中性子線量計の校正について
原子力分野のみならず、鉄鋼業など多様な産業分野で利用される中性子を測定する線量計校正のために中性子標準の開発研究が行われています。一般的に利用される中性子のエネルギー範囲は、1 meV〜20 MeV領域と10桁に及びます。現在、中性子線量計の感度(応答や検出効率とも言う)校正は、加速器などによって生成される単色中性子*を用いてなされていますが、標準供給されているエネルギー点はISO8529で推奨される8つの代表点であり、離散的です。そのため中性子線量計の感度をエネルギーに対して点ではなく曲線で得ようとする場合には、通常モンテカルロシミュレーションによる結果を組み合わせます。しかし、計算では線量計内部の構造を正確にモデル化できないので、計算結果には大きな不確かさが含まれます。そこで、より信頼性の高い線量評価を実現するために、実験的に広いエネルギー範囲にわたり感度曲線が一度に得られる校正方法を開発しています。
パルス白色中性子源による校正法
新しい校正方法では、まず加速器からのパルスイオンビームまたはパルス電子ビームを厚いターゲットに衝突させ、核反応(7Li(d,n)反応やTa(γ,n)反応)を起こさせます。この反応によって広いエネルギー範囲のスペクトルを持った白色中性子が、一定間隔でパルス状に発生します。中性子エネルギーは、中性子の速度に依存しますので、ある一定距離を中性子が飛行する時間の測定によって、さまざまなエネルギーの中性子を一度に測定できます(中性子飛行時間法)。このことを利用し、中性子線量計からの波高出力と中性子飛行時間の2次元同時計数測定により、感度曲線を一度に校正できます。パルス白色中性子源による校正結果は、これまでの単色中性子による校正結果と相補的に組み合わせることによって、より信頼性の高い結果となります。
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| 図1 パルス白色中性子源を用いた中性子校正法の概略図 中性子線量計からの波高出力と中性子飛行時間の2次元同時計数測定によって校正される。グラフは、Ta(γ,n)反応と水減速によって得られる白色中性子スペクトルである。 |
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図2 産総研4 MVペレトロン加速器に導入されたイオンビームパルス化装置 |
今後の展開
今回の方法は、核燃料施設などの固有の中性子スペクトルをもつ作業環境場や緊急被ばくの現場での線量評価へも応用が広げられると期待されます。今後、パルス中性子源の性能をより向上させ、かつ安定的なものにすることによって、実用化への道筋をつけたいと考えています。

松本 哲郎 まつもと てつろう

