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音波を用いて静電気を計測する

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集束音波を走査して平面の静電気分布を可視化

菊永 和也の写真菊永 和也 きくなが かずや
菊永連絡先
生産計測技術研究センター
光計測ソリューションチーム
研究員
(九州センター)

大学では超伝導など電子材料の開発を専攻してきましたが、産総研への入所をきっかけとして静電気計測技術の研究開発に従事しています。静電気はとても単純で基礎的な現象ですが、それを評価するための計測技術がほとんどないのが現状です。そのような問題に対し複数の分野での研究経験を活かして、これまでの概念にとらわれずそれを打ち破るような技術の開発で社会の発展に貢献することを目指しています。

静電気計測の現状

 静電気は生産現場のいたるところで不規則に発生し、生産性低下の原因になっています。そのような静電気障害を軽減するために、生産現場環境で静電気を計測できる技術が求められています。

 これまで静電気計測技術は、周囲にノイズ源がない場合など理想的な環境において正確に静電気を測定する手段として確立されていました。しかし静電気センサーを測定対象物の直上に近接させる必要があるなど、測定する際に空間的な制約がありました。また、平面の静電気分布を測定するには、センサーを物理的に動かす必要があるため、高速な測定が困難でした。

音波などの振動による静電気計測

 私たちは静電気を数値化し生産プロセスにフィードバックできる新しい静電気計測技術の開発に取り組み、音波と電磁界を用いて静電気を計測する技術を開発しました。電磁界は導体に交流電流を流すことで発生することが知られています。開発した技術では静止している電荷(静電気)の位置を空間的に変化させ、交流電流と同様の効果を作り出して電磁界を誘起させます。誘起した電界の強度と位相を測定することで、測定対象物の表面電位と電気的極性の情報を取り出すことができます。(図1)

図1
図1 計測技術の概念図

 この技術のメリットは、誘起される電磁界が振動させた部分のみの情報を含んでいるので周囲にある他の静電気と区別できること、電磁界が振動させた部分を中心として全方位で検出可能であるためセンサーを直上に設置できない場所でも静電気を計測できることです。このようなことから、生産現場のような空間的制約の多い場所にも適応できる静電気計測技術として期待されます。

 この技術を用いて計測したポリイミドフィルムの静電気分布の例を図2に示します。ここでは集束音波を用いてフィルムを振動させて静電気を計測しています。音源を一点一点移動させながら、その場所の電界を測定して分布を可視化しています。つまり、集束音波を高速で走査させることで平面の静電気分布を短時間で計測できる可能性があり、静電気可視化技術として期待されます。

図2
図2 ポリイミドフィルムの静電気分布の計測例

今後の予定

 今後は音波によって誘起された電磁界を効率的に受信するための低周波アンテナを開発し、新しい静電気センサーにつなげる予定です。さらに集束音波を高速で走査できる超指向性音響システムを開発し、静電気分布を短時間で可視化するシステムの開発を行う予定です。


関連情報:
  • 共同研究者
    蒲原 敏浩、野中 一洋(産総研)
  • 用語説明
    *静電気センサー: 帯電体と金属のような導体を近づけると、帯電体に近い部分に帯電体の持つ電荷とは異符号の電荷が集まる現象(静電誘導現象)を利用して、非接触で静電気を測るための一般的な計測器。
  • プレス発表
    2011年10月24日「音波を用いて静電気を計測する技術を開発
  • この研究は、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)先導的産業技術創出事業と、独立行政法人 日本学術振興会科学研究費補助金(若手研究B)の支援を受けて行っています。

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