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シリーズ:進化し続ける産総研のコーディネーション活動(第26回) |
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産学官連携に従事した6年間で感じたこと |
イノベーションコーディネータ 名川 吉信(ながわ よしのぶ)
イノベーションコーディネータへの道私は、工業技術院東京工業試験所を皮切りに、化学技術研究所、生命工学工業技術研究所、産業技術融合領域研究所で水環境化学、生体物質構造解析、分子認識などの研究に従事してきました。産総研発足1年後から、界面ナノアーキテクトニクス研究センターの副研究センター長を務めた後、2005年10月に産学官連携コーディネータとなりました。2010年10月の組織再編に伴い、イノベーションコーディネータとして現在に至っています。 イノベーションコーディネータとしてのパッション私は入所以来、比較的基礎的な研究を行ってきましたが、NMRという分析装置を多用していたためか、「共同研究」を多数(企業・大学などを含めて30件以上)実施してきました。その中で、異分野の方々との議論により、目からうろこが落ちる体験を何回ももつことができました。このような思いを多くの研究者と分かち合いたいと常に考えています。 大型連携の推進と産技連活動産学官連携コーディネータになってから、企業との包括連携を含めて、いくつかの大型連携の事務局を務めてきました。複数の研究ユニットが関与し、共同研究の資金提供額が大きい大型連携では、企業側の研究開発本部長などの経営陣や産総研の理事などが参加する「連絡協議会」が開かれます。これは研究担当者が共同研究の成果を経営者層に直接説明できるよい機会であるとともに、ここで研究開発戦略の詳細を聞くことが可能です。ただし、大型連携では、成果の取り扱いや予算の執行などに手間がかかることも事実です。また、産総研は不実施機関(製品の製造や販売を自ら行わない機関)であるとともに公的研究機関であることも踏まえ、共同研究相手の企業には、応分の負担をして頂ければと思っています。 私は、産技連技術部会の一つであるナノテクノロジー・材料部会の部会長を2007年度から務めています。この部会には歴史も規模も異なる7つの分科会があり、それぞれ特徴のある活動を行っています。例えば、繊維分科会が共催している「全国繊維技術交流プラザ」は2011年度が49回目です。公設試験研究機関(公設研)の試作品および指導作品70点近くが公開展示され、優秀作品には中小企業長官賞、経済産業省産業技術環境局長賞などが授与されます。また、公設研の地元の企業との共同試作品が多数を占めるようになってきています。このような特色のある事業を実施するにはいろいろと課題もありますが、研究開発成果を一般の方に示すとともに交流のよい機会ですので、なんとか継続していただければと思っています。 コーディネーション活動の失敗例産総研の研究に対する連携のお問い合わせには、まず、イノベーションコーディネータや連携主幹が、じっくりとお話を聞くようにしています。漠然とした連携希望の際はもちろんですが、研究者の指定がある場合でも、よくお話を伺(うかが)うと別の研究テーマのほうがふさわしい場合もあります。これらを検討調整した後、関連する研究ユニットおよび担当研究者と連携可能かどうかの打ち合わせに入りますが、この段階で時間がかかることもあります。この間に相手企業の事情が変わり、連携を断られたことがありました。スピード感と共に相手との信頼関係の構築も大事だと痛感しています。 今後の連携活動イノベーションコーディネータの仕事をしていると、企業のさまざまな最新のニーズ、ひいては社会の要求に直接触れることができます。これは、得がたい体験であり、それに対応できるテーマをもった研究者を産総研の中に見いだすことができるのは、私にとって大きな喜びとなっています。今後も、「技術を社会へ」という産総研のキャッチフレーズを実現するために、研究を実施する研究者の立場に立って、さまざまな連携を推進できればと考えています。 |
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