回路基板に求められる性能
近年、電力の変換と制御を高効率で行うパワーデバイス*が急速に普及してきました。パワーモジュール*は、大電力の変換・制御を行うため、その回路基板には高い絶縁性、放熱性、耐熱性が要求されます。車載用インバーターなどのパワーモジュールの出力密度は年々高くなり、放熱技術はますます重要な課題となっています。また、自動車などに搭載される場合、大きな温度変化にさらされ、接合部には高い応力が発生するため、回路基板には高い熱伝導率に加えて優れた機械特性も強く求められるようになってきました。
熱伝導率と機械特性を両立
絶縁体セラミックスの中では、熱は結晶の格子の振動(フォノンと呼ばれる)によって伝わります。このため、原子間の結合が強く、軽い元素で構成され、対称性の高い結晶は、フォノンが伝わりやすく高い熱伝導率をもちます。窒化ケイ素結晶もこのような特徴をもち、純粋な結晶の熱伝導率は200 W/(m·K)を超えると予想されています。
しかし、市販の高純度窒化ケイ素粉末には、約1重量%程度の酸素が不純物として含まれており、この不純物酸素が、焼結の過程で窒化ケイ素結晶内部にも移動、固溶(こよう)してフォノンの散乱要因となり、熱の伝導を阻害するため熱伝導率が高くなりません。今回、この問題を克服するため、希土類酸化物を主体とする焼結助剤を含む高純度シリコン粉末の成形体を1,400 ℃付近で窒化させたあと、高温で緻密(ちみつ)化を行う「反応焼結・ポスト焼結手法」に着目し、熱の伝導を阻害する粒子内部の不純物や粒界相の量を低減させて粒成長を抑制するプロセスを検討しました。
熱の伝導を阻害する粒子内部の不純物や粒界相の量を最小にするように、窒化反応やポスト焼結などのプロセス因子を最適化した結果、図の赤丸印で示したように、高い熱伝導率に加えて、窒化アルミニウムを超える強度(3点曲げ強度:約550 MPa)をもち、破壊靱性(じんせい)(11 MPam1/2)が窒化アルミニウム(3 MPam1/2程度)の3倍以上であり、世界最高の熱伝導率と優れた機械特性を併せもった窒化ケイ素セラミックスを開発することに成功しました。
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| 市販のセラミック放熱基板と今回開発した窒化ケイ素の特性比較 |
今後の予定
今後は、今回開発したプロセスを基に、高い熱伝導率と優れた機械特性を兼ね備えた窒化ケイ素回路基板の製造プロセスを確立し、パワーモジュール用などの放熱基板材料としての実用化を図ります。

