて既存生産ラインへ適用され、投入エネルギー量の大幅な削減に生かされている。 渡利 広司 
ほか
高感度分子吸着検出センサーの開発
[PDF:1.7MB]



− 高度な診断・診療のためのバイオ分子検出技術の開発 −
特定の物質の存在を高感度で検出するセンサーは、医療や創薬、環境などの分野でその高機能化が切望されている。我々は、診断、診療のための高性能なセンサーを目指し、基本技術として導波モードを用いた高感度分子センサーの開発を行った。本センサー開発において、我々は、ナノ穴形成技術の適用、光学シミュレーションと実験結果のフィードバック、検出板作製工程の見直しを経て、センサーの高感度化、安定化に成功した。本稿では、これらの研究シナリオ及びシナリオ実現に用いた要素技術、各要素技術の構成方法とそれにより達成したセンサー技術の特性に関して述べる。また、ブレイクスルーによって得られた飛躍的な検出性能の向上についても報告する。 藤巻 真 
ほか
PAN 系炭素繊維のイノベーションモデル
[PDF:1.4MB]



− 励振モデル;研究者の活動とマネージメントの相乗効果 −
公的機関の研究成果が社会に認知され、大きな影響を与え、産業変革につながっていった「PAN系炭素繊維」を取り上げ、この顕著なイノベーションの過程の中で、その核心にある旧大阪工業技術試験所および研究者の行動を中心に、①研究者の意識、②研究テーマ設定に係る研究者と研究管理者(マネージメント)の意識、③研究成果の発信と受け手の態勢、④研究成果活用のための人的及び情報ネットワーク、の観点から、その実相を検証した。さらに、一連のプロセスの構造化を図ることにより、イノベーションモデルとして『励振モデル』を提案する。 中村 治 
ほか
インタビュー インタビュー:米国の固体照明による省エネ政策と標準研究
[PDF:1.2MB]
米国立標準技術研究所(NIST)で測光標準の研究をされているヨシ大野さんが2008年12月に産総研を訪問された機会に、シンセシオロジー編集委員会の小野委員長と田中委員がインタビューしました。照明分野で今後大きな省エネルギー政策を実行していこうとする米国政府の意欲的な計画と、それに応えていく標準研究者の意気込みが伝わるお話が聞けました。またNISTでの大野さんの研究と産総研の本格研究との間に多くの共通点があることが印象的でした。 シンセシオロジー編集委員会
座談会 産総研イノベーションスクール生との座談会:シンセシスな研究について
[PDF:1.2MB]
産総研では、所内のポスドクをイノベーション人材として育成する「産総研イノベーションスクール」を2008年7月31日に開講しました。本座談会は、最終講義の一つとして2009年3月に実施したものです。スクールの受講生に、これまで刊行されたSynthesiologyの中から興味を持った論文を選んで読んでいただきました。自分の研究に関係あるテーマを選んだ人もいますし、全く違う分野のテーマを選んだ人もいますが、ユーザーの視点や、製造するためのコスト、安全性、環境負荷等々の広い観点から、自分の研究を見る手がかりになっています。ここでは、なぜその論文を選んだのか、論文のポイントは何か、普段読んでいる学術論文とどう違うのか、Synthesiologyから何を読み取ることができたか、価値ある点はどこか、今後、Synthesiologyに何を期待するかについて討論しました。 シンセシオロジー編集委員会
 
  記事 要旨 著者
2巻1号 研究論文 大規模データからの日常生活行動予測モデリング
[PDF:1MB]



− 実サービスを通じたベイジアンネットワークの学習と推論 −
ベイジアンネットワークの統計的学習、確率推論技術とユーザモデリング技術、大規模データ収集技術を要素技術として構成した生活行動予測モデルの構築技術について述べる。また因果的な構造をグラフィカルモデルであるベイジアンネットワークを状況や文脈も含んだ大規模データから構築するための必然から生まれた「実サービスを通じた調査・研究」の概念についても議論する。 本村 陽一
食品・環境中の有害成分分析のための有機標準物質の拡充
[PDF:1.4MB]



