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多摂動二次元相関分光法

ー複雑な多摂動実験データの効果的な解析ー

材料開発における課題

 熱に強いポリマーを開発するためには、まずはポリマーを加熱しながらその変形を逐次計測していく必要があります。そして次にこのような熱応答の計測を、試料の組成を系統的に変えて行います。この一連の計測データを比較すれば、熱による変形が組成の違いによってどのように影響されるかを明らかにすることができますし、熱に強いポリマーを作るための有力な手がかりにもなります。

 このような例にとどまらず、実際の材料開発では複数の摂動を変化させながら測定を行うというプロセスがしばしば見られます。しかし、複数の摂動の変化の下で測定されたデータはとても複雑になることが多く、解釈が困難になるという問題点があります(図1)。

多摂動二次元相関分光法の概念図
図1 多摂動二次元相関分光法の概念図

多摂動二次元相関分光法

 私たちが開発した多摂動二次元相関分光法は、複数の摂動変化によって誘発された変化をNMRなどの分光法によって検出し、交差相関解析と呼ばれる数学的な処理を行うことで、二次元相関図を出力します。二次元相関図上のパターンを調べることで、複数の摂動に対してどの分子構造が変化しているのかを簡単に特定することができます。

 私たちは多摂動二次元相関分光法を使って、ナノサイズの層状ケイ酸塩をポリ乳酸に分散させたナノコンポジットの熱挙動解析を行いました。NMRを用いた多摂動二次元相関分光法の結果、ケイ酸塩の層の間にポリ乳酸が挿入され、さらに界面効果によって結晶化が促進される、というメカニズムによってポリ乳酸の耐熱性が顕著に向上することが明らかになりました(図2)。

多摂動二次元NMR相関分光法によるポリ乳酸ナノコンポジットの解析例の図
図2 多摂動二次元NMR相関分光法によるポリ乳酸ナノコンポジットの解析例

今後の展開

 多摂動二次元相関分光法は、さまざまな新規材料の開発に汎用的に用いることが可能です。例えば、現在までに、上記のポリ乳酸ナノコンポジット以外にも、ポリエチレン、セルロースの高分子構造変化の研究に応用されてきました。今後はカーボンナノチューブなどを用いたナノコンポジットの開発への適用を検討中です。

計測フロンティア研究部門
不均質性解析研究グループ
新澤 英之(しんざわ ひでゆき)


参考文献

[1] H. Shinzawa et al.: Analyst 137, 1913 (2012).
[2] 新澤英之 他: 分光研究, 61, 77 (2012).

このページの記事に関する問い合わせ:計測フロンティア研究部門 http://unit.aist.go.jp/riif/index.html

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