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論文のポイント

Synthesiology 第9巻第3号(2016.10)論文のポイント

 本誌は、成果を社会に活かそうとする研究活動の目標と社会的価値、具体的なシナリオや研究手順、また要素技術の構成・統合のプロセスを記述した論文誌です。本号論文の価値が一目で判るように、編集委員会が作成したシンセシオロジー論文としてのポイントを示します。

シンセシオロジー編集委員会
 

ナノカーボン電極による人間親和型高分子アクチュエータの開発[PDF:1.7MB]

-人工筋肉の実現を目指して- 安積 欣志

 安積(産総研)はカーボンナノチューブを電極材料に用いてイオン導電性高分子を基盤材料とするソフトアクチュエータを実現した。加工性に優れ、薄膜状で低電圧駆動により大変形する特徴を生かせる用途に着目し設定した要素技術と研究シナリオが興味深く紹介されている。企業等との共同研究により推進された薄くて軽いフィルム状点字ディスプレイのデモ機試作や評価実験は成果の社会的価値を高めた好例である。
 

プラズマを用いたグラフェンの高品質高速大面積CVD合成[PDF:2.5MB]

-高スループットプロセスを目指して- 長谷川 雅考ほか

 長谷川(産総研)らは、透明導電フィルム利用を目指して、大面積で高品質かつ高スループットのグラフェン製造技術としてプラズマを援用する化学気相蒸着法(CVD)合成技術の優位性を実証した。熱CVD法との相違点や競合技術との対比を含めた議論により、著者らが目指した大面積グラフェン透明導電フィルム開発の成功に至った研究開発シナリオが理解できる。特に、各要素技術の解決の根拠となった詳細なデータ解析には圧倒される。
 

放射性セシウム汚染灰除染技術[PDF:2.3MB]

-ナノ粒子の吸着材としての活用と実用化アプローチ- 川本 徹ほか

 東京電力福島第一原子力発電所から漏えいした放射性物質の除染という喫緊の行政ニーズに対して、川本(産総研)らは、プルシアンブルーナノ粒子材料を利用して極めて短期間に放射性セシウム汚染灰の除染技術を開発した。全体課題の俯瞰から独自の研究戦略、異分野研究者との交流、さらに企業、政府、自治体、地元住民等のステークホルダーとの連携など、非常に特異的な環境と条件で達成した関連技術と全体シナリオが整理され、構成学論文として注目に値する。
 

高性能吸着剤ハスクレイ®の開発[PDF:2.4MB]

-粘土系ナノ粒子による省エネシステム用吸着剤の開発展開- 鈴木 正哉ほか

 鈴木(産総研)らは天然の粘土鉱物であるアロフェンやイモゴライトの構造や機能に関する基礎研究に端を発し、デシカント空調用吸着材等への応用を目指して設定した明確なシナリオにより合成粘土鉱物ハスクレイ®を開発した。安価な原料、合成コスト、大量生産、吸着性能の観点から天然物には限界を感じ、全てを満足できる合成物を、企業との共同研究を通じて基礎と応用を行き来しながら推進した経緯は興味深い。
 

スーパーグロース法[PDF:2.4MB]

-単層カーボンナノチューブの工業的量産技術開発- 畠 賢治

 畠(産総研)は著者自らが開発した単層カーボンナノチューブのラボスケール革新的合成法を全く異なる要素技術から構成される工業的量産化技術にまで展開、実現した。著者や企業の情熱がその実現に大きく寄与した世界有数のナノテクノロジーと言える。本論文は著者が考える研究指針の下、必要不可欠と判断した多種多様な要素技術とその高度化、さらには企業連携による統合化のシナリオが簡潔に整理されており一読の価値がある。
 

Synthesiology 第9巻第2号(2016.5)論文のポイント

 本誌は、成果を社会に活かそうとする研究活動の目標と社会的価値、具体的なシナリオや研究手順、また要素技術の構成・統合のプロセスを記述した論文誌です。本号論文の価値が一目で判るように、編集委員会が作成したシンセシオロジー論文としてのポイントを示します。

シンセシオロジー編集委員会
 

地球化学標準物質の開発と利用[PDF:1.4MB]