− 定量NMR法による効率的な計量トレーサビリティの実現 −
食品や環境中の有害成分の正確な分析には標準物質が不可欠であるが、特に有機化合物に関しては、多様かつ急増するニーズに標準物質の供給が追いつかない状況にある。そこで、分析技術を高度化することによって、1つの基準となる物質から多様な有機化合物の定量を可能とする方法を開発した。具体的には、水素原子を対象とする核磁気共鳴法に着目し、異なる化学シフトの水素原子の信号量を精密に比較できるように改良することで、水素原子の基準から多様な有機標準物質に対して実用的な不確かさでの校正を可能とした。この成果により、国家標準物質の種類を最小限にできる効率的な計量トレーサビリティの実現の見通しを得た。 井原 俊英 
ほか
産業技術の社会受容
[PDF:1.4MB]



− 既存の3モデルを統合した環境製品普及評価モデルの構築 −
技術開発を通じて社会の変革を実現するためには、技術の社会受容を評価・分析することも重要な課題になる。本研究では特に温暖化対策に資する環境製品を対象にして製品普及の評価モデルの構築を行った。長期の普及分析と各種普及促進策の効果分析をともに実現するために、これまで個別に議論されてきた3つのモデル、すなわちBassモデル、消費者選好モデル、学習曲線モデル、を統合した評価モデルを構築した。本稿では、研究の目的、既存モデル、構築した統合モデル、統合モデルと必要データ組み込んだツール、分析事例を示す。 松本 光崇 
ほか
グリッドが実現するE-サイエンス
[PDF:751KB]



− 地球観測グリッド(GEO Grid)の設計と実装 −
本稿では、新たな科学技術手法として注目されているE−サイエンスの実装例として、地球観測グリッド(Global Earth Observation Grid、 GEO Grid)の情報処理基盤の設計と実装について報告する。GEO Gridは、グリッド技術を用いて複数の組織の有するデータや計算を統合し、仮想的な研究環境を構築して提供する。幅広い応用分野のコミュニティにグリッドを用いたE-サイエンスの実例を提示するとともに、多数のソフトウエアコンポーネントを組み合わせて大規模システムを構築する手法を示す。 田中 良夫
ユビキタスエネルギーデバイス開発のための材料基礎解析
[PDF:1.3MB]



− リチウムイオン電池正極材料、燃料電池電極、金触媒での展開 −
ユビキタスエネルギーデバイスの鍵を握る機能材料開発では、材料基礎解析(電子顕微鏡観察、表面科学手法、第一原理計算)を有効に組み合わせることが重要である。本格研究における材料基礎解析の役割を議論し、材料開発グループとの緊密な連携研究を成功させるため様々な取り組みを行ってきた。リチウムイオン電池、燃料電池、触媒系のための独自の電顕観察技術や第一原理計算技術を構築し、材料開発に重要な貢献をするとともに、各種受賞など学術的にも高いレベルの成果が得られた。 香山 正憲 
ほか
蒸留プロセスのイノベーション
[PDF:811KB]



− 理想状態からの「デチューニング」によるプロセス強化 −
本稿では、プロセス強化を実現する1つの方法論として、理想状態からの 「デチューニング」という概念による省エネルギー化技術開発のアプローチ法を示し、内部熱交換型蒸留塔(HIDiC)を含む蒸留プロセスの開発を例として議論した。まず、典型的なエネルギー多消費プロセスである連続蒸留の特徴及びその理想状態である可逆蒸留操作の概念について説明した。次に、可逆蒸留を出発点として「デチューニング」により様々な省エネルギー型蒸留プロセスを導出することができることを示した。その1つであるHIDiCの特徴を他のプロセスと比較して議論し、NEDOプロジェクト等によるHIDiC技術開発の経緯と産総研の役割を論じた。 中岩 勝 
ほか
創薬の効率を飛躍的に高めた化合物スクリーニング計算
[PDF:792KB]



