放射線量のデータ統合における問題点
2011年3月の東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故は、福島県を中心に放射性物質を広く拡散させました。その後、被曝(ばく)リスクの管理などのため、多くの市町村などが公開している放射線量のデータを統合したり、個人から放射線量のデータを収集して地図上に表示するなどの試みが多数行われています。しかしそれらのデータは形式がばらばらであり、統合するにはITの専門家による高度な作業が必要です。そのため大きなコストがかかり、大規模かつ長期にわたって統合作業を継続できません。また、個人からのデータの収集も多くのサイトで個別になされており、全体としては統合されていません。
簡単にできるデータ統合
今回開発した放射線量マップシステムは、専門家でなくてもデータを登録・統合でき、大規模かつ長期にわたるデータ統合を簡単にします(図1)。一つのデータソースを登録して変換の方法を設定するのに要する作業時間は、要領がわかっていればほとんどの場合に10分以下と考えられます。
各データソースのデータを標準形式に変換するプログラム(変換スクリプト*)は、図2のようなインターフェースによって作成します。各データソースは何らかの表であり、その形式(どの列がどんなデータを含むかなど)に応じて標準形式に変換する必要があります。そのため、多種多様な形式の表を簡単なスクリプトで処理できるようなスクリプトの体系を設計・実装しました。ほとんどのデータソースはPDFファイルとして公開されているため、現在は登録の対象をPDFファイルに限っていますが、扱える表の形式は多様です。
![]() 図1 放射線量マップシステムの仕組みと画面 http://i-content.carc.jp/ustore/manual/radiation/ |
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| 図2 変換スクリプトの作成 上は位置、下は放射線量や日時を扱うもの |
今後の予定
産総研所内プロジェクトでは、空間放射線量のデータを数カ月にわたり蓄積できる携帯型線量計を開発しており、今後それらを含む個人用放射線量計のデータも放射線量マップに簡単に登録できるようにし、個人の被曝リスク管理を支援する多様なサービスを可能にする技術を開発する予定です。

橋田 浩一 はしだ こういち