-地質試料元素分析の信頼性向上のために- 岡井 貴司

 50年にわたって50種類以上の信頼性の高い地球化学標準物質を発行してきた経緯と研究シナリオがまとめられている。研究開発および標準物質の利用ニーズの変化、さらに分析機器の進展に伴う標準物質の変遷と世界の動向を見据えて、常にシナリオの見直しと新たな研究計画の立案を行ってきた。地質調査所および産総研地質調査総合センターの強みを活かし、標準物質の開発および研究の両面において世界をリードしてきた歴史を読み取ることができる。
 

都市域の3次元地質地盤図[PDF:1.3MB]

-都市平野部の新たな地質情報整備- 中澤 努ほか

 地震防災・減災のため、地質情報をハザードマップ作成や都市計画に反映させることを目的として、3次元地質地盤図に関する研究成果をまとめたものである。人口が密集する都市域の3次元地質地盤図の提示とモデリングの開発は精緻なレベルに達しており、今後の進展が大いに見込まれる。さらに自治体が保有するデータも含めて複数の要素技術を統合し、社会に有用で使いやすい枠組みの構築を目指しており、社会への貢献を一段と進める挑戦的なテーマである。
 

極小微動アレイによる浅部構造探査システム[PDF:1.5MB]

-大量データの蓄積と利活用に向けて- 長 郁夫ほか

 地震による強震動や液状化の被害が想定される浅部地盤を対象として、地下S波速度構造を精度よく探査できる極小微動アレイの技術開発を紹介している。著者の一人が長年にわたって研究開発し実用化した微動アレイ探査法をコア技術として、理論的な検討と新規技術によって相互補完と強化を行い、かつ地盤の揺れやすさを知るという社会ニーズへの的確な対応を統合した研究開発の事例であり、一般ユーザへの波及効果が大きいことは注目に値する。
 

高温高圧岩石変形実験技術の開発[PDF:1.2MB]

-千年スケールで進行する地質現象の加速化と検証- 増田 幸治

 地下深部で起こった過去の地質現象を実験室において再現し、千年スケールで進行する岩石の変形・破壊現象を加速化して、検証する実験技術と手法を開発することにより、精度の高い地震発生予測モデルの構築という社会ニーズに応えようとしている。実験設備は、一般の圧力試験機に高圧・高温技術を独自に導入、統合して開発したものである。基礎研究としての位置づけと目標を明確にして研究シナリオを適切に立てることが研究の進展につながった好例である。
 

Synthesiology 第9巻第1号(2016.2)論文のポイント

 本誌は、成果を社会に活かそうとする研究活動の目標と社会的価値、具体的なシナリオや研究手順、また要素技術の構成・統合のプロセスを記述した論文誌です。本号論文の価値が一目で判るように、編集委員会が作成したシンセシオロジー論文としてのポイントを示します。

シンセシオロジー編集委員会
 

3次元IC積層実装技術の実用化への取り組み[PDF:1.7MB]

-基盤技術から実用技術へどのようにしてステップアップするのか?-

 集積回路の高集積化が素子の微細化により進んできた中で、3 次元化はその技術的困難さもあり、研究開発の主題とは言えなかった。しかし、微細化限界が認識されるようになった現在、改めて3 次元積層技術が注目されている。青柳らは、3 次元IC チップ積層技術開発のためのシナリオを描き、そのシナリオに沿って目標を実現する要素技術(TSV、円錐バンプ)とその統合設計技術等の成果を述べている。限られた研究リソースを効果的に利用する戦略の具体的取り組みについて、課題の優先順位と研究リソースの確保状況について、時系列で分かるように記されている。
 

レアメタル資源の安定供給を目指して[PDF:1.1MB]

-レアアース資源確保のための取り組みと課題-

 新興工業国の経済発展による金属資源価格の高騰や中国のレアアース輸出制限による危機を受け、レアメタル資源の安定供給を国として推進するための地質情報整備について、高木ら鉱物資源研究グループは、有望鉱床の確認、選鉱試験の拠点整備、データベースの構築、海外地質調査機関との協力関係の構築など期待に応えてきた。資源開発へつながるための産総研の研究開発、資源国との連携、開発期間との共同研究体制等、実例を交えて記載されており、レアアース資源研究の体系を俯瞰する論文としてまとめられている。
 

構成型研究におけるシナリオ:その役割と表現[PDF:975KB]

