RFIDタグ作製プロセスの課題
食品などの安全性に関する意識の向上から、商品の産地情報、品質情報などのトレーサビリティー*が重要視されています。現在、トレーサビリティーが要求されるシステムの一端を担っているのは、無線により物体情報の認識・管理を行うRFIDタグです。RFIDタグのアンテナ作製プロセスを、現行の真空蒸着やエッチングから、より省資源・省エネルギーな印刷プロセスへ転換させることが図られていますが、印刷プロセス用の導電性ペーストは高価な銀を主とするため、材料コストを増加させます。
加圧焼成処理による印刷形成
私たちは、加圧焼成用のアルミニウムペーストや銅ペーストをフレキシブル基材上に印刷形成し、UHF-RFID**アンテナを作製する技術を開発しました。図1にUHF-RFIDアンテナパターンを作製する手順を示します。最初に金属ペーストのアンテナパターンをスクリーン印刷し、乾燥炉などで乾燥させます。その後、金属ペーストパターンの表面を、加圧ヘッドで圧力を加えながら焼成(加圧焼成)して導電化します。その際に、金属ペースト中の金属粒子が塑性変形して粒子表面の金属酸化膜が破壊され、金属粒子間に金属接合が形成されます。一般に、アルミニウムや銅の粒子は表面が酸化されており、粒子間で金属接合を形成することが困難ですが、今回、加圧焼成用金属ペーストを用い、加圧焼成処理することにより、この問題を克服しました。
これまでのものと今回開発したアルミニウムペーストに加圧焼成処理を施すと、いずれもアルミニウム粒子が塑性変形を起こし、金属接合が形成されます。しかし、今回開発したペーストは、アルミニウムや銅粒子の粒度分布などを設計・制御し、さらに特殊な分散剤を使用して印刷塗膜中のアルミニウム粒子や銅粒子の充塡率を上げています。これにより、印刷パターン表面に均一に圧力をかけることができ、導電化層が連続した部分の割合が高くなります。今回開発した金属ペーストの加圧焼成処理後の抵抗率は、これまでのものと比較して、アルミニウムペーストで約7分の1、銅ペーストで約5分の1と大幅に改善されました。
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図1 印刷によるUHF-RFIDアンテナパターン作製プロセス |
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| 図2 開発したアルミニウムペーストを用いてスクリーン印刷したUHF-RFIDパターン 加圧焼成処理前のパターン(左)と加圧焼成処理後のパターン(右)。処理後は金属光沢が見られる。 |
今後の予定
生産ライン向けの加圧焼成処理装置を開発し、アルミニウムや銅の印刷UHF-RFIDタグの実用化に取り組んでいきます。また、印刷技術を用いたダイオードや発光素子、太陽電池の製造などへの適用も検討していく予定です。

吉田 学 よしだ まなぶ
