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微細金属配線を印刷したエレクトロクロミック素子

[ PDF:1.1MB
調光ガラスや電子ペーパーの大面積化へ

川本 徹の写真川本 徹 かわもと とおる
川本連絡先
ナノシステム研究部門
グリーンテクノロジー研究グループ 研究グループ長
(つくばセンター)

ナノテクノロジーで得られたさまざまな材料・技術を統合し、システム化することにより、さまざまなエネルギー・環境問題の解決を目指しています。現在は、プルシアンブルー型錯体を利用した省エネルギー素子の開発と、放射性セシウムの回収除去技術の開発に注力しています。

エレクトロミック素子の透明電極の課題

 エレクトロミック素子とは電気によって色が変わる素子のことです。素子を構成する重要な部材は、エレクトロクロミック材料、電解質、そして透明電極です(図1 左)。エレクトロクロミック層の色変化は電極を通して見るため、透明電極は重要な部材です。素子の透過率・反射率を向上させるには、透明電極の可視光透過率を高くしなければなりません。

 一方で、大面積化した素子でも十分速い応答速度を得るためには、透明電極の電気抵抗を小さくする必要があります。透明電極に主として用いられるインジウムスズ酸化物(ITO)は、一般的な金属に比べ電気抵抗率が高く、電気抵抗を下げるためには厚膜化が必要となります。しかし、厚膜化によって可視光透過率が下がるため、電気抵抗低下と透過率向上の両立は困難です。また、ITOはレアメタルであるインジウムを含むため、コストや将来的な資源確保の面でも不安があります。

図1
図1 一般的なエレクトロクロミック(EC)素子の構造(左)と今回開発したEC素子の構造(右)

微細金属配線による性能向上

 今回、透明電極として使用するITO膜を薄くするとともに、膜上に微細金属配線を作製しました(図1 右)。これにより、光学特性の向上、応答速度の維持、レアメタル使用量削減など透明電極についての課題の解決を目指しました。実用化の際には目には見えない程度まで金属配線を微細化する必要があるため、簡単に微細化できるスーパーインクジェット法を用いて配線を描画しました。

 今回作成した電極間に1.5 V以下の電圧をかけると、図2のように白色−黄色の色変化を示します。白色時の反射率は最大で60 %を超え、人間の目の感度がよい波長500〜600 nmの領域でも55 %を超えています(図3 左)。また、応答速度は微細金属配線を施すことで大きく向上し、配線のない場合に比べ、色変化が終了するまでの時間が約 1/8 となりました(図3 右)。なお、色変化の終了は電荷注入量の変化から決定しました。注入電荷総量が少し違うのは素子膜厚に多少の違いがあるためです。

図2 図3
図2 金属配線を施した素子の色変化挙動
  図3 微細金属配線を施した素子の特性(左:反射率変化、右:電荷注入挙動)

今後の予定

 今後はさらに配線方式や線幅を検討することにより、反射率と応答速度の両方を同時に向上させることを目指します。エレクトロクロミック素子自体についても、応答性や耐久性などの基礎特性向上を進め、同時に用途ごとに特化した素子機能の向上を企業との共同研究の中で進めて、エレクトロクロミック素子の数年以内の実用化を目指します。


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