-シンセシオロジー誌の掲載論文による検証の試み-

 基礎研究の成果を出発点とするイノベーションは現代における研究開発の主流であり、それは社会の諸問題を解決して持続的繁栄をもたらすものとされる。そのための研究資金が投入され、また研究者の努力が払われて多くの成果が得られているが、その中で一つの問題点が浮上してきた。それは基礎研究から社会的問題解決に有効な成果に至る過程が不明という問題である。その結果その過程に従事する研究者は、あらゆる可能性を探りながら、ある時は直観で、ある時は網羅的思考で、いずれも試行錯誤によって設定した解へと近づいてゆく方法で研究する。これはまだ明示されていないが独自の研究方法論であって第二種基礎研究と呼び、その成果が本誌シンセシオロジーの論文である。本誌の目的はその成果の発表と同時に、この研究方法を明らかにすることを目的としている。
 本論文は発刊後8 年を経て100 編を超す論文を対象に多様な研究の背後に存在しながらその姿をまだ見せていない共通の方法を抽出することを研究した論文である。構成的研究である第二種基礎研究を特徴づけるものとして各論文に現れ、研究の中核をなすものと考えられるシナリオに注目し、それが持つ論理的特徴が共通であることを示し、構成型研究の特徴を構造的に示している。しかもシナリオは言語表現、図解によって明示的に表現可能であることを示して、研究の論理を抽出する研究が実証可能性を持ちうることを明らかにしたと言うことができ、貴重な論文である。本論文は今後の第二種基礎研究にとって有益であると同時に、方法論抽出研究の方向にも有効な示唆を与えている。
 

太陽電池モジュールの信頼性向上と試験法開発に関するコンソーシアム研究[PDF:928KB]

-「高信頼性太陽電池モジュール開発・評価コンソーシアム」の運営-

 太陽電池モジュールについてのコンソーシアムを設立、運営するに際して、当時の状況判断として、学界・業界においても信頼性評価技術が手薄な事を考慮して、太陽電池モジュールの試作ラインを整備し、科学的知見に基づく信頼性の評価技術を確立することを目指した。多数の企業が共通基盤技術の開発として協調できる場となるため、コンソーシアムでの課題設定や運営方針の決定の際に、参加企業と十分議論し、理解を得るプロセスをまとめた具体的論説である。コアとなる信頼性評価技術に関しては、ノウハウや経験則に替わる科学的根拠に裏付けられた研究により加速試験方法を確立した点などは高く評価される。この成功事例は、他の分野への波及効果が高いと言える。
 

Synthesiology 第8巻第4号(2015.11)論文のポイント

 本誌は、成果を社会に活かそうとする研究活動の目標と社会的価値、具体的なシナリオや研究手順、また要素技術の構成・統合のプロセスを記述した論文誌です。本号論文の価値が一目で判るように、編集委員会が作成したシンセシオロジー論文としてのポイントを示します。

シンセシオロジー編集委員会
 

プレス加工の課題解決における中小企業と産総研との連携の成果[PDF:1.2MB]

-現場へ与える、ものづくり思想の影響-

 プレス加工による微細穴開けの過程を、産総研の技術を用いて詳細に解析することにより、中小企業である小松精機製作所は、この工程の大幅な改良に成功した。小松(小松精機工作所)と中野(産総研)は、この事例をそれぞれの立場から紹介し、中堅中小企業と研究機関の共同研究を成功に導く要因を議論する。
 

内燃機関の熱効率向上に向けた先進着火技術[PDF:1.9MB]

-レーザー着火によるガスエンジンの高度化実証研究-

 天然ガスを燃料とするガスエンジンは、コジェネレーション用に有望と期待されているが、高効率化のために高圧縮比で希薄燃焼を図ると、スパークプラグによる着火が困難になる。高橋ら(産総研)は、メタンを用いたガスエンジンで、パルスレーザ着火により、燃焼条件を拡大し、熱効率を向上させられることを示す。
 

糖鎖微量迅速解析システムの開発[PDF:1.4MB]

-誰でも簡単に糖鎖を調べることができる時代へ-

 糖鎖は生体内で様々な生体機能を担う分子で、臨床診断薬などへの利用が進んでいるが、構造解析が難しいことが課題となっている。亀山ら(産総研、三井情報、島津製作所)は、それぞれの保有技術を活かし、糖鎖の質量分析スペクトルからスペクトルデータベースを用いて構造を推定する技術を開発した。知財戦略に基づいて製品化した解析システムは、多くの機関で利用されるに至っている。
 

