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産総研:第46回産総研サイエンスカフェ

「赤トンボはどうして赤くなるの? -身近な昆虫に秘められた驚きのメカニズム-」

写真1

 平成26年9月6日(土)、つくばカピオ別棟「カフェ・ベルガ」(茨城県つくば市)にて第46回産総研サイエンスカフェ「赤トンボはどうして赤くなるの?-身近な昆虫に秘められた驚きのメカニズム-」を開催しました。話題提供者は、生物プロセス研究部門 生物共生進化機構研究グループ 二橋亮 主任研究員です。

 今回のテーマは、秋の風物詩の一つ、「赤とんぼ」。二橋さんは、「赤とんぼ」や「とんぼのめがね」といった有名な曲や、トンボ採りという日本でよく見られる風景を紹介し、日本人にとっていかにトンボが馴染み深い昆虫であるかを説明し、参加者の皆さんの興味をひきつけました。二橋さんご自身も、1才の頃からトンボ採りをしていた大のトンボ好きだそうです。

 まず二橋さんは、トンボが様々な体色や模様を持つ理由を説明しました。トンボは視覚に強く依存して周囲を認識している昆虫であり、体の色が雌雄判別のために重要な要素となっているそうです。その証拠として、メスのような色をした(変異体の)アカトンボのオスが、同じ種類のオスからメスと誤認された写真がスクリーンに写しだされると、参加者も思わず「なるほど!」と口にしていました。また、二橋さんは、「日本のトンボで最も種類の多い属は何でしょう?」と尋ねました。答えは今回のテーマであるアカトンボ(厳密にはアカネ属。「アカトンボ」は赤くなるトンボの総称で、狭義にはアカネ属を指す。)で、日本各地に21種が生息しているそうです。アカトンボには多様性があり、二橋さんは、遺伝子解析によってアカトンボの種間関係を明らかにし、さらに体色、翅の色、産卵方法、卵の形の分類を行った結果、体色や模様の多様化は、雑種形成を避けるため、近縁種の間で見分けがつくように発達したものと考えられるそうです。

 続いて、メインテーマである「赤とんぼが赤くなるメカニズム」についての説明が始まりました。まず二橋さんは、アカトンボのオスは成熟に伴い、オモクローム系色素※1の還元反応によって、体色が黄色から赤色に変わることを説明しました。オモクローム系色素は酸化還元反応※2で構造が変化することが知られており、実際に、未成熟のアカトンボに還元剤を注入したところ、体色が赤色に変化した様子が紹介されました。体色変化で有名な例にカメレオンが挙げられますが、アカトンボのような仕組みで体色が変化する例は他に知られておらず、動物の体色変化メカニズムの新たな例となったそうです。また、二橋さんは、赤が鮮やかなアカトンボほど、強い抗酸化作用を持っており、赤色は紫外線から体を守るために必要なのかもしれないとお話しました。さらに、アカトンボがかつて漢方薬として服用されていた例も挙げ、ビタミンC剤のような効果があったのではないかという説を紹介しました。

 実感として感じている方もいらっしゃるかと思いますが、今現在、アカトンボが激減しています。二橋さんの記録ノートによると、1990年代後半から日本全国でアカトンボが減少してきているそうです(二橋さんは、お父さんと分担しながら、1994年以降、20年連続で1年間のうち150日以上記録を取っています)。では、減少の原因は何なのでしょう?二橋さんは、1990年代後半から普及した新しい農薬(殺虫剤)が原因として考えられるという仮説を紹介しました。新しい農薬を使用すると、アカトンボの卵と幼虫が全滅してしまったという最近の報告もあるそうです。実際に、二橋さんが調べた北陸地方のアカトンボの減少率は、新しい農薬の普及率とよく一致するそうです。また、二橋さんは、生物の減少理由を解明するためには、常日頃から個体数などのデータを取っておくことが大切であり、トンボは環境のバロメーターとしても着目されていることを説明しました。

 最後に、二橋さんは、「トンボの体色変化や飛翔能力といった、トンボの持つ能力を生活で活かすアイディアを募集しています!」と参加者に呼びかけました。だれもが知っている昆虫でありながら、まだまだ知られていない能力を秘めたトンボを、バイオミメティクス(生物の持つ形態や機能を活かした新素材開発)に活かしたいという二橋さんの熱い想いとともに、カフェは締めくくられました。

写真2
各テーブルのグループディスカッションの様子
 
写真3
鮮やかな赤色の「ショウジョウトンボ」や、見る方向によって翅
の鮮やかさが変わる「チョウトンボ」を観察しました

※1 アミノ酸の一種であるトリプトファンから合成され、中間体3-ヒドロキシキヌレニンが酸化縮合して合成される色素の一群。赤、茶、紫などの色素がある。昆虫を含む節足動物の主要な色素で、軟体動物にも存在する。

※2 化学反応のうち、物質間で電子の受け渡しがある反応。酸化される物質は電子を放出し、還元される物質は電子を受け取る。



開催概要
日時 2014年9月6日 土曜日 14時30分 ~ 16時00分
(終了後、30分程度フリーで話題提供者とお話いただく時間をご用意しています。)
会場 カフェ・ベルガ
〒305-0032 茨城県つくば市竹園1-10-1(つくばカピオ別棟)
※駐車場は、周辺の有料駐車場をご利用ください。
主催 産業技術総合研究所
参加費 無料 (ドリンク・お菓子をご用意)
定員 30名 ※要予約
対象 高校生以上
申込締切 9月2日 火曜日 17時00分 ※申し込みを締切りました。お申込ありがとうございました。
申込方法

参加申込につきましては、お申込フォーム、Eメール、電話のいずれかの方法で「9/6産総研サイエンスカフェ参加希望」、 名前、人数、連絡先(メールアドレス)を添えて、お申し込みください。

[1]サイエンスカフェ専用お申込フォーム

[2]Eメール:必要事項を記入の上、事務局宛に送信
 必要事項・・・お名前(ふりがな)、参加人数、連絡先

[3]電話:必要事項をお伝えください
 必要事項・・・お名前、参加人数、連絡先


※9月3日(水)に皆様に参加の可否を通知いたします。連絡先は必ず記載してください。
※定員を超えた場合には抽選となります。
※ご登録いただいた個人情報を本イベントの対応以外に使用することはありません。
問い合わせ先 産業技術総合研究所 広報部 産総研サイエンスカフェ事務局
〒305-8568 つくば市梅園1-1-1 中央第2 つくば本部・情報技術共同研究棟8F
電話:029-862-6211 Eメール:メールアドレス:s.cafe-ml*aist.go.jp(*を@に変更してご使用ください)
※産総研の広報活動に使用することを目的として、サイエンスカフェの様子を写真や動画等で撮影させていただく場合がございます。その他の目的に使用することはございません。あらかじめご了承ください。

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