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サービス現場の仮想化技術

[ PDF:1.2MB
屋内環境と顧客・従業員行動の網羅的分析

石川 智也の写真石川 智也 いしかわ ともや
石川連絡先
サービス工学研究センター
行動観測・提示技術研究チーム
産総研特別研究員
(つくばセンター)

サービス現場の見える化のための従業員・顧客の屋内行動計測技術と、環境モデリング技術の基礎・応用・実用化研究を並行して推し進めています。各技術の新規性や独自性を出しつつ、複数の民間企業などの外部機関と連携し現場の視点を持ち続けることは簡単なことではありませんが、そのような研究活動によってのみ、サービス産業活性化に資する成果を生み出し続けられるのではないかと考えています。

仮想化の必要性

 サービス産業の生産性は製造業と比べてかなり低く、科学的根拠に基づく生産性向上が望まれています。顧客や従業員の行動を計測し、サービスを分析・再設計したり、より適切なサービスを提供したりすることが生産性向上に有効だと考えられていますが、屋内行動を計測する技術にはまだ決定打がありません。さらに、実験室では既知の環境情報も、サービス現場では計測対象とする必要があります。逆に、屋内環境と顧客・従業員行動の仮想化ができれば、POS(Point Of Sales:販売時点情報管理)システムなどから得られる会計データなどの「結果」と、その結果を生み出した「行動」、さらにはその行動に影響を与えた「環境刺激」から、より網羅的、総合的な見える化、分析などを実現できると考えられます。

3次元モデルの作成

 私たちは、センサー・データフュージョン(SDF)と称する行動計測技術および屋内環境幾何モデリング技術の研究開発に取り組んでいます。SDFでは、モバイル自蔵センサーモジュール(加速度・ジャイロ・磁気・気圧)と測位インフラを用いて、顧客や従業員の位置・姿勢を継続的に計測することができます。ベースとなるのは、インフラを使わず自蔵センサーモジュールのみで行う相対位置と絶対姿勢の推定です。これは、私たちの研究チームで別途開発している歩行者用の慣性航法によって行います。ただし、慣性航法では絶対位置が得られない、誤差が蓄積するなどの問題があるので、IMES(屋内GPS)/Wi−Fi(無線ネットワーク)/RFID(無線タグ)/可視光通信(LED照明)などの測位インフラや、3次元環境マップを利用して絶対位置情報を得たり、誤差を抑制したりします。既存の測位インフラに基づく手法で屋内環境をカバーすると莫大(ばくだい)な初期コストやメンテナンスコストが必要ですが、このような連携により、費用対効果が高く、かつ、めりはりのある計測を実現することができます。

 屋内環境幾何モデリングの研究では、写真を撮りためることにより、対話的に効率よくサービス現場の3次元モデルが作成できるツールを開発しています。例えば、図1、2で用いられた3次元モデルは、どちらも30時間前後で作成することができました(撮影時間を含む)。さらに、作成されたモデルは、SDFのマップだけではなく、調査支援(図1)、ナビ(図2)などにも適用でき、再利用性の高いものとなっています。産総研一般公開では、来訪者17名(6〜37歳)に3次元モデル作成を体験していただき、良好な評価を得ることができました。

図1 図2
図1 行動計測に基づく疑似体験映像を用いた回顧型インタビュー支援の事例(協力:城崎温泉)[1]
図2 G空間EXPO2010での屋内ナビゲーションサービスのデモ風景[2]

今後の展開

 今回紹介した技術群は現在、生産性向上を主眼に水平展開していますが、POSシステムにより流通イノベーションが誘発されたことから類推すれば、さらなるサービスイノベーション誘発を支援するような技術としても発展していくことが期待されます。


関連情報:
  • 参考文献
    T. Ishikawa et al.: Int. J. Organizational and Collective Intelligence, 2 (1), 1-20 (2011).
  • 参考情報
    [1] http://www.youtube.com/watch?gl=JP&v=5pv0jeGl9Mk
    [2] http://www.youtube.com/watch?v=tfX2RTC-8wo
  • 共同研究者
    蔵田 武志、興梠 正克、大隈 隆史(産総研)
  • 特許
    PCT/JP2010/071637「移動体の測位装置」
    特願2009-006092「コンピュータグラフィックス作成方法」
  • この研究開発の一部は、経済産業省サービス工学研究開発事業の支援を受けて行っています。

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