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熱拡散率の精密測定

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材料固有の熱拡散率の評価方法を確立

阿子島 めぐみの写真阿子島 めぐみ あこしま めぐみ
阿子島連絡先
計測標準研究部門 材料物性科
熱物性標準研究室 主任研究員
(つくばセンター)

入所以来、レーザーフラッシュ法を用いた固体材料の熱拡散率測定に関する研究および標準開発に取り組んできました。熱拡散率および熱伝導率について、絶対値としての信頼性と材料の物性値としての物理特性、評価方法としての実用性など多方面からの技術開発に日々励んでいます。最近では、国際比較や共同研究を通して、熱物性値の信頼性評価に関する国際的な枠組み作りを目指した活動に参加しています。

研究の背景

 固体材料の熱伝導率の多くは、レーザーフラッシュ法(LF法)で測定した熱拡散率と別途求めた比熱容量、密度の掛け算で算出されます。LF法では、平板状試料の厚さ(d)方向の熱拡散率(α)をレーザー光によるパルス加熱後に試料裏面の温度が上昇して試料全体の温度が均一になるまでの時間(τ)を放射温度計で観測して求めます。LF法は少量の試験片について伝導性を問わず室温から1,000 ℃を越える温度範囲において非接触で迅速に熱拡散率を得ることができるとても優れた計測法です。近年では、省エネルギーと高性能化の観点から、電子機器などの熱設計において熱伝導率の値に高い信頼性が要求されています。産総研ではこれを受けてLF法の実用測定装置の校正のための熱拡散率標準および標準物質の開発を進めてきました。

確立した技術

 熱拡散率標準の開発では、測定方法がSI単位系にトレーサブルであること、および材料固有の物性値が決定可能であることという二つの条件を満たす技術を実現しました。産総研の測定装置は測定条件を理想的な1次元の熱拡散現象に近づける工夫と測定手順の精密化を行い、長さ・時間・温度の国家標準に対してトレーサブルな評価・校正を実現しました。さらに、熱拡散率は材料固有の物性値であり測定条件に依存しないことが必要とされます。そのために、同一温度からのパルス加熱強度を変化させた測定を繰り返し行い、パルス加熱強度に依存しない熱拡散率を推定する測定手順を確立しました。この手順で求めた熱拡散率は、厚さが異なる試験片に対しても測定結果が非常によく一致します。これにより、材料固有の物性値としての熱拡散率を測定することを可能にしたと考えています。この手順は、金属やセラミックスに対して行った海外共同研究者との測定で、その有効性を確認しています。

今後の展望

 2011年3月より、認証標準物質の頒布を開始しています。海外の研究所と熱拡散率測定の国際比較を進めており、今後は国際的な同等性が確認された固体熱物性標準の確立も目指していきたいと考えています。

図1 図2
図1 材料固有の熱拡散率の測定例(等方性黒鉛、室温) 図2 熱拡散率測定用認証標準物質(NMIJ CRM 5804a)
標準物質とそのケース

関連情報:
  • 共同研究者
    馬場 哲也(産総研)、Bruno Hay(LNE)
  • この研究の一部は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「産業技術研究助成事業」により行われました。

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