バリアフィルムの課題
食品包装用フィルムには、食品の劣化を防ぐために、酸素や水蒸気を通しにくいガスバリア性が求められます。現在、一般的に用いられているシリカやアルミナなどの無機層を蒸着したフィルムは、食品包装材に十分使用できる酸素ガスバリア性と水蒸気バリア性をもちますが、折り曲げたりくしゃくしゃにすると、蒸着した層が損傷して、酸素ガスバリア性が劣化するなどの問題がありました。また、損傷を受けて劣化した酸素ガスバリア性を回復させることができませんでした。
粘土を用いたバリアフィルムの開発
今回私たちは、親水性の粘土と水溶性のプラスチックをある組成で混合し、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に薄く塗布すると、PETフィルムとガスバリア層が良く密着することを明らかにしました。このフィルムの透明度は塗布前と全く変わりませんでした。ガスバリア層を厚くすると、酸素ガスバリア性は高くなりますが、フィルムを二つ折りにしたときにガスバリア層が損傷し酸素ガスバリア性が劣化してしまいます。一方、ガスバリア層を薄くした場合、二つ折りによる損傷は見られませんが、酸素ガスバリア性が不十分になります。これらの相反する特性について検討を重ね、十分な酸素ガスバリア性と二つ折りの処理で損傷しない最適なガスバリア層の厚さを決定しました。
今回開発したフィルムは、蒸着フィルムだけでなく、市販のガスバリア層塗布フィルムと比較しても、酸素ガスバリア性が容易には劣化しないことをゲルボフレックス試験*によって確認しました(表)。これは、塗布したガスバリア層が柔軟であることに加え、フィルムが空気中の水蒸気を吸収して膨潤し、変形によって生じたピンホールを塞ぐためと考えられます。実際に、意図的に傷をつけたフィルムを高湿度下に置いたところ、ひとりでに傷が消失する現象が観察されました(図)。この傷はフィルムを再び乾燥させても消失したままでした。
さらに、実用化に必要な高速生産のため、印刷技術によるガスバリア層の塗布工程を検討し、均一に印刷できるペーストの開発や印刷条件を確立し、幅50 cmのロール品の製造に成功しました。
| 表 ゲルボフレックス試験後の酸素透過度(cc/m2・day・atm) 数値はフィルムと25 µmポリプロピレンとのラミネート品での測定値 |
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| 図 傷をつけたガスバリア層の自己修復過程の光学顕微鏡写真 左:傷をつけた直後、右:加湿条件下で60分放置した後 |
今後の予定
今回開発したフィルムについて、共同研究の企業が6カ月以内の製品化を目標としています。また、Clayteam**と連携して水蒸気バリア性の向上に取り組み、より幅広い用途に使用できるガスバリアフィルムの開発を行います。さらにフィルムだけでなく、プラスチックフィルム用コーティング液の開発も行っていきます。

蛯名 武雄 えびな たけお