ガスセンサを用いたヘルスケアセンシング技術の開発[PDF:893KB]

-呼気分析用医療機器に向けて-

 申ら(産総研)は、呼気の中の口臭成分や水素、揮発性有機化合物を、簡略化したセンサで低コストに検出し分析する技術を開発した。口臭検知器の商品化に成功したことに続いて、医療機関との連携やボランティア被験者の協力も得ながら、他の検知器の製品化を進めている。
 

Synthesiology 第8巻第3号(2015.8)論文のポイント

 本誌は、成果を社会に活かそうとする研究活動の目標と社会的価値、具体的なシナリオや研究手順、また要素技術の構成・統合のプロセスを記述した論文誌です。本号論文の価値が一目で判るように、編集委員会が作成したシンセシオロジー論文としてのポイントを示します。

シンセシオロジー編集委員会
 

大気圧電子顕微鏡ASEMによる水中観察法の開発[PDF:1.6MB]

-半導体の超薄膜技術とバイオ顕微鏡の融合研究-

 電子顕微鏡は広範囲な科学技術分野で使用されているが、基本的には薄片の試料を真空下で観察するために、生体細胞等のin-situ観察には利用が困難であった。小椋(産総研)らは、大気圧環境下で水中の生体細胞の観察が可能な走査電子顕微鏡及び光学顕微鏡との相関観察を可能とする設備の開発シナリオを策定し、試料ディッシュ窓に使用するSiN薄膜の製造に卓越した技術を有する研究機関及び電顕メーカーと連携することにより、開発に成功した。当該研究は生体細胞の電顕観察を目標として進められたが、研究成果として電顕観察試料への制約条件が大幅に緩和されるようになり、癌や感染症の診断機器としての臨床応用、また、溶液中の電気化学反応や温度可変条件下での反応観察などへの適用も期待される。
 

交流電圧標準を導く薄膜型サーマルコンバータの開発[PDF:4.1MB]

-交流電圧標準のトレーサビリティ体系構築の取り組み-

 国家標準レベルの精密な交流電圧標準は、交直変換器(サーマルコンバータ)を用い、直流電圧標準と交流電圧を比較測定して導かれている。交流電圧の標準供給については、産業界から電圧と周波数の範囲の拡大が要望されており、また、校正事業者においては、操作性、耐久性の問題などからサーマルコンバータとは別方式のやや低い精度の校正器が使用されるなど、標準供給体系は十分ではなかった。そこで、藤木(産総研)らは、国家標準器と校正器のいずれにも適用しうるサーマルコンバータの開発を目標として、国家標準器に求められる不確かさの向上、標準の範囲の拡大、及び校正器に必要な操作性、耐久性、耐環境性などを満たすための課題を検討して要素技術開発から製品化までのシナリオを設定し、所期の目標を満足する開発に成功した。
 

製造工程と製品のグリーン化を実現するためのレーザーを用いた材料プロセッシング技術の開発[PDF:1.4MB]

-光を用いたものづくり手法の確立と社会への貢献を目指して-

 レーザーを用いた材料プロセッシング技術を体系的に概説し、製造工程と製品のグリーン化を実現するためのシナリオならびに要素技術の選択と構成が考察された。このシナリオに沿って新納(産総研)が開発した炭素繊維強化樹脂の切断、フッ素樹脂の表面改質、石英ガラスなどの透明硬脆材料の微細加工などの新規技術が例示的に紹介されている。いずれも、通常のレーザー加工法や他の競合加工技術では高速・高品位な加工が困難な例である。これら技術の実用・普及拡大に向けては、プロトタイプ機の全体製造プロセスへの適合化、当該技術の適用による高付加価値化の追求がポイントになろう。
 

高度な専門知識不要のITシステム開発ツール:MZ Platform[PDF:1.2MB]

-製造業におけるエンドユーザー開発の実現-

 澤田(産総研)らは、高度な専門知識を持たずとも、製造業の技術者が自らITシステムを構築・運用できるツール「MZ Platform」を開発した。広く使われるためにコンポーネント化したシステムとしたが、コンポーネントは実用システム開発を通じて構築した。そして、これを普及させるためのセミナーの開催、コンソーシアムの設立、TLO契約を通じたソフトウェアベンダーへの技術移転や公設研究所による技術指導も含めたサポート体制を充実させた。当該ツールの導入成功事例として、プラスチック射出成型企業における作業実績収集システム、金属表面処理業における受注・製造・在庫管理システム、金型製造業における受注・外注・進捗管理システムが紹介され、成功要因が考察されている。
 

