シリコンインゴットスライス技術の現状
太陽電池の大量普及に向けて、結晶シリコン太陽電池をより低コストで作製することが求められています。その方法の一つとして、結晶シリコンインゴットのスライス技術を、現在の遊離砥粒方式[1]から固定砥粒方式[2]へと移行することが進められています。固定砥粒方式は遊離砥粒方式に比べ、スライスコストや環境負荷を低減できます。一方で、多結晶シリコンインゴットを固定砥粒方式でスライスすると、基板表面が凹凸の少ない鏡面に近い形状となります。また、表面のダメージ層の厚さも遊離砥粒方式より薄くなるため、均一な表面テクスチャー構造を形成して表面反射率の低い基板を得ることが難しいという問題がありました。
新しい表面テクスチャー形成技術
今回、固定砥粒方式でスライスした多結晶シリコン基板に、真空装置を用いず低コストで量産に適用可能な方法で表面テクスチャーを形成する技術を開発しました。まず固定砥粒方式でスライスした多結晶シリコン基板(図1(a))にサンドブラスト処理[3]を行い、表面に一様な凹凸を形成します。次に、この基板を新たに開発した酸エッチング液に浸(ひた)して、サンドブラスト処理で生じたダメージ層の除去と基板の表面テクスチャー形成を同時に行います。図1(b)に酸エッチング後に形成されたテクスチャー構造の表面写真を示します。この方法を用いることで、これまでの方法だけでは得ることが困難であった均質なテクスチャー構造が形成できることがわかりました。
![]() |
| 図1 基板表面の状態 (a)固定砥粒方式でスライスした多結晶シリコン基板の表面 (b)本技術で作製したテクスチャー構造 |
また、今回開発した方法では、基板表面に残留するダメージ層の深さや凹凸の形状をサンドブラスト処理の条件を変えて制御できますので、スライス条件が変わっても常に最適な表面テクスチャー構造を形成できます。
この技術で作製した基板を用いて、通常の太陽電池作製プロセスによって多結晶シリコン太陽電池を試作したところ、代表的なセル特性として、セル効率:16.9 %、短絡電流:34.9 mA/cm2、開放電圧:620 mV、FF:0.780、面積:4 cm2(2 cm×2 cm)が得られました(図2)。サンドブラスト処理による基板への欠陥が残留することによる接合リークの問題はなく、良好なセル特性を示しています。
![]() |
| 図2 試作した太陽電池の電流ー電圧特性 |
今後の予定
固定砥粒方式によりスライスした多結晶シリコン基板の作製方法、サンドブラスト処理技術、酸エッチング技術をさらに改善し、量産プロセスとしての検証を行うとともに、太陽電池の構造を工夫することによって、より高効率な多結晶シリコン太陽電池の作製を目指します。

高遠 秀尚 たかとう ひでたか
