農水産物の自動加工の問題点
食品加工業界では、昨今、農水産物などの原材料費の高騰に伴い、加工製品の歩留まりを向上できる加工技術への要求が増しています。一方で、熟練工の高齢化が進んでいることから、機械による安定した加工ができる自動加工システムが求められています。
しかし、農水産物は、同一品種であっても状態や形状が異なるため、これまでは重量や形状の高精度な計測が困難でした。特に魚フィレの自動加工機では、解凍された柔らかい魚フィレや凍結していびつな形の魚フィレに対して安定した形状計測ができず、しかも上面しか計測できなかったため、正確な加工ができないという問題を抱えていました。
魚フィレの3次元形状計測と自動加工
魚フィレは、下面でもワタ抜きされている部分は平面ではなく湾曲しているため、3次元形状を得るためには、上下両方向から同時に計測する必要があります。今回、計測機器としてステレオカメラを用い、ステレオ相関法[1]を採用することによって、ベルトコンベヤーのすき間を狭くしても安定して計測できるシステムを開発しました。計8台のカメラ(4セットのステレオカメラ)を使用し、ベルトコンベヤーで搬送されていく魚フィレの表面を輪切りにするように上下4方向から計測します。
魚フィレは凍結状態や水のぬれ具合によって表面に光沢を生じる一方で、背側ではうろこの黒い部分が光を反射しにくく、これらは3次元形状計測の妨げとなります。そこで陰影が濃くなるように光源の配置を工夫したうえで、明るさの分布情報を利用し、さらに物体表面の連続性を仮定することで、手掛かりが少ない黒色部分でも安定して計測できるステレオ画像処理のアルゴリズムを開発しました。
このようにして魚フィレの全周3次元形状をベルトコンベヤーで搬送しながら計測できる「全周3次元計測システム」を開発しました(図1)。このシステムは最高8.3 m/分の搬送速度でも、高さ方向±1 mm以内の高精度で全周3次元形状計測ができ、例えば全長440 mmの鮭フィレの場合、6秒未満(搬送時間含む)で全周3次元形状データが得られます。切り身一切れ分の重さや切り方などの情報を与えると、測定した形状データを基に加工情報を計算でき、この計測システムの後段に自動加工機を組み合わせることで重さが均一の切り身を自動で作成できます(図2)。
なお、カメラ設定などを変更することで、豚バラ肉の定貫[2]切りなど、さまざまな農水産物の加工のための3次元形状計測にも適用することができます。
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| 図1 全周3次元形状計測システム | 図2 計測結果に対する鮭フィレの加工情報、加工例 |
今後の予定
今後は全周3次元計測システムの製品化を目指し、共同研究相手の企業において、システムの頑健性の向上、高速化および低コスト化を進める予定です。

河井 良浩 かわい よしひろ
