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産総研:第48回産総研サイエンスカフェ

「第4の灯りLED -新しい灯りに新しい明るさの基準を-」

写真1

 近年、普及が加速するLED照明。蛍光灯よりも値は張りますが、長寿命、省電力という点でやはり魅力的ですよね。しかし、いざ購入しようとすると、メーカーも価格帯も様々で、パッケージには従来のW(ワット)とは異なるlm(ルーメン)という言葉が書かれていて、なんだかよく分からないまま買ってしまう、という事例も耳にします。しかも、もしパッケージのlmの値が適切な方法で測定されていなかったらどうでしょう。私たちは購入の際に各商品の比較ができなくなってしまいますね。

 産総研では、LEDの明るさを評価するための基準となる「標準LED」の開発研究を行っています。平成27年2月7日(土)、カフェ・ベルガ(茨城県つくば市)にて、第48回産総研サイエンスカフェを開催しました。「第4の灯りLED -新しい灯りに新しい明るさの基準を-」と題し、計測標準研究部門 光放射計測科 主任研究員 神門 賢二さんが、照明の移り変わり、LEDの発光原理、自身が取り組むLED照明の明るさの基準について紹介しました。

 照明の歴史は、たき火やたいまつ、ろうそくに始まり、18世紀末にはガス灯(最初の人工照明)、19世紀に白熱電球、そして20世紀前半には蛍光ランプが登場しました。20世紀後半に、赤色LEDと緑色LED、20世紀末には青色LEDとそれを利用した白色LEDが開発、販売されました。青色LEDは2014年のノーベル物理学賞受賞により話題となりましたね。「LEDチップから生じる光は、赤、青、緑といった単色光のみです。LED照明の中に青色LEDと黄緑色の蛍光体を入れて混色させることで、白色光(照明の光)を生み出すことができるようになったのです!これにより照明のLED化が進みました。」と神門さんは説明しました。蛍光体とは、夜光塗料や安全ステッカーに使われている光を当てると発光する物質のことです。実際にLED電球を分解して白色LEDを取り出して見てみると、蛍光体が塗られているために一部分が黄色に見えました。

 とはいえ、人間の目では、白色光の中に青色と黄緑色が混ざっていることはわかりません。そこで神門さんは、分光分布※1を測定する装置を取り出しました。LED電球の測定結果のグラフを見ると、確かに青色と黄緑色の波長部分にピークがありました。ちなみに白熱電球では、熱放射のために各波長の光が幅広く分布します。蛍光灯には、水銀の輝線※2が現れました。これは蛍光灯が水銀を含むためです。白色照明と一口に言っても、その中には様々な色の光が様々な割合で含まれていることを参加者の皆さんに感じていただけたようでした。

写真2
LED電球、白熱電球、蛍光灯の3つを並べて見比べてみました。

 それでは、神門さんが研究している明るさの基準(標準)とは、具体的にどのようなことなのでしょうか。カフェの後半は、いよいよその話題です。

 LED照明のパッケージには、“810 lm”などという標記があり、その近くには“全光束(明るさ)”と書かれています。lm(ルーメン)とは、人間の眼が感じる明るさの総量を表す単位で、大きいほど照明が明るいことを意味しています。もし、lmがメーカー毎にバラバラの基準で測定した値だったら、私たちは商品を比較できず本当に必要な照明を購入できません。そこで、LED照明の明るさを測定する装置の校正に使えるような「標準LED」を開発し産業界に供給する必要があります。これを使うことで、統一的な、信頼性の高い明るさ評価が可能になるのです。

 これまでは、白熱電球の標準電球が使われてきました。しかし、神門さんによると、LED照明は従来の電球とは分光分布や光の広がり方などの特性が大きく異なるため、従来の標準電球では明るさ評価が難しいそうです。LED照明が普及するにつれてその評価に適した新たな標準器を開発する必要がありました。そこで、産総研では2003年から標準LEDの開発を開始し、2007年に初の低強度LED用標準LEDを開発しました。現在はLED照明用の標準LEDの開発が進められています。商品パッケージのlmは同じ値なのに点けてみるとAメーカーとBメーカーでは明るさが違う、といったトラブルは近い将来無くなるでしょう。

 カフェの最後には、「LED照明を見た・使ってみた感想」をテーマに、参加者に簡単なグループディスカッションを行っていただきました。様々な意見が出ましたが、特に多かった意見は、「LEDの光には白熱電球のような暖かみがない」、「LED照明では目が疲れるような気がする」といった意見でした。これに対して神門さんは、「LED照明の光は、従来の照明に比べて青色の成分が多く含まれ、赤色の光が少ないです。このため従来の色と異なって見える場合が発生します。LEDの普及が進むのは良いことですが、全ての照明をLEDに切り替えるのではなく、場面に応じて従来の照明も使っていくことが大切だと思います。」と参加者に語りかけ、カフェを締めくくりました。


※1 光源から放射される光を波長ごとに分割し、各波長の光がどの程度含まれているかを表した分布のこと。白熱電球の場合は各波長の光の連続的な分布が現れ、蛍光ランプには水銀の輝線が現れる。LED照明には、青色と黄緑色の部分にピークが現れる。

※2 電離あるいは励起された原子から放射される光は、その原子固有のものである。このような光をプリズムで分光すると離散的ないくつかの光の線となる。この線を輝線という。


写真3
皆さん、LEDについて色々思うところがあるようです。
写真4
神門さんも皆さんの意見に興味津々の様子。



サイエンスカフェの様子を撮影編集した動画。
 

同じ白色の灯りでも本当は違う!? 
-第48回産総研サイエンスカフェ 番外編-

開催概要
日時 2015年2月7日 土曜日 14時30分 ~ 16時00分
(終了後、30分程度フリーで話題提供者とお話いただく時間をご用意しています。)
会場 カフェ・ベルガ
〒305-0032 茨城県つくば市竹園1-10-1(つくばカピオ別棟)
※駐車場は、周辺の有料駐車場をご利用ください。
主催 産業技術総合研究所
参加費 無料 (ドリンク・お菓子をご用意)
定員 30名 ※要予約
対象 高校生以上
申込締切 2月2日 月曜日 17時00分 ※申込を締め切らせていただきました。大変多くの方にお申し込みいただきましてありがとうございました。
申込方法

参加申込につきましては、お申込フォーム、Eメール、電話のいずれかの方法で「2/7 産総研サイエンスカフェ参加希望」、 名前、人数、連絡先(メールアドレス)を添えて、お申し込みください。

[1]サイエンスカフェ専用お申込フォーム

[2]Eメール:必要事項を記入の上、事務局宛に送信
 必要事項・・・お名前(ふりがな)、参加人数、連絡先

[3]電話:必要事項をお伝えください
 必要事項・・・お名前、参加人数、連絡先


※2月3日(火)に皆様に参加の可否を通知いたします。連絡先は必ず記載してください。
※定員を超えた場合には抽選となります。
※ご登録いただいた個人情報を本イベントの対応以外に使用することはありません。
問い合わせ先 産業技術総合研究所 広報部 産総研サイエンスカフェ事務局
〒305-8568 つくば市梅園1-1-1 中央第2 つくば本部・情報技術共同研究棟8F
電話:029-862-6211 Eメール:メールアドレス:s.cafe-ml*aist.go.jp(*を@に変更してご使用ください)
※産総研の広報活動に使用することを目的として、サイエンスカフェの様子を写真や動画等で撮影させていただく場合がございます。その他の目的に使用することはございません。あらかじめご了承ください。

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