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シリーズ:進化し続ける産総研のコーディネーション活動(第24回)
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シーズとニーズをつなぐ仕事


技術移転マネージャー 宮本 裕生(みやもと やすお)

技術移転マネージャーへの道

 電機メーカーの研究所で約20年間、情報端末機器や有機デバイスの研究開発に従事した後、技術企画の仕事、(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構への出向、技術系コンサルティング会社への転職などを経て、2010年4月の産総研技術移転室の発足から、技術移転マネージャーとして、ナノテクノロジー・材料・製造分野の技術移転業務を担当しています。

技術移転マネージャーの仕事

 技術移転マネージャーのミッションは、イノベーションコーディネータと連携して、研究者の持つ技術シーズと企業のニーズとをうまくマッチングさせ、産総研の知的財産のライセンスにつなげることにあります。企業は収益を上げることが第一の目標ですので、もうかる、つまりは「競合優位性のあるビジネスモデルの構築」に主眼をおきます。それに呼応するためには、シーズ側としては"技術の強み"を明確に示すことが最も重要だと思います。"技術の強み"とは、類似・競合技術に対する性能の優位性はもとより、製品化においての耐久性、安定性や、製造における低コスト化などの差別化ポイントであり、それらの"可能性"と"実現までの課題"とを明確に示すことで企業が自社ニーズとのマッチングを迅速に検討することができるようになると思います。さらに"技術の強み"は、知的財産(特許やノウハウ)によって裏付けられる必要もあります。このような"技術の強み"を研究者とともに整理し、技術動向や、経済、社会動向も視野に入れながら企業にアプローチするのが技術移転マネージャーの役割と考えています。

研究試料提供契約と情報開示契約

 産総研の技術を企業の方に評価していただく仕組みに研究試料提供があります。これは新たに開発した機能性材料など、さまざまな用途展開が期待できる場合に企業ごとのニーズに適合できるかどうかを直接評価していただくのに有効な手段です。この場合、評価の過程で新たな特許などが生まれる可能性があるため、試料の提供は、知的財産の取り扱いなどを定めた契約を交わした上で行います。また、特定企業のビジネスに活用される研究成果については企業が得る利益の一部を産総研に還元していただくことが受益者負担の観点から妥当と考えられるため、有償提供を基本としています。

 試料の評価結果によっては、実用化までにはもう一段の改良が必要といった場合が多々あり、その場合には共同研究で改良に取り組むことができます。一方、実用化開発を企業単独で進める場合には、情報開示契約を締結した上でノウハウを開示し、研究試料として提供したものと同等のものが企業内で作製できるところまでの支援を行うこともできます。

今後に向けて

 シーズとニーズのマッチングとひとことで言っても、お互いの目的意識の違いからスムーズにいかない場合が多いと思います。自分自身が研究に没頭していた時の思い、企業での技術開発の経験を活かして、研究者と企業のwin-winの関係が達成されるよう両者のコミュニケーションを図りたいと思います。現在はこのような裏方に徹した仕事にやりがいを感じています。新産業創生のために技術移転の立場から貢献できるよう精進する所存です。

図 宮本 裕生の写真
技術移転マネージャーの役割
居室にて打ち合わせ中の筆者

このページの記事に関する問い合わせ:イノベーション推進本部 知的財産部 http://unit.aist.go.jp/ipd/ci/index.html

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