Synthesiology 第8巻第2号(2015.5)論文のポイント

 本誌は、成果を社会に活かそうとする研究活動の目標と社会的価値、具体的なシナリオや研究手順、また要素技術の構成・統合のプロセスを記述した論文誌です。本号論文の価値が一目で判るように、編集委員会が作成したシンセシオロジー論文としてのポイントを示します。

シンセシオロジー編集委員会
 

水素エネルギー社会実現に向けた高圧水素ガス中材料試験装置の開発と材料評価方法の国際比較[PDF:938KB]

-国際標準化への貢献を目指した取り組み-

 燃料電池車や水素ステーションの普及には、高圧水素容器等の安全性の確保が必須である。飯島(産総研)らは、高圧水素ガス中で使われる金属材料の信頼性を保証する材料評価手法を米国の研究所と協力して開発した。また、開発に成功した評価手法の国際標準化へのシナリオについても考察されている。
 

NEDOプロジェクト開発成果の社会的便益に関する研究[PDF:2.2MB]

-「NEDOインサイド製品」トップ70に関する考察-

 NEDOプロジェクトは、開始後約30年で約3兆円の開発予算が投入されているが、このような国の投資の効果を分析する方法論は確立されていない。山下(NEDO)らは、NEDOプロジェクトの中で実用化・製品化に成功し、大きな売上げのある70件について、単に売上効果に留まらず、雇用創出効果、CO2削減効果などを総合的に論じており、費用対効果を分析する方法論を示した貴重な論文である。
 

電子加速器を利用した研究の産業技術への橋渡し[PDF:1MB]

-レーザーコンプトン光子ビームの発生と非破壊検査への応用-

 豊川(産総研)は、原子核の研究等に用いられている技術を非破壊検査に応用し、産業用技術とするために、要素技術の開発・改良および選択・統合を行っている。豊川は、橋渡し研究を「自分の拘りや考え方を整理して社会に受け入れられる姿に徐々に近づけていく作業」と位置づけ、ユーザーの声を多く聴き、研究の方向性を調整した過程が記述されている。
 

導波モードセンサーを用いたインフルエンザウイルスの検出[PDF:1.6MB]

-手のひらサイズの高感度センサーを開発-

 粟津(産総研)らは、「簡便で高感度なインフルエンザウイルス検出装置の実現」というゴールに向かって、要素技術を結合してセンサーの小型化などの中間統合技術を開発し、それらを組み合わせて統合技術を構築している。著者らがもともと蓄積していた技術に加えて、表面化学やウイルス学等の専門家との共同研究による異分野融合のプロセスが記述された興味深い論文である。
 

Synthesiology 第8巻第1号(2015.2)論文のポイント

 本誌は、成果を社会に活かそうとする研究活動の目標と社会的価値、具体的なシナリオや研究手順、また要素技術の構成・統合のプロセスを記述した論文誌です。本号論文の価値が一目で判るように、編集委員会が作成したシンセシオロジー論文としてのポイントを示します。

シンセシオロジー編集委員会
 

技術アーキテクチャ分析の提案[PDF:2MB]

-カーナビゲーション開発への適用事例-

 能見(経済産業省)らは、住友電工が研究開発および実用化を行ったカーナビゲーションシステムを対象に、主に要素技術の組み合わせ方を分析し、新製品開発の方法や戦略に関わる新たな知見を論述している。研究開発の経緯と方法を技術経営論の視点から改めて分析・整理して図示することにより、技術アーキテクチャの組み立てを方法論として汎用化する試みの論文として、産業界等において、新製品の研究開発計画の確度を高める波及効果が期待できる。
 

過酸化水素を用いるクリーンで実用的な酸化技術[PDF:2.3MB]

-新規触媒の開発とファインケミカルズへの展開-

 今(産総研)らは、グリーン・サステイナブルケミストリーの典型的な具体例として著者らが世界に先駆けて示した過酸化水素酸化技術について、基盤研究としての新規触媒の開発から、最終的に製品化を目的としたベンチプラントサイズでの製造と製品開発まで、その要素技術の構成と統合に関する研究シナリオを述べている。化学工業における触媒技術の重要性および新規触媒技術が工業的に実用される際に必要な他の視点や技術の重要性に言及した統合化学技術に関する論文である。
 