− 3次元構造の化合物データベースの開発 −
毎年、医薬品探索向けに数百万種類の化合物が、それらの構造式のカタログとともに販売される。我々はこれら構造式から3次元構造化合物データベースを作成するソフトウェアを開発し、2004年以降、化合物データベースの構築・配布を行ってきた。また、多数の蛋白質と、これら化合物をドッキングさせた結果もデータベース化して配布している。これらのデータベースをバーチャルスクリーニングに用いることで、我々は複数の標的蛋白質で高い確率で活性化合物を発見してきた。 福西 快文 
ほか
座談会 新ジャーナル座談会:システムデザイン工学と構成学
[PDF:422KB]
慶應義塾大学理工学部は1996年にシステムデザイン工学科を発足させ、10年以上にわたって工学の新しい教育を行い、卒業生の活躍が注目されています。シンセシオロジー(構成学)とシステムデザイン工学の共通点に興味を持って、編集委員会から小野委員長と赤松編集幹事が2008年11月10日横浜市の矢上キャンパスを訪問し、学科長の菱田公一教授と学科創設のキーパーソンの1人である谷下一夫教授に加わっていただき座談会を開きました。 シンセシオロジー編集委員会
座談会:シンセシオロジー 創刊一周年を迎えて
[PDF:816KB]
シンセシオロジーを創刊してから1年が経ちました。その間4号を発行し、全部で24編の研究論文を掲載しました。これまでとは異なる表現形式でオリジナルな研究論文を書く試みをしてきたわけですが、各界の読者、著者、査読者から大変ポジティブな評価をいただいています。創刊一周年を機に編集に携わっている関係者でこの1年を振り返り、シンセシオロジーの今後を展望しました。 シンセシオロジー編集委員会
 
  記事 要旨 著者
1巻4号 研究論文 ナノテクノロジーから大容量・高出力型リチウム電池の実用化へ
[PDF:1.3MB]



− 異分野融合と産学官垂直連携によるイノベーションの“短距離化” −
ナノテクノロジーとエネルギー技術の分野融合を図り、ナノ結晶電極をベースとした大容量・高出力型リチウム二次電池の研究開発を行った。また、基礎研究成果を迅速に実用化に結びつけるため垂直連携型の産学官プロジェクトを実施した。この産学官連携では大学、産総研、電池メーカーと自動車メーカーの川上から川下に至る4つの参画機関による垂直連携型のプロジェクトにより大学・産総研の革新的成果の最短距離での実用化を目指すことができた。電池メーカーの協力を得て、ナノ結晶活物質を用いた高出力(3kW/kg )・大容量型(30 Wh/kg)の高性能リチウム二次電池が試作できた。異分野融合と産学官垂直連携の組み合わせはイノベーションの“短距離化”を実践する有効な研究開発プロセスである。 本間 格
ホタルの光の基礎研究から製品化研究へ
[PDF:1.1MB]



− 生物発光タンパク質に基づくマルチ遺伝子発現検出キット −
ヒトを含めた生き物の生命現象は、細胞内の多くの分子とその複雑な化学反応のネットワークにより制御されており、近年、このネットワークを解析する技術の開発が望まれていた。我々は発光色の異なるホタル(甲虫)の発光タンパク質(ルシフェラーゼ)に着目し、細胞内の複数の遺伝子発現を同時に検出する技術を開発した。開発した技術は実用化研究を経て、企業による製品化に結びついた。現在、本研究成果は、第1種基礎研究などへの回帰を経て、新たな実用化研究へと進展中である。 近江谷 克裕 
ほか
粘土膜の開発
[PDF:793KB]



− 出会いの側面から見た本格研究シナリオ −
粘土を主成分にした膜の本格研究事例を紹介する。粘土は環境にやさしく、国内でも豊富に採れる資源である。これを膜化することにより耐熱ガスバリア材料として利用することができ、持続可能な産業に寄与できると期待される。粘土膜の発明から実用化にいたる過程の技術開発、広報、知的財産、技術移転の方法を述べるとともに、人あるいはグループの出会いが開発にどのように生かされてきたか分析する。さらに統合開発型イノベーションモデルによってコンソーシアムの有効性を議論する。 蛯名 武雄
土壌・地下水汚染のリスク評価技術と自主管理手法
[PDF:1.2MB]



