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産総研:第47回産総研サイエンスカフェ

「カーボンナノチューブ -“新しい炭”で拓く未来材料-」

写真1

 平成26年11月16日(日)、つくばカピオ別棟「カフェ・ベルガ」(茨城県つくば市)にて第47回産総研サイエンスカフェ「カーボンナノチューブ -“新しい炭”で拓く未来材料-」を開催しました。話題提供者は、ナノチューブ応用研究センター スーパーグロースCNTチーム 桜井俊介 主任研究員です。

 驚異の新素材として注目されてきたカーボンナノチューブ(CNT)ですが、私たちの生活の中でその名前を聞くことはほとんどありません。CNTの発見から今までどんな研究開発が進められてきたのか、どんな製品に応用できるのか、実用化に向けた課題は何か、等といった疑問に関して、桜井さんはわかりやすく説明してくれました。

 「CNTって、カーボン(炭素)+ナノ+チューブという、読んで字のごとくの物質なんです。」そんな言葉で桜井さんは始めました。“ナノ”とはナノメートル(nm)のことで、1メートルの10億分の1です。人間のDNAの幅が2nm、CNTの幅が細いものだと1nm以下ということからも、CNTの細さをうかがい知ることができます。CNTは規則正しく並ぶ炭素原子のみで構成された、とてつもなく細いチューブなのです。では、なぜCNTが未来の材料として注目されてきたのでしょうか。桜井さんによると、CNTには全物質中で最高クラスの様々な特徴があるそうです。鋼の100倍の強度、銅の10倍の熱伝導率、シリコンの10倍のキャリア移動度※1等、優れた特性を持っていることから、大きな期待が寄せられているのです。しかし、現状ではCNTは非常に高価なため、実用化には低コストで高効率にCNTを合成する技術の開発とCNTの特性を活かした用途の開発が不可欠だと桜井さんは説明しました。

 そもそも、CNTはどのようにして作られるのでしょうか。必要なのは、金属触媒粒子、熱(600-900℃)、炭素原料ガスの3つ。金属触媒粒子の上にCNTが合成され、成長していくのです。「では、高効率にCNTを合成するためにカギとなる条件は、3つのうちどれでしょうか。」桜井さんから参加者に質問が飛びました。意見はきれいに分かれましたが、答えは金属触媒粒子。合成が進むうちに、触媒が不純物炭素に覆われ、反応が止まってしまうのです。この問題を解決したのが、産総研が2004年に発表したスーパーグロース法です。微量の水分を合成中に添加することで、触媒が不純物炭素に覆われることを防ぎ、長いCNTを高速に成長させることが可能になりました。従来法と比べると、効率が1000倍、CNTの長さが1000倍(1mm)という革新的な技術です。2006年からはスーパーグロース法による量産技術開発が始まり、2015年には企業の商業プラントが操業予定であると、桜井さんは量産化への展望を語りました。

 それでは、CNTはどういったことに利用される可能性があるのでしょうか。一番実用化に近いのは、CNTを他の材料と混ぜて複合材料を作ることですが、そのためには、CNTをほぐす技術、異種材料と混ぜる技術、様々な形状に加工する技術等が必要になります。産総研では研究を進めた結果、これまでに、柔らかさを保ちながらも電気を通すゴムや、鉄並みに熱を通すゴムを開発しました。また、CNTの表面に銅をメッキした複合材料は、銅の100倍の容量の電流を流せることも桜井さんは紹介しました。この新しい材料により、電線やモーターなどの大幅な軽量化・小型化が望めるそうです。さらに、CNTの複合材料を蓄電器の電極にすることによって、軽量で高出力、大容量の蓄電器を作ることができます。これをハイブリッド電気自動車(ブレーキを踏むと瞬間的に充電し、アクセルを踏むとハイパワーで放電・加速する)の蓄電器として搭載することが考えられているそうです。私達に身近な物にCNT複合材料が応用されつつあるという話に、参加者の皆さんは熱心に耳を傾けていました。

 しかし、CNTの大量普及のためには、まだまだ乗り越えなければならない壁が存在します。カフェの最後に、桜井さんはその点に触れました。強くしなやかで軽いCNTを使うことで宇宙エレベーターが実現できるという話を聞いたことがあるかもしれませんが、現在の技術では不可能であると言われています。それは、CNTには結晶構造上の欠陥や炭素不純物がまだ沢山あるからだと桜井さんは解説しました。スーパーグロース法によって、量産が可能になってきたCNTですが、欠陥を減らす技術の確立にはまだ時間がかかるようです。最後に桜井さんは、「CNTが応用できそうな身の回りの材料・商品について、日々の生活の中で是非考えてみてください!」と参加者に呼びかけ、カフェを締めくくりました。

写真2
実際に産総研で作ったCNTの現物を紹介しました。参加者からも沢山
の質問がありました。
写真3
各テーブルのグループディスカッションの様子。
 

※1 主に半導体材料の中での電気伝導を担うキャリア(電子やホール等)の移動のしやすさを示す量。



開催概要
日時 2014年11月16日 日曜日 14時30分 ~ 16時00分
(終了後、30分程度フリーで話題提供者とお話いただく時間をご用意しています。)
会場 カフェ・ベルガ
〒305-0032 茨城県つくば市竹園1-10-1(つくばカピオ別棟)
※駐車場は、周辺の有料駐車場をご利用ください。
主催 産業技術総合研究所
参加費 無料 (ドリンク・お菓子をご用意)
定員 30名 ※要予約
対象 高校生以上
申込締切 11月11日 火曜日 17時00分 ※申込を締め切らせていただきました。大変多くの方にお申し込みいただきましてありがとうございました。
申込方法

参加申込につきましては、お申込フォーム、Eメール、電話のいずれかの方法で「11/16産総研サイエンスカフェ参加希望」、 名前、人数、連絡先(メールアドレス)を添えて、お申し込みください。

[1]サイエンスカフェ専用お申込フォーム

[2]Eメール:必要事項を記入の上、事務局宛に送信
 必要事項・・・お名前(ふりがな)、参加人数、連絡先

[3]電話:必要事項をお伝えください
 必要事項・・・お名前、参加人数、連絡先


※11月12日(水)に皆様に参加の可否を通知いたします。連絡先は必ず記載してください。
※定員を超えた場合には抽選となります。
※ご登録いただいた個人情報を本イベントの対応以外に使用することはありません。
問い合わせ先 産業技術総合研究所 広報部 産総研サイエンスカフェ事務局
〒305-8568 つくば市梅園1-1-1 中央第2 つくば本部・情報技術共同研究棟8F
電話:029-862-6211 Eメール:メールアドレス:s.cafe-ml*aist.go.jp(*を@に変更してご使用ください)
※産総研の広報活動に使用することを目的として、サイエンスカフェの様子を写真や動画等で撮影させていただく場合がございます。その他の目的に使用することはございません。あらかじめご了承ください。

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