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集積化全半導体超高速光ゲートスイッチ

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超高精細映像を160 Gbit/sで同時に送受信

秋本 良一の写真秋本 良一 あきもと りょういち
秋本連絡先
ネットワークフォトニクス研究センター
超高速光デバイス研究チーム 主任研究員
(つくばセンター)

1994年工業技術院 電子技術総合研究所入所以来、半導体量子構造における超高速現象やその光デバイス応用に関する研究に従事してきました。今後はこの産総研発のオリジナルな技術をさらに発展させて、さらに高機能・信頼性の高いデバイスの開発を行いたいと考えています。これにより将来の光ネットワークシステムの低消費電力・大容量化に貢献していきたいと思います。

超高速光ネットワーク実現をめざして

 インターネットの普及に伴う情報通信量の急増を受け、大容量・高速通信が可能な光ネットワークの構築が急務の課題となっています。超高速光ゲートスイッチなどの機能を半導体素子上に集積化した小型超高速光送受信器が実現されれば、高精細動画像などの大容量情報をリアルタイムで送受信でき遠隔医療やテレビ会議などのサービスの質の向上につながると期待されます。超高精細映像を遅延なく送受信するには、160 Gbps以上の超高速での信号の送受信が必要ですが、光信号を電気信号に変換して信号処理を行い、再び光信号に戻すといった従来の処理ではこのような高速に対応できません。これを克服するには、光信号を電気信号に変換せずに光信号のまま処理する必要があります。超高速光ネットワーク(図1)のキーデバイスは小型超高速光送受信器ですが、その実現には、光を光で制御する超高速光ゲートスイッチが不可欠です。

図1
図1 超高速光送受信装置を用いた光ネットワーク概念

光導波路と干渉計を集積化

 今回、半導体の微細加工技術により、InGaAs/AlAsSb量子井戸中のサブバンド間遷移による全光位相変調効果をもつ光導波路と干渉計を構成する光回路をリン化インジウム基板上に集積化して、全半導体光ゲートスイッチ素子を作製することに初めて成功しました(図2上)。素子の面積は、1 mm×0. 3 mmで、以前に開発した空間光学系の光ゲートスイッチモジュールの干渉計部の面積に比べて1/10000以下に小型化できました。また、多数の光ゲートスイッチ素子を含むウエハーを、ドライエッチング法で1回加工するだけなので、経済性に優れています。レーザー光源、光増幅器、受光器などの集積化も可能であり、高度な機能をもつ光デバイスへの展開も期待できます。

 図2下は、40 GHz繰り返しの光パルスを制御光として、160 Gbit/sの光時分割多重信号(40 Gbit/sを4チャンネル時間多重している信号)から1チャンネル分の40 Gbit/s信号を取り出す多重分離動作を行った実験結果です。制御光の入射タイミングを調整して、光ゲートが開くタイミングを信号光の特定チャンネルに合わせると、そのチャンネルの信号だけを抜き出して出力できました。出力信号の波形から、0と1の識別が十分にでき、高品質な光ゲートスイッチ動作が実現されていることが確認できます。

図2
図2 モノリシック集積技術により小型化された全半導体光ゲートスイッチ素子の写真(上)と160 Gbit/s光分割多重入力信号と多重分離された40 Gbit/s信号(下)

今後の予定

 今後は光ゲートスイッチの集積度を上げるとともに、パルス光源、光増幅器、受光器、電子回路を集積化する技術を開発しつつ、最終的には高精細動画像の160 Gbit/sや、さらに高速の光信号を遅延なく送受信できる超高速光送受信装置の実現を目指します。


関連情報:
  • 参考文献
    R. Akimoto et al.: Optics Express, 19, 13386 (2011).
  • 共同研究者
    牛頭 信一郎、物集 照夫、石川 浩(産総研)
  • プレス発表
    2011年4月25日「集積化全半導体超高速光ゲートスイッチの実現に世界で初めて成功
  • 用語説明
    サブバンド間遷移:量子井戸の中の伝導帯、あるいは価電子帯の中に形成されるエネルギー準位をサブバンドと言う。同じ帯(伝導帯あるいは価電子帯)の中のサブバンド間の光による電子の遷移をサブバンド間遷移と言う。通常の半導体のバンド間(伝導帯と価電子帯)の遷移に比べて高速で電子が上の準位から下の準位に戻るため、高速の動作が可能になる。
  • この研究開発は、NEDOプロジェクト「次世代高効率ネットワークデバイス技術開発」の委託を受けて行っています。

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