− リスク管理の実践に向けた構成学的研究アプロ-チ −
土壌と地下水の汚染が人の健康に与えるリスクを評価するための手法を開発した。種々の要素研究を基盤として、評価システム全体を最適に構成した。このため、分野融合型の研究計画を立案して、要素研究の実施からリスク評価システムの開発までを行い、さらに産業や社会で利用可能な形にした。本報告では、研究開発において採用した要素技術の統合と構成のシナリオ、リスク評価の実践におけるスパイラル的な研究展開を中心に、目標達成に至るまでのプロセスについて論じる。 駒井 武 
ほか
光触媒技術の開発と応用展開
[PDF:929KB]



− 持続可能な環境浄化技術の産業化 −
光触媒は光の照射によって難分解性の有害有機化学物質を水や二酸化炭素などに分解・無害化し環境を浄化することができる。実際の用途や経済性、法規制などを考慮しながら高機能光触媒の開発を行い、それを用いて環境分野へのさまざまな応用展開を行った。その結果、現在さまざまな製品が市場に出ている。 垰田 博史
ロータリエンコーダに角度標準は必要か[PDF:1.9MB]


− 角度偏差の「見える化」を可能にしたロータリエンコーダの開発 −
ロータリエンコーダは360度の分度器のように円周上に目盛スケールが刻まれ、それを検出することにより角度位置情報を出力する装置である。しかし、ロータリエンコーダの目盛スケールのずれや、回転軸の偏心の影響により理想的な角度位置から偏差が存在するため、ユーザーはエンコーダから得られる角度情報の信頼性をどのように確保して良いのか困っていた。この問題を解決するべく、さまざまな角度偏差の要因を、自分自身で検出し角度校正値として出力することができる自己校正機能付きロータリエンコーダ(SelfA: Self-calibratable Angle device)を開発した。このエンコーダはこれまでブラックボックス化していた角度偏差要因を検出、分離し、そしてそれら要因を定量的に評価できる「見える化」を実現した。 渡部 司
論説 構成的研究の方法論と学問体系
[PDF:884KB]



− シンセシオロジーとはどういう学問か? −
分析的科学に関してはデカルトの方法序説、クーンのパラダイム論、ポパーの反証可能性の議論など様々な定式化がなされているが、Synthesiology(構成的な学問体系)に関してはいまだにそういったものが存在しない。ほぼ唯一の例外は吉川による一連の取り組みであろう。ここでは吉川が第2種基礎研究と呼んでいるものを中心に、それは構成的な研究のことであるという主張をし、その学問体系としての方法論の定式化を試みる。 中島 秀之
 
  記事 要旨 著者
1巻3号 研究論文 実用化をめざしての再生医療技術開発
[PDF:1.1MB]



− 安全を担保したヒト細胞操作プロセス構築と臨床応用 −
近年、細胞を培養増殖・加工して種々の疾患治療に用いるという再生医療技術が注目されている。この技術を臨床応用するためには、これら培養プロセスの安全性のみならず用いる細胞の有用性の担保も必要である。これらプロセス構築にかかわる問題点を整理して解決し、実際の治療応用への展開に成功した。 大串 始
輸送用クリーン燃料の製造触媒の研究と開発
[PDF:1.5MB]



− 触媒の基盤研究から製品化に向けた触媒共同開発へ −
輸送用燃料のクリーン化、特に硫黄分の大幅低減は自動車排出ガスの低減に有効であり、また、新規高性能排出ガス処理装置の開発支援に繋がる。我々は、軽油のサルファーフリー化(硫黄分<10ppm)用脱硫触媒の開発を行い、触媒調製法の切り口から新規展開を図り、次いで触媒メーカーとの共同研究を通して新規脱硫触媒の製品化に成功した。 葭村 雄二 
ほか
実用化へ向けた有機ナノチューブの大量合成方法開発
[PDF:1.2MB]



