多チャンネル光結合の必要性
パソコンや近年普及が進むスマートフォンへのデータ伝送は、途中を光ファイバー通信網が担っています。今後もデータ量の増加が予想されるなか、光ファイバー網の分岐点となる装置(ノード装置)の一層の小型・省電力化が求められ、その光集積回路(光IC)*化が期待されています。光通信用光ICの開発には、中身の回路はもちろん、多数の光ファイバーを小さな光ICに光結合する技術も重要です。しかし、これまでの技術では、光ファイバーとの高効率かつ容易な多チャンネル光結合ができませんでした。
光ICと光ファイバーとの直接光結合技術
光ICの微細な光回路を通る光ビームの直径は通常1 µm程度以下です。それに対して、通信用の標準的な光ファイバーを通る光ビームの直径は10 µmであり、ビーム径の違いは10〜100倍にも達します。そのため、レンズを挟まず、両者をつき合わせる(直接結合する)だけで低損失に光結合するには、この倍率でビーム径を拡大/縮小できる光変換器を光IC側に搭載する必要があります。さらに、光導波路側の結合端面の屈折率を光ファイバーと同程度に変換することで、屈折率の差による結合界面での光ビームの反射を抑制することも重要です。今回、これら二つの条件を満たす微小な光変換器を考案し、標準的な光ファイバーと光ICとの直接光結合を実現しました。
図1のイラストは開発した光変換器の内部構造を示すとともに、光ファイバーと光結合するときの様子を示しています。この光変換器はシリコンのテーパーとガラスのテーパーの2段テーパー構造をもち、その両方が光ビームを拡大/縮小するため、1段テーパー構造では難しかった高倍率での光ビームの拡大/縮小が可能になりました。また、光ICの光導波路が屈折率の大きいシリコン(屈折率3.5)であっても、結合端面は光ファイバーと同じ屈折率(1.5)のガラスに切り換わるため、光ファイバーとの結合界面での反射を十分に小さくできました。これらの効果により、レンズを用いなくても、標準的な光ファイバーとつき合わせるだけで、一端面あたり1 dB以下の光損失で結合ができます。
図2は、光変換器アレイを搭載した光ICの例です。光変換器アレイは光変換器を等間隔に並べたものであり、これによって光ICの光入出力を多チャンネル化できます。今回開発した光結合技術により、既存の光ファイバーアレイを直接結合するだけで高効率の光結合を実現できるため、光ICの多チャンネル化が促進されると考えられます。
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図1 シリコン光導波路と光ファイバーとの間で光信号を拡大/縮小する光変換器 |
図2 試作した光変換器のアレイ(左)を搭載した光IC(右) |
今後の予定
今回開発した技術は、長距離通信用の光ICだけでなく、比較的短距離の光インターコネクト**用の光ICへの適用も可能です。将来は、この技術を多様な光IC開発に提供することで、大容量情報社会を支える多チャンネル光ICの標準的な光結合技術として普及を図っていく予定です。

德島 正敏 とくしま まさとし