有害物質規制に対応するためのプラスチック認証標準物質の開発[PDF:2.2MB]

-RoHS指令対応の重金属分析用および臭素系難燃剤分析用に-

 日置(産総研)らは、本論文において、プラスチック認証標準物質が必要とされた社会的な背景、ニーズを捉えてから認証標準物質の開発に至る経緯、また、そのニーズを具現化するための技術開発、そして実社会への貢献としての標準物質の頒布の状況をまとめている。RoHS 指令への緊急な対応という産業界等からの強い要請に的確に対応し、国際的に通用する重金属と臭素系難燃剤の標準物質を開発した戦略とプロセスが適切に記述されている。
 

マグネシウム合金連続鋳造材の鍛造プロセス開発[PDF:2.4MB]

-結晶粒微細化を利用した鍛造技術-

 省資源・省エネルギーの観点から広範囲の工業製品に対して軽量化の社会的要請がある。斎藤(産総研)らは、構造用金属材料の中で最も軽量であるマグネシウム合金に関して、従来困難とされてきた連続鋳造材の低温鍛造プロセスを開発し、コスト低減、環境低負荷、作業環境改善に大きく貢献した事例を示している。特に、産総研が有する基礎基盤技術と企業が有するものづくり技術の密接な連携によって鍛造プロセスを開発した際に選択した要素技術やその統合シナリオが述べられている。
 

Synthesiology 第7巻第4号(2014.11)論文のポイント

 本誌は、成果を社会に活かそうとする研究活動の目標と社会的価値、具体的なシナリオや研究手順、また要素技術の構成・統合のプロセスを記述した論文誌です。本号論文の価値が一目で判るように、編集委員会が作成したシンセシオロジー論文としてのポイントを示します。

シンセシオロジー編集委員会
 

人工物工学研究の新しい展開[PDF:3.1MB]

-個のモデリング・社会技術化へ-

 太田(東大人工物工学研究センター)らは、人工物工学を確立するための研究の方法論を述べている。特に、人工物と個・社会・環境の持続的な調和関係を目指すために、人工物の存在によって価値観が変動する個のモデリングと、目的が不明確な問題に対する関係者間の協働による目的確定と解探索を組み入れた人工物創成の社会技術化から方法論を展開している点が興味深い。その具体例として、実験経済学的手法を用いた個のモデリング、および製品サービスシステムのモデル化が示されている。
 

日常的に利用可能な疲労計測システムの開発[PDF:2.4MB]

-フリッカー疲労検査をPC やスマートフォンを使って生活環境で実現-

 岩木(産総研)らは、これまで専用装置を用いて学術的用途のみに用いられてきた視覚的な「ちらつき(フリッカー)」の知覚閾値の計測による疲労の評価技術(フリッカー検査)を、スマートフォンやパソコンなどの一般向け電子機器で日常的に利用可能にする技術を開発した。フリッカー検査では点滅周波数を用いているが、点滅のコントラストによっても実現できることを示し、一般電子機器による疲労モニタリングシステムのための要素技術とその統合シナリオを述べている。
 

メタンハイドレート開発に係る地層特性評価技術の開発[PDF:5.9MB]

-現場への適用を目指して-

 メタンハイドレートを新たな天然ガス資源として利用するためには、採掘に伴う周辺地層への影響を的確に予測することが、経済性だけでなく社会的受容性の観点からも求められる。天満(産総研)による本論文では、「メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム」の中で進められた、長期的に安全な生産を行うための地層変形シミュレータの開発、それを基にした坑井の健全性評価および広域の地層変形評価技術の体系が俯瞰できる。
 

4次元放射線治療システムに関する国際標準化[PDF:3.2MB]

-照射効果の向上と安全性の確保-

 放射線治療においては患者の呼吸等に伴い動いてしまう腫瘍に対して、健康な組織の被爆を抑えつつ腫瘍の位置に必要な量の治療放射線を的確に照射する必要がある。平田(北大院)らは、患部の3 次元的な位置の時間変化を考慮した4 次元放射線治療システムに対して、安全性の技術的要件に関する規格を作成した。日本の装置メーカー、医師、医療技術者、研究者、関係省庁など幅広いステークホルダーが合意形成して推進した国際標準化の戦略と成果を述べている。
 