− 分子設計・合成技術と安全性評価の統合により市場競争力のある材料へ −
有機ナノチューブは両親媒性分子が溶媒中で自己集合化して形成する中空繊維状の物質であり、その内部にナノ微粒子やタンパク質等を包接することができることから、幅広い分野への応用が期待されている。有機ナノチューブを実用化するために、大量合成、用途、価格、安全性等の種々の条件を満たす戦略的なシナリオを立案し、分子設計・合成技術と自己集合化技術の統合により、最適な有機ナノチューブ合成用分子を設計・合成するとともに、有機ナノチューブの大量合成法を開発した。 浅川 真澄 
ほか
フレキシブルプリンタブルデバイス製造技術の開発
[PDF:1.4MB]



− 「どこでもデバイス、だれでもデバイス」の実現に向けて −
IT技術の裾野拡大を目指し、情報端末機器のユーザビリティー向上をもたらすべく、使用者の個性が活かせる端末機器の製造技術として、フレキシブルプリンタブルデバイス製造技術の開発に取り組んできた。ディスプレイ等の情報端末を含む新たな情報機器関連分野を切り拓く技術となるだけに、その技術の展開、普及のための開発シナリオとして、社会要求仕様の分析、個別開発要素技術の位置づけの明示、材料・製造・デバイスの各要素技術のセット化による全体像の提示、関連技術の連続的開発などを描き、それを実践していった。 鎌田 俊英 
ほか
水に代わる密度標準の確立
[PDF:1.2MB]



− シリコン単結晶を頂点とする密度のトレーサビリティ体系 −
物質の密度、あるいは、体積や内容積、濃度といった物理量を計測するための基準として従来は水が広く用いられていた。密度だけではなく比熱や表面張力など他の物性の基準としても水が用いられることが多い。しかし、水の密度はその同位体組成に依存して変化したり、溶解ガスの影響を受けるため、1970年代からはシリコン単結晶など密度の安定な固体材料を基準として密度を計測することが検討されるようになり、特に最近では計測のトレーサビリティを確保し、製品の信頼性を向上させるために、より高精度な密度計測技術が産業界からも求められるようになってきた。このような背景から産総研では密度標準物質としてシリコン単結晶を用い、従来よりも高精度な密度標準体系を整備した。密度の基準を液体から固体にシフトすることは、単なる精度向上にとどまらず、薄膜のための新たな材料評価技術や次世代の計量標準技術の開発を促すものである。 藤井 賢一
製造の全行程を考慮した資源及びエネルギー利用の合理化指針
[PDF:928KB]



− アルミニウム鋳造工程のエクセルギー解析 −
製造効率を高め、環境負荷を少なくするには、1つの過程を起点として全体に広がる資源やエネルギーの消費と排出の過程を知ることが必要である。本稿では、まず、アルミニウム溶湯中で使用されるヒーターチューブを鉄とセラミックスで作製した場合のエクセルギー解析とその比較を行い、次にアルミニウム鋳造の全工程についてのエクセルギー解析を行った。これらの結果から資源とエネルギーを有効に利用するための鋳造プロセスにおける合理化指針を得た。 北 英紀 
ほか
論説 シンセシオロジー発刊について
[PDF:529KB]


−  イリノイ大学日本人研究者らとの討論を通じて −
本稿では、ジャーナルSynthesiologyの創刊とその背景にある産総研の理念について、イリノイ大学計算機分野の日本人研究者らと討論した様子を紹介する。また、議論を通じて得られた質問や意見をもとに、ジャーナルを取り巻く問題や、今後検討すべき課題を明らかにする。 大崎 人士
ほか
総説 「シンセシオロジー」創刊記念シンポジウム ― 個の「知」から全の「知」へ
[PDF:1.3KB]



