ReRAM実用化における課題
近年、機能性酸化物を金属電極で挟んだ構造の素子に電圧を加えると素子の電気抵抗が変化し、電圧を除いた後も電気抵抗変化が保持される抵抗スイッチング現象を利用した抵抗変化メモリー(Resistance Random Access Memory:ReRAM)の研究開発が盛んに行われています。
しかし、これまでのReRAMで用いられる抵抗スイッチング現象は、酸化物の酸化還元反応、あるいは酸化物中の酸素欠陥の移動を起源とするため、スイッチング動作を繰り返すと材料の劣化が起こります。そのため、実用化にあたってデータの書き換え特性や保持特性などの信頼性の問題が懸念されています。
電気分極反転を利用したReRAM
今回、強誘電体であるビスマスフェライト(BiFeO3)を抵抗スイッチング層に用いてReRAMを作製しました。その特性を詳細に調べ、強誘電体と金属電極の界面に形成されたショットキー障壁の高さが、強誘電体の電気分極の向きによって変化することが、抵抗スイッチング現象の動作機構であることを明らかにしました。
今回開発した素子では、BiFeO3に電気伝導性をもたせるため、原料のBiとFeの組成比率を調整してBi欠損を含むBi1-δFeO3薄膜を作製し、p型半導体特性をもつこの薄膜を抵抗スイッチング層としました。素子の下部電極には導電性酸化物のルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO3)、上部電極には白金(Pt)を用いました。
図1に、電圧パルスによる電気抵抗スイッチング特性の測定結果を示します。電流−電圧特性と同様に、素子にプラスの電圧パルスを加えることにより、低電気抵抗状態へ変化し、マイナスの電圧パルスを加えると高電気抵抗状態へ変化しました。
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| 図1 強誘電抵抗変化メモリー素子の概念図(左)と電圧パルス印加による電気抵抗スイッチング特性 |
図2に、時間幅1マイクロ秒、電圧+7 Vと−7 Vのパルス電圧を交互に100万回ずつ加えた場合の抵抗変化の繰り返し書き換え特性の測定結果を示します。1桁以上の電気抵抗変化が10万回以上の繰り返し書き換えまで維持され、100万回でも3倍以上の電気抵抗変化が得られました。
今回開発した強誘電ReRAMは電気分極の反転による電気抵抗の変化を動作原理としているため、酸化物の酸化還元反応や酸素欠陥の移動など材料劣化を伴う現象を動作原理とするこれまでの酸化物ReRAMとは異なり、データの書き換え特性や保持特性などの信頼性の向上が期待できます。
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| 図2 素子のデータ書き換え特性 印加した電圧パルスの電圧は±7 V、パルス幅は1マイクロ秒。 |
今後の予定
今後は、材料開発による高温でのデータ保持特性の改善、微細化および集積化に向けた素子構造の設計、多値記憶に向けた電圧パルスの条件検討など、実用化に必要な要素技術の研究開発を展開する予定です。



