研究の経緯
蛍光体の使用量の大半を占める蛍光ランプは、近年、エネルギー効率、演色性*を重視し、希土類(レアアース)を使用した赤色、青色、緑色の蛍光体を複数混合した三波長タイプが増えています。一方で、希土類を使用しない蛍光体を用いた一般色タイプの蛍光ランプも、低価格であることから使用され続けています。そのため、蛍光体廃棄物では両者が混在することがあり、簡便な手法で多種類の蛍光体の混合物を連続的に低コストで分離できる実用的な技術が求められていました。
産総研ではこれまでに、蛍光体の磁化率が種類ごとに異なり、また、蛍光体の混合物が分散した水溶液を超電導磁石内の数テスラ(T)以上の強磁場中に置くと、蛍光体に作用する磁気力によって磁化率の大きい蛍光体が浮上することを見いだしていました。しかし、高コストな超電導磁石が必要なので、低コストで連続的に分離できる手法を開発する必要がありました。
研究の内容
私たちは今回、電磁石を用いた汎用の高磁場勾配磁選機を使って蛍光体の混合物を低コストで連続的に分離する手法の開発を行いました。高磁場勾配磁選とは、図1に示すように電磁石間のカラム内に金属細線を配置し、そこに発生する誘導磁界によってその周辺の磁場に勾配を発生させて磁気力を高め、粒子を分散させた液体をカラム中に流通させて磁性をもつ粒子を細線上に捕捉するという手法です。
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| 図1 高磁場勾配磁選の装置図 |
この手法の分離効率を低下させる要素として、蛍光体同士が凝集すること、蛍光体がカラム内の金属に付着して洗浄回収が阻害されること、磁気力で付着する磁化率の高い蛍光体に磁化率の低い蛍光体が巻き込まれて付着してしまうことなどが挙げられます。私たちは、分散媒にポリカルボン酸系の分散剤と低発泡性の界面活性剤を添加することで付着を防ぎ、磁着後にカラムに振動を加えて磁化率の低い蛍光体を落とすなどの分離操作を最適化することで分離効率を向上させました。その結果、単位分離操作で磁気捕捉される緑色蛍光体の含有率は80 %となり、分離操作を3回繰り返すことで99 %以上の純度の緑色蛍光体を得ることができました。また、磁化率の差がより小さい青と赤の蛍光体を分離することもできました(図2)。
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| 図2 本技術により種類ごとに分離した蛍光体 |
今後の予定
今後、さらなる分離効率の向上に努めると同時に再利用が難しい各種の廃蛍光体混合物の分離と分離された蛍光体の性能評価を行い、実用化に最適な再利用プロセスを検討します。

赤井 智子 あかい ともこ