−  そのシナリオの共有と蓄積について −
2008年5月13日、秋葉原コンベンションホール(東京都千代田区)において、「シンセシオロジー―構成学」創刊記念シンポジウム“個の「知」から全の「知」へ―そのシナリオの共有と蓄積について”が開催され、産業界を中心に330名を超える方々にご参加いただきました。シンポジウムでは、小野 晃 シンセシオロジー編集委員長の挨拶の後、野間口 有 三菱電機株式会社取締役会長から「基礎研究、その今日的意義」と題し、また中島 秀之 公立はこだて未来大学学長から「構成的方法論と学問体系」と題してご講演いただきました。引き続き、経済ジャーナリスト柏木 慶永氏をモデレーターに、広瀬 研吉 科学技術振興機構理事、木村 英紀 横断型基幹科学技術研究団体連合会長、上田 完次 東京大学教授、前田 拓巳 株式会社島津製作所技術推進部長、持丸 正明 産総研デジタルヒューマン研究センター副研究センター長、赤松 幹之 シンセシオロジー編集委員会編集幹事をパネリストに、「技術の統合と共有の方法論について」をテーマとしたパネルディスカッションが行われました。最後に、吉川 弘之 産総研理事長が総括・閉会挨拶をしました。当日の各挨拶、ご発言、コメント等の要約(本誌編集委員会作成)を以下に記します。 シンセシオロジー編集委員会
 
  記事 要旨 著者
1巻2号 研究論文 シームレスな20万分の1日本地質図の作成とウェブ配信
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− 地質図情報の利便性向上と有用性拡大を目指して −
地域ごとに異なる時代に作成された地質図を、統一した最新の凡例のもとに再構成し、同時に区画の境界を連続化して日本全体をカバーするシームレスなディジタル地質図を作成した。その研究過程を中心に、地質学の基礎研究から社会への情報発信技術に至る研究シナリオを構想した。また第1種基礎研究の成果としての地質図を、誰でも容易に利用できる情報に加工し、インターネットを通じて相互運用性の高い情報として国内外に発信するまでの第2種基礎研究としての研究方法を創出し、地質図研究における本格研究への道筋を提案した。 脇田 浩二 
ほか
熱電発電を利用した小型コジェネシステムの開発
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− 新たな酸化物材料が拓く高温廃熱回収システム −
エネルギー、環境問題は日々深刻になり、生活スタイルの改善と共に、産業分野でのエネルギー利用率向上の必要性が増している。廃熱から発電できる熱電変換技術の実用化のために高温耐久性と高い安全性を有する酸化物熱電材料を新たに開発し、773~1173 Kで機能する小型コジェネシステムのプロトタイプを民間企業との連携により開発した。 舟橋 良次 
ほか
だれでも構築運営できるコラボレーションシステムの実現
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− qwikWebを用いたコミュニケーション・パターンの実践 −
だれでも構築運営できるコラボレーションシステムの実現のために、ユーザがグループ活動形態に適したシステムを容易に構築することを可能とするコミュニケーション・パターンを設計思想としたqwikWebを提案する。また、本システムをデザイン、実装、運用改良し運用データの分析を行うことで本システムの妥当性と有効性を示す。 江渡 浩一郎 
ほか
サービス工学序説
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− サービスを理論的に扱うための枠組み −
サービスを理論的かつ体系的に論じるための枠組みを提起する。その枠組みでは、一人の人(ドナー)が他の一人の人(レセプター)にするサービスを原始サービスとし、ドナーから発現したサービスをレセプターが受容することによって生じる結果をサービス効果とする。一般のサービスはそれが媒体によって増幅されたものであるが、経済の仕組みと関係なく存在する原始サービスが道具や様々な社会の仕組みによって増幅され、サービス産業を作り出す。 吉川 弘之
タンパク質のネットワーク解析から創薬へ
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−  超高感度質量分析システムをどのように実現したか −
生体を構成するそれぞれの細胞の中には、10万種類以上の様々なタンパク質が機能し生命現象をつかさどっている。これらのタンパク質はグループや組織を構成し、ネットワークとして機能している。毎分100ナノリッターという超低流速の液体クロマトグラフィー技術を独自に開発することにより、大規模なタンパク質ネットワーク解析を高感度で再現性高く、かつ高効率に行うことを可能にした。解析から得られた大量の結果は、生命現象の解明にとどまらず、疾患の発症メカニズムを分子レベルで理解することに貢献し、新たな診断・治療法の開発や、重要な創薬のターゲット発見へと直接的に連なる本格研究へと発展した。 夏目 徹 
ほか
エアロゾルデポジション法
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− 高機能部品の低コスト、省エネ製造への取り組み −
エアロゾルデポジション法(Aerosol Deposition method: AD法)は、最近開発された粉末材料の噴射加工技術の1つであり、セラミックス微粒子を高温で焼結することなく、常温で固化・緻密化できる革新的なコーティング手法である。これにより、機能部品の製造プロセスにおいて、高機能化と大幅なエネルギー消費の低減、工程数の削減、ひいてはコストダウンをもたらすと期待される。このようなAD法の持つ特徴が、技術競争力と環境負荷低減という観点から、どのように位置づけられ、また、どのような可能性を持っているかを原理や具体的検討事例とともに、本格研究の視点から検証する。 明渡 純 
ほか
インタビュー シンセシオロジーへの期待:MITレスー教授へのインタビュー
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− 教授へのインタビュー −
MITのRichard K. Lester教授は、イノベーションの実践において産業界や大学などの各セクターが果たす役割について豊富で深い調査に基づく独自の考えをお持ちです。その際、明確な問題を設定しその解決を図る従来からの分析的アプローチに加えて、会話によって方向性を探っていく解釈的アプローチが大切であることを主張しておられます。今回は、第2種基礎研究に関する論文を中心として新たに創刊した学術誌『シンセシオロジー』についてインタビューし、色々のご意見を伺いました。 シンセシオロジー編集委員会 ほか
トヨタ自動車グループにおける基礎研究から製品化への流れについて
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− 技術統括部 梅山部長へのインタビュー −
トヨタ自動車(株)は世界最大級の自動車メーカーであり、日本で最も成功している製造業であるといっても過言ではないであろう。技術的には世界に先駆けてハイブリッド自動車を実用化するなど、社会のあるべき姿をにらみながら、従来の自動車という概念にとらわれずに新しい技術の社会への導入を行っている企業である。自動車に関係しない技術はないといわれるほど自動車は様々な技術の集合体であり、豊田中央研究所を含めたトヨタグループ自動車全体の技術の開発を統括しているのが同社の技術統括部である。その技術統括部の梅山部長にインタビューを行い、トヨタ自動車における基礎研究から製品化までの流れや、『シンセシオロジー』に対する期待などの話をうかがった。 シンセシオロジー編集委員会 ほか
座談会 新ジャーナル査読者座談会:新しい形式の論文を査読して
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第1巻2号の発行にあたって、1号および2号の論文の査読者が集まって座談会を開きました。従来にない新しい形の論文を査読するということは、査読者にとってもなかなか難しい作業でした。この座談会では新ジャーナルを査読した印象から、査読者の新たな役割、論文のオリジナリティ、論文の執筆要件の合理性など、多岐にわたる課題について忌憚ない意見を述べていただきました。 シンセシオロジー編集委員会
 
