粉末X線回折法について
クリーンエネルギー、エコ環境など、グリーンイノベーションにおいて、軽元素材料の重要性が近年高まっています。例えばリチウムイオン電池の電極、電解質材料、燃料電池の水素吸蔵材料などは大きな研究ターゲットです。さらには有機結晶、ナノ材料、ハイブリッド材料なども多くが軽元素から構成されています。
こうした材料の高機能化を図るには、軽元素に関する結晶構造情報が不可欠です。結晶構造を決定するには単結晶X線回折法が有効ですが、必ずしも高品質な単結晶が作成されるとは限りません。粉末X線回折法では、単結晶でなくても簡単に回折パターンの測定が可能ですが、軽元素の分析精度は単結晶X線回折法によるほど良くありません。粉末試料で軽元素の結晶構造解析ができればグリーンイノベーションに貢献できると期待されます。
ソフトウエア開発
軽元素はX線に対する散乱能が小さいため、結晶格子中のどこに位置するのかを求めることは難しい問題です。中性子回折実験を行うという選択もありますが、原子炉などの専用設備が必要であり、いつでも使用できるわけではありません。私たちは軽元素材料からの微弱な回折X線を最大限にとらえるため、イメージングプレート検出器(IP)を用いることが有効と考えました。そこで、IP上に得られた二次元回折像を一次元化するソフトウエア「PIP」を開発しました(図1)。粉末法では同心円状に回折線が得られますので、それを円に沿って積分を行うことでカウント数を1、2桁向上させることができます。さらに粉末の粒度の不均一性の影響も緩和できます。これらの工夫により、0.001 mm3程度の試料量でも実験室レベルで結晶構造解析を行うことが可能になりました(図2)。
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図1 オリジナルソフトウエアPIP (産総研知財(管理番号H22PRO-1100)) 実行中の様子 |
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図2 結晶構造の解析例(Rb3H(SO4)2の高圧相[1]) 水素原子の位置はDFT計算で推定した。 |
今後の展開
このソフトウエアは国内の大学、公的研究機関、高エネルギー加速器研究機構のフォトンファクトリー、高輝度光科学研究センターSPring-8における共同利用施設でも使用可能です。また、軽元素材料のみでなく、高温超伝導体や熱電材料開発などへ活用範囲の展開を図っています。
計測フロンティア研究部門
ナノ移動解析研究グループ
藤久 裕司(ふじひさ ひろし)


