音波と物性
ヘリウムガスを吸い込んで声を発すると、普段より声が高く聞こえるのはよく知られています。これは、ヘリウムの方が空気より音が伝わる速度(音速)が速いことに起因しています。このように、音波は媒質の物性の影響を受けて伝搬するため、音波を物性測定に利用することができます。
音波共鳴法による気体の熱物性測定
サンプルガスを空洞容器(キャビティ)内に封入し、マイクロホンで音波を送受信しながら周波数を変化させていくと、ある特定の周波数で音波共鳴が生じます。この音波共鳴の周波数特性を測定することでサンプルガスの熱物性値情報を得る方法を音波共鳴法と呼びます。私たちは気体の熱物性測定を目的として、球型および円筒型キャビティを用いた音波共鳴測定装置を開発しました。
球型キャビティでは音波共鳴特性のピークがとても鋭く(Q値が高い)、共鳴周波数を高精度に測定することができるため、サンプルガスの音速を高精度に求められます。音速は密度や圧縮率と密接に関係した熱力学的性質であり、流体(気体・液体・超臨界流体)に関するいろいろな熱力学的性質を数式化した状態方程式を開発する際に、とても有用な情報になります。最近では、地球温暖化係数の極めて小さい冷媒の音速測定を行い[1]、空調機器のサイクル性能評価に必要な状態方程式の開発に貢献しました[2]。
一方、円筒型キャビティでは音波共鳴特性のピークが球型に比べて幅広くなり(Q値が低い)、共鳴特性の半値幅を精度良く測定することができるため、サンプルガスの粘性や熱伝導率を求めることができます。気体の複数の物性を同時に計測できる方法[3]として、円筒型キャビティを用いた装置はさまざまなアプリケーションへの発展が期待されます。
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| 球型キャビティによる音波共鳴測定装置 気体の音速を高精度に計測することができる |
円筒型キャビティによる音波共鳴測定装置 気体の粘性や熱伝導率を計測することができる |
今後の展望
単原子分子気体の音速を高精度に測定することで、とても小さな不確かさで熱力学温度(単位:K)を求めることができます[4]。マイクロ波共鳴によるキャビティ形状測定など音波共鳴測定装置の高度化を図り、現在使用されている国際温度目盛り(ITS-90)[5]の再評価を行いたいと考えています。

狩野 祐也 かの ゆうや