  記事 要旨 著者
1巻1号 発刊に寄せて 第2 種基礎研究の原著論文誌
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  吉川 弘之
研究論文 不凍蛋白質の大量精製と新たな応用開拓
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−  実用化を指向する蛋白質研究 −
不凍蛋白質は北極や南極に生息する動植物に固有の生体物質と考えられてきた。我々は日本国内で捕獲される多くの食用魚類が不凍蛋白質を有することを発見し、それらの筋肉から実用化に必要な量の不凍蛋白質を精製する技術を開発した。筋肉から精製された不凍蛋白質は複数の異性体の混合物であり、遺伝子工学や化学合成から得られる単一の異性体よりも優れた機能を発揮した。現在、不凍蛋白質を用いた様々な実用化技術が検討されている。 津田 栄 
ほか
高齢者に配慮したアクセシブルデザイン技術の開発と標準化
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− 聴覚特性と生活環境音の計測に基づく製品設計手法の提供 −
近年の少子高齢化に伴い、消費生活製品等の設計において、高齢者を含むより多くの人々のためのデザイン(アクセシブルデザイン)が求められるようになってきた。筆者らは、高齢者の聴覚および視覚機能に関わる日本工業規格(JIS)の作成をとおして、アクセシブルデザイン技術の開発とその普及に努めてきた。本論文では、報知音の音量設定方法に関するJIS S 0014を例にとり、アクセシブルデザイン技術の標準化に至るまでの研究過程を本格研究の観点から論じる。 倉片憲治 
ほか
高機能光学素子の低コスト製造へのチャレンジ
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− ガラスインプリント法によるサブ波長周期構造の実現 −
光の波長以下の周期構造からなる「サブ波長光学素子」において、製造コスト等の実用化を阻害してきた要因を、日本が得意とするガラスモールド法と、新たな成型プロセスとして知られるインプリント法との融合によって解決することを試みた。材料メーカー、家電メーカー、大学、産総研が役割分担を明確にして垂直的に連携することにより、波長板機能、反射防止機能などをガラス表面に形成することに成功した。 西井 準治
異なる種類のリスク比較を可能にする評価戦略
[PDF:1.6MB]



