個人用放射線線量計の必要性
東京電力福島第一原子力発電所での事故により、放射性物質が広範な地域に拡散しました。拡散の状況は、風向きや天候の状態のほか、地形的な影響により異なるため、局所的に放射線量の高い場所が存在します。個人用の放射線線量計を一人一人が携帯し、日々の放射線被ばく量を自宅などで手軽に知り線量の高い場所を把握することができれば、不要な放射線被ばくを避けることができます。そのために、装着の負担の少ない個人用放射線線量計が必要とされてきました。
小型放射線積算線量計の開発
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| 図1 開発した小型放射線積算線量計(右)と比較のための500円硬貨(左) |
私たちは、これまで培ってきた放射線関連機器の小型化・省エネ化技術を応用し、小型で軽く(重量20 g以下)、名札ケースやポケットに入れて持ち運びでき、長期間の連続使用が可能な放射線積算線量計*を開発しました(図1)。この放射線積算線量計は、3 Vのボタン電池1個で1年以上動作します。この放射線積算線量計を、名札ケースや衣服のポケットなどに入れて携帯し、放射線線量を計測して時間経過を記録することができます。積算線量計の記録は、専用の読み取り表示器で表示できるほか、無線や光通信によりパソコンなどで読み取り、図2のように放射線の積算被ばく量や、一定時間(1時間や1日)ごとの被ばく量の推移を知ることができます。
今回開発した放射線積算線量計の測定・表示が可能な被ばく量は、0.1 µSv(ガンマ線)からとなっています。この放射線積算線量計は、半導体方式で放射線を検出していますが、半導体方式は衝撃などによるノイズを誤検出する場合があります。そこで、衝撃センサーにより誤検出の可能性の高い信号を除外する機能を備えています。また、線量と時間データは、内蔵する不揮発性の記憶素子に保存されるため、電源が切れても記録したデータを読み出すことができます。放射線積算線量計の内部では、線量率のレベルも監視しており、ある一定以上の線量率を検出した場合にはLEDの光やブザーの音により装着者に知らせます。また、この技術を利用したGPS機能付線量計の開発も行っています。
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| 図2 小型放射線積算線量計の測定記録のパソコン表示画面の例 |
今後の予定
開発した放射線線量計について、今後、無線機能を利用した大量校正システムを構築して、計測線量値の信頼性の向上などに取り組み、実証試験にて問題無く測定できることを確認するとともに、安価に入手できるように量産技術を確立し、できる限り早い時期の実用化を目指します。

鈴木 良一 すずき りょういち
