地震と海底
東北地方太平洋沖地震は三陸沖の海底を震源として発生したため、もっとも大きな地形的・地質的な変動は海底に残されていると考えられます。しかし、その詳細は必ずしも明らかではありません。この地震によってどのような変化が海底で生じたかを明らかにすることは、今後の日本周辺での地震の研究と地震による災害の軽減にとても重要です。
堆積物からわかること
東北地方の仙台沖〜大槌沖の水深122 m〜5,500 mの13地点でマルチプルコアラー*によって海底堆積物試料(コア)を乱れのない状態のまま柱状に採取しました。そのコアを産総研において肉眼、X線CT装置、透過X線画像撮影装置などを用いて観察したところ、13地点のうちの12地点で地震に伴い発生した海底崩壊や津波によって形成されたと考えられるタービダイト**がコア表層部にあることを確認しました。もっとも厚いタービダイトは大陸斜面下部の水深5,500 mから採取したコアに認められ、約25 cm長のコアのすべてがタービダイトでした。
仙台沖の水深122 mから採取したコアには、厚さ約11 cmのタービダイトの下位に厚さ約5 cmの破壊された堆積物を確認しました(図1)。この破壊された堆積物には、より下位の底生生物によってかき乱された部分とは異なり、縦方向の筋状の割れ目があります。これは地震の強い揺れによって海底が壊されたため作られた構造であると考えられます。このような大きな地震動による海底の破壊はこれまでに1993年北海道南西沖地震の際に報告されているほか、東南海地震の震源域である熊野沖でも見つかっています。
また、今回の震源近くの水深893 mから採取したコアのタービダイトには複数の侵食面が認められ、複数回の混濁流の流下があったことが示唆されます(図2)。これらのことから、混濁流を発生させる海底斜面の崩壊が多くの場所で発生したものと考えられ、今回の地震による海底の擾乱が震源域の広域で起こったこと、そして海底の震動が極めて大きかったことを示しています。
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図1 仙台沖の海底から採取された堆積物コアの透過X線画像 |
図2 震源に近い海底から採取された堆積物コアの透過X線画像 |
今後の予定
今後はこの海域からより長い柱状の海底堆積物を採取して、その中に残された地震性タービダイトの堆積年代を決定していくことで、長期間にわたるこの海域での地震発生履歴を解明していく予定です。

池原 研 いけはら けん
