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シリーズ:進化し続ける産総研のコーディネーション活動(第23回) |
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こんな時代だからこそ、新しいベンチャーを生み出したい |
スタートアップ・アドバイザー 平林 隆(ひらばやし たかし)
スタートアップ・アドバイザー就任までの経歴私は大学院修了後に大手建設会社に入社しましたが、その後アメリカのビジネススクールに留学、帰国後は経営コンサルタントに転身しました。外資系コンサルティング企業で新規事業立ち上げプロジェクトを複数経験し、自ら企業経営に携わった後、2008年にスタートアップ・アドバイザー(SA)に就任しました。 事業化に必要なこと産総研に限りませんが、研究者には自分の研究成果の事業化に対して自信がもてない人が多いという印象です。成果を研究室内にとどめず、外部の企業人の目に触れさせ、フィードバックを受けることは事業化への不可欠なステップと考えています。ですから、SAはまず「成果を企業にアピールする」というよりは、「研究者に代わって外の評価を受けにいく」段階から始める必要があると感じています。 学術的にどんなに良い研究でも、買い手に受けなければ実用化はできません。歌のうまい人が必ずしもヒット曲を出せないのと同じです。売るための戦略を立案・実行するプロデューサーの存在が重要で、事業化でそれを担うのがSAの仕事なのです。SA=スタートアップ・「アドバイザー」という名称ではありますが、むしろ「プロデューサー」であるべきでしょう。研究者には出せない付加価値の創出がSAのミッションであって、研究者の話し相手・カウンセラーではないと思っています。 しかし現実には、事業化準備のためのタスクフォース(TF)が通常2年間であるのに対し、SAの雇用は単年契約です。つまり翌年も産総研にいる保証がなく、TFにおいて責任をもつのが難しい状況です。そんな人の言うことを聞くのは不安だ、という空気を研究者から感じることもあります。これは制度的な問題であり、見直す必要があると思います。 新しいベンチャー創出に向けて「ベンチャー」の世間での人気には波があります。2006年にベンチャーバブルがはじけ、リーマンショックの追い打ちもあって今は人気がありません。産総研でも新規のTF案件がなかなか出てこなく、元気とは言えない状況です。 確かにベンチャー化につながる研究シーズを新規発掘するのはとても大変です。目ぼしい研究者に声をかけても「起業」にあまり関心がないことも多く、また、これは私にとってとても意外でしたが「事業=利益を出すもの」とは思っていない方も少なからずいます。つまり「事業=慈善事業(のようなもの)」と考えている。そういう考えを否定するつもりはありませんが、起業となると難しいでしょう。 そもそも日本では「ベンチャー」という言葉にあまり良いイメージがなく、成功事例もとても少ないので、ピンとこない研究者が多いように思います。一方アメリカでは、工学系の大学教授なら技術系ベンチャーの一つは持っていて当然、特に西海岸の大学では学生の起業をサポートしようという空気があります。また、経済学の教授なら株でもうけていて当然。要するに、教えていることを実践し成果を上げていないと信用されないのです。これは行き過ぎれば「お金がないやつはダメだ」という風潮になりかねないので一概に良いとは言いきれません。しかし、日米でこれだけ大きな認識の違いがあるのが現実です。幸い私は就任以降とても意識の高い研究者との縁に恵まれ、現在折り返し地点にある担当TFも順調に進んでいます。顧客となってくれそうな企業からも一刻も早い事業化を期待されています。残りの期間でそれを果たすのと並行して、ぜひ新しいTF案件を発掘したいと思っています。 2007年以来、産総研のみならず日本全体で新しいベンチャーはほとんど生まれていません。新しい事業が出てこない、というのは国としても危ないことだと憂慮しています。特に3月の震災以降、社会には節約や自粛のムードが広がり、ますますベンチャーどころではないという感じになっていますが、むしろ今こそ、こんな状況を打開できるような産総研の高い技術を広く社会にアピールし、実用化につなげていくべきだと思っています。 |
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