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本格研究 理念から実践へ
火山噴火災害の軽減に向けた本格研究
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火山噴火推移予測の高度化


山元 孝広の写真
1986年4月工業技術院地質調査所入所。2001年4月産業技術総合研究所 深部地質環境研究センター 長期変動チーム長。2007年4月原子力安全基盤機構 規格基準部 放射性廃棄物評価室 調査役。2009年4月から現職。地質学、火山学が専門。
山元 孝広 (やまもと たかひろ)
山元連絡先
地質情報研究部門
主幹研究員(つくばセンター)

噴火災害の軽減

 日本には100を超える活火山があり、一度噴火が始まればその周辺に甚大な影響を及ぼします(図1)。産総研は火山噴火予知連絡会のメンバーとして噴火災害の軽減を目指しており、地震および噴火予知のための新たな観測研究計画(2009〜2013年)のもと、「噴火シナリオに基づいた火山活動の推移予測」に取り組んでいます。直前予知を目的とした活火山の監視は気象庁が業務として行っており、そのなかでも活動度が高い29火山については噴火警戒レベルが導入され、異常が観測された際には火口周辺警報や噴火警報が発令されます。しかし、噴火の兆候を観測できたとしても、それだけで実際に発生する噴火災害が避けられるわけではありません。

 火山噴火には多様な噴火現象があり、噴出規模や継続時間も火山ごと・噴火ごとに異なっています。そのためそれぞれの火山でどのような噴火現象が起こるのか(噴火シナリオ)を事前に整理し、将来の噴火に備えておく必要があります。例えば2000年の有珠火山の噴火では、直前予知に成功し、整備済みのハザードマップに従い火山周辺から住民の避難が速やかに実施されました。しかし、想定されていた被災域は江戸時代に起きた火砕流災害を想定したもので、2000年噴火の規模はこれよりはるかに小さく、実態に合わせてどのように避難域を縮小するかに手間取りました。反対に同年の三宅島噴火では、噴火の事前予知には成功しましたが、全く想定されていなかった2500年ぶりのカルデラ陥没が起きたため、最終的に全島避難を余儀なくされています。私たちの掲げる火山噴火推移予測の高度化は、このような経験から要請されたものです。

図1
図1 霧島山新燃岳の噴煙(2011年1月27日地質情報研究部門宝田晋治撮影)

活火山の活動履歴情報の整備

 産総研は、前身の地質調査所時代から、主要活火山を対象に「火山地質図」の整備を行ってきています(http://www.gsj.jp/Map/JP/volcanoe.htm;図2)。これは過去に噴出した溶岩や火砕物の層序と分布を色分けして地図上に示したもので、活火山の活動履歴情報の基礎となるものです。図面からは火山の形成史や災害履歴範囲が判読でき、その噴火実績をもとに将来の活動を予測することができます。

 火山噴火推移予測の高度化のためには、経験的な履歴の外挿だけでなく、地下でのマグマの発生から地表への噴出に至るマグマ供給系の理解が必要なことは言うまでもありません。ただし現在の科学レベルはその全貌の解明には至っていないのが現状です。産総研では、火山形成史を理解した上に、さらに物質科学的手法による噴出物の検討を積み重ね、この究極の課題に取り組んでいます。具体的には噴出物に残された地下のマグマの化学組成や温度圧力条件の情報を、各種分析手法を駆使して解読し、噴火の多様性の把握と推移要因の解明を行っています。

図2
図2 霧島火山地質図

霧島山新燃岳2011年噴火への緊急対応

図3
図3 霧島山新燃岳2011年噴出物の調査風景

 九州南部の活火山、霧島山新燃岳では2011年1月26日から規模の大きな噴火が始まりました。産総研では即座にこの噴火への緊急対応を開始しましたが、その直前には、気象庁が採取した同年1月19日の小噴火の噴出物を分析し、これにマグマ物質が含まれ本格的なマグマ活動の兆候があることを噴火予知連に報告していました。噴火の翌日(27日)には現地に調査チームを派遣し、噴出物の採取・定量を実施しています(図3、4)。28日にはつくばで噴出物の分析を開始し、この噴火が江戸時代の享保噴火(1716〜1717年)以来、約300年ぶりの本格的なマグマ噴火であること、マグマの化学組成は享保噴火のものとほぼ同じであること、1月26〜27日噴火の噴出量が享保噴火の個々の噴火規模に匹敵すること、享保噴火は1年半ほど継続しており今回も年単位の活動を想定する必要があることなどの防災に必要な情報を28日以降マスコミなどを通じて相次いで公表することができました。

 このような迅速な対応ができたのは、産総研が既に霧島火山地質図を出版済みであり、詳細な噴火履歴を明らかにしていたこと、特に享保噴火の推移と噴出物の分布を把握し、享保噴出物の試料を採取・保有していたことにあります。

 防災関係の研究は緊急時こそその成果を問われますが、そのためには事前の戦略的な情報整備が不可欠です。その点では、今回の新燃岳噴火対応はうまくいきました。1月から始まった今回の噴火活動は2011年7月の時点でも継続中であり、今後の推移予測に必要な調査・観測は産総研を含む予知連参加機関により続けられています。

図4
図4 2011年1月26日〜27日噴出物の分布図

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