− 質調整生存年数を用いたトルエンの詳細リスク評価 −
化学物質のヒト健康に対するリスク評価に関して、社会のニーズを、1)基準値や規制値の導出、2)リスクの懸念のないものを選り分けるスクリーニング評価、3)異なる種類の化学物質同士のリスクの比較や排出削減対策の費用対効果の評価、の3つに区別したうえで、1)と2)に応える形で設計された現行のリスク評価手法はそのままの形では、新たなニーズである3)を満たすことができないこと示し、トルエンを例に、3)を満たすための新しいリスク評価手法を提案した。質調整生存年数を健康リスクの指標とすることで、異なる種類の化学物質同士、さらには事故や疾病等の他のリスクとも比較することが可能となる。 岸本 充生
個別適合メガネフレームの設計・販売支援技術
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− あなただけの製品をだれにでも提供できるビジネス創成を目指して −
あなただけに適合する製品を、だれにでも提供できるようなユニバーサルデザインビジネスの創成をグランドチャレンジとして、メガネフレームを具体例に、効率的にサイズ分類された製品の中から、ユーザ個人の顔のサイズに適合し、かつ、個人の感性に適合するフレームを選び出すシステムの研究について述べる。顔形状計測、サイズ適合、感性適合の要素技術は、すべて頭顔部相同モデルデータベースを基盤として統合した。このシステムが実店舗で運用されれば、それによりデータベースが拡充し、その統計データが製品設計・販売に再利用されるという持続的な循環が産み出される。 持丸 正明 
ほか
耳式赤外線体温計の表示温度の信頼性向上
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− 国家標準にトレーサブルな新しい標準体系の設計と導入 −
1990年代後半赤外線を用いた耳式体温計が開発され、国内において急速に普及するとともに、表示される温度の信頼性が一般消費者から問われるようになった。産総研ではこの新型体温計の校正・試験の基準となる国家計量標準を新たに開発するとともに、我が国の産業界・消費者のニーズに適合する標準供給体系を設計・整備し、その技術的検証を行って表示温度の信頼性を向上させた。また、ドイツ、イギリスとの間で国家計量標準の比較を行い、それらの同等性を実験的に検証して信頼性を国際的に確保した。 石井 順太郎
論説 科学と社会、あるいは研究機関と学術雑誌:歴史的回顧
[PDF:1.6MB]
  赤松 幹之 
ほか
座談会 創刊号著者座談会:新しい形式の論文を執筆して
[PDF:1.4MB]
第1巻1号の研究論文の査読が一巡終了した11月初めに、著者と編集委員とで座談会を開きました。第2種基礎研究の成果とプロセスを研究論文として書き下すことは誰もやったことがない試みでしたので、著者の側には大きな苦労をかけたと思います。また査読者自身このような論文を書いたことがないのですから、著者とのやりとりにも試行錯誤が多かったと思います。座談会では、それぞれの執筆の跡を著者に振り返ってもらいました。 シンセシオロジー編集委員会

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