変位計測技術のニーズ
発電所や橋梁、輸送機関など、社会を支えるインフラ構造物や工業製品の損傷や劣化の状態を的確に把握することは、社会の安全安心の確立につながるほか、長寿命化によりコスト削減にも有効です。そのためには、構造物全体の変位分布情報を常時監視することで、異常を早期に発見することが必要です。
現場で使用されているひずみゲージやレーザー変位計などは点計測のセンサーであるため、構造物全体の変位情報を得るのに多くの手間とコストがかかります。そこで測定対象とする広域の変位分布を、短時間で高精度に計測できる全視野計測技術が期待されています。
開発したサンプリングモアレ法
変形前後の各1枚の画像を撮影するだけで、構造物の微小変位分布を測定できる手法(サンプリングモアレ法)を開発しました[1]。この手法は、もとの画像の拡大現象であるモアレ縞の位相を解析することにより、これまでの画像処理手法より1桁高い変位計測精度を実現できます。既存の変位分布計測手法に比べて、広範囲の領域を、高精度、高速、簡便に測定でき、低コストなのが特徴です。
図にサンプリングモアレ法による変位分布計測の一例を示します。構造物表面にある周期構造をデジタルカメラで撮影した画像(図左)に対して、サンプリングモアレ法を適用すると、位相が異なる複数枚のモアレ縞画像(図中央)を得ることができます。これらのモアレ縞画像から、フーリエ変換により、位置情報を示す格子の位相分布(図右)を高精度に算出できます。変形前後の格子の位相差を算出することで、構造物表面の周期格子パターンピッチの1/500以上の精度で物体の変位量を瞬時に知ることができます。
この手法を、長さ10メートルの大型クレーンへ適用し、40 mm程度のピッチ間隔の基準格子を測定したい場所に貼り付けて、同様の処理を行うことで、これまでの技術では困難であったサブミリメートルのたわみ検出に成功しました[2]。また、撮影時のカメラ設置位置に起因する誤差を低減できる位相補正手法[3]を開発し、専門家でない一般ユーザーでも簡便に高精度な変位計測を行えるようになりました。
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サンプリングモアレ法による全視野変位分布計測 |
今後の展開
サンプリングモアレ法を、実際の現場で活用できる実用性の高い計測分析システムとして仕上げます。任意の規則性格子模様を活用した二次元の変位分布計測から、複雑な変位挙動を解析できる三次元変位計測へ発展させ、大型構造物の簡便な健全性評価手法の確立を目指します。
計測フロンティア研究部門
構造体診断技術研究グループ
李 志遠(り しえん)