塗布熱分解法による超電導膜の合成[PDF:2.5MB]

-限流器等への研究展開-

 酸化物高温超電導体は送電線材への応用だけでなく、薄膜化することで様々なデバイスや機器への応用が期待できる。真部(産総研)らは、塗布熱分解法という原料溶液を基板に「塗って焼く」だけという金属酸化物の成膜技術を独自に開発してきた。本論文では酸化物高温超電導体の電力機器応用として事故電流抑制装置(限流器)の開発を目指した。塗布熱分解法を実用化に展開するために採用された要素技術の選択や統合の研究シナリオが詳細に述べられている。

 

Synthesiology 第7巻第3号(2014.8)論文のポイント

 本誌は、成果を社会に活かそうとする研究活動の目標と社会的価値、具体的なシナリオや研究手順、また要素技術の構成・統合のプロセスを記述した論文誌です。本号論文の価値が一目で判るように、編集委員会が作成したシンセシオロジー論文としてのポイントを示します。

シンセシオロジー編集委員会
 

放射線による生体障害を軽減する高安定化細胞増殖因子の開発[PDF:2.2MB]

-放射線防護剤の創薬に向けた基礎研究機関における研究開発-

 今村(産総研)は、高線量の放射線被ばくによって生体が受ける障害を軽減するため、細胞機能を調節する生理活性タンパク質「FGFC」を開発した。一般薬品とは異なる放射線防護剤の医薬承認を見据えて、高活性の候補分子の選択と安定化、大量生産系の確立、医薬用途への分子構造の至適化、防護メカニズムの解明に取り組んだ。基礎研究機関の取り組みとして、既存の医薬品を凌ぐ放射線防護剤を社会に出していくための長期的なシナリオを示している。
 

自己抗体解析のためのプロテインアレイ開発[PDF:2.1MB]

-生体防御系を利用した総合的疾患診断に向けて-

 川上(バイオ産業情報化コンソーシアム)らは、がんなどの疾患では、血清中に特定の自己のタンパク質に対する抗体が通常より過剰に存在するため、自己抗体を網羅的に検出することにより、疾患の早期診断が可能であることを示した。この開発にむけて「世界最大のヒトタンパク質発現リソース」の構築というブレークスルーを軸に、網羅的なタンパク質発現技術、タンパク質のアレイ化技術、抗体の検出技術、スクリーニング技術などの要素技術を統合していったシナリオを提示している。
 

内部熱交換式蒸留塔(HIDiC)の技術開発[PDF:2.4MB]

-バイオエタノール蒸留のベンチプラントに至る実証研究-

 片岡(関西化学機械製作(株))らは、 バイオマスのように目詰まりを生じやすい物質を効率よく蒸留し、かつ、本来の目標である省エネを実現するために、内部熱交換式蒸留塔の開発を進め、圧縮機不要で安全性の高いベンチプラント実証により、実用化に大きく道を拓いた。バイオプロセス分野と連携しつつ、プロセスシステム工学と伝熱工学を融合することにより、平衡論と非平衡論の乖離による開発の障壁を打破していったプロセスを示したプロジェクトマネージメント論である。
 

漏えいに強いパスワード認証とその応用[PDF:3.4MB]

-短いパスワードを許容しながら情報漏えい耐性を実現-

 インターネット社会では、パスワード(鍵)が漏洩・窃用されると、資産や権限が危険に晒される。古原(産総研)らは、パスワード鍵管理の実問題から基礎理論に立ち戻り、サーバーとクライアント側のいずれか一方での漏洩であれば、安全性が維持される鍵共有方式を考案・実装した。セキュリティは信頼であり、社会実験を繰り返しながら改良することができない。事前にあらゆる問題を想定して対策を施すリスクアセスメントが実施されていることが重要である。
 

低環境負荷表面処理技術の開発[PDF:2.5MB]

-有機フッ素化合物および凹凸加工を用いない新規はつ液処理の実用化を目指して-

 穂積(産総研)らは、汚れ等の液滴が残りにくい固体表面を実現するために、環境負荷物質である有機フッ素化合物や凹凸加工を必要としない新技術を開発し、技術移転による量産化技術へ短期で進展させた。固体表面分子の動的挙動に着目した基礎研究を基に、実用に不可欠なコーティング技術としてゾル−ゲル法を導入し、さらに企業が持つ要素技術を見事に融合させた研究開発戦略が描かれている。

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