パワーデバイスの現状
省エネによって二酸化炭素の排出を抑制するためには、電力をコントロールするパワーデバイスを高効率化することが大きな要素となっています。高性能パワーデバイスのための新しい半導体材料として、絶縁耐圧や熱伝導率に優れたシリコンカーバイド(SiC)や窒化ガリウム(GaN)が開発され、現在主流であるシリコン半導体との置き換えが図られています。ダイヤモンドはSiCやGaNよりもさらに絶縁耐圧や熱伝導率に優れていることから、ダイヤモンドによる革新的な省エネ超低損失パワーデバイスの創出が期待されています。
ダイヤモンドバイポーラトランジスタの開発
ダイヤモンドは電気抵抗が大きく、絶縁体に近い半導体です。一般的に半導体デバイスには、p型とn型の両方の半導体が必要で、ダイヤモンドでもp型とn型の半導体が作製できるようになっていました。しかし、ダイヤモンドの誘電率が他の半導体材料に比べ小さいために、動き回れる電子や正孔の量が少なく、流れる電流はわずかでした。
この欠点を補うため、私たちは非常に高密度の不純物を添加し、しかも欠陥の発生を極力抑えた低抵抗ダイヤモンド薄膜を作製することに成功しました。不純物を高濃度に添加したダイヤモンドでは電子や正孔が移動することで電流が流れますが、その電子や正孔の移動の機構は一般の電子デバイスに見られるバンド伝導[1]と呼ばれる機構ではなく、ホッピング伝導[2]と呼ばれる機構です。ダイヤモンドパワーデバイス開発には、ホッピング伝導とバンド伝導を巧妙に組み合わせるという工夫が必要になってきます。今回開発したバイポーラトランジスタは、高濃度不純物層であるp+層とn+層、不純物をほとんど含まないイントリシック層(i層)に加えて、リンの濃度をコントロールしたn層を使い、デバイス構造を工夫することによって作製したものです(図1)。
図2にこのトランジスタによる電流増幅を測定した結果を示します。これまでにもダイヤモンド半導体を用いたバイポーラトランジスタを作製した例はありましたが、有意な電流増幅は確認されていませんでした。今回、私たちが開発したトランジスタでは、入力に対応するベース電流の変化に対して、出力となるコレクター電流の変化が10倍程度となり、電流の増幅率が10を超えることが確認できました。
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| 図1 ダイヤモンドバイポーラトランジスタの模式図 | 図2 開発したダイヤモンドトランジスタの電流電圧特性 入力のベース電流に対して、およそ10倍の出力となるコレクター電流を得ることができている。 |
今後の予定
スマートグリッドにおける利用などダイヤモンドパワーデバイスの活躍の場を明確にし、絶縁耐圧や電流密度などの優位性を確認することにより、現在、産総研を中心に産学官共同で行っているダイヤモンドパワーデバイスの研究開発を加速し、発展させていく予定です。

山崎 聡 やまさき さとし
