研究の経緯
産総研は、垂直配向した長尺の単層カーボンナノチューブ(CNT)フィルムを高密度化処理してシリコンウエハー上に倒伏させたウエハーを作製することに成功しました。この高密度配向CNTウエハーを、柔らかい基板の任意の位置に、任意の配向方向で貼り付ける技術を開発し、伸縮性のある高分子基板とCNTを組み合わせた柔らかいデバイスを作製できるようになったため、今回ひずみセンサーへの応用を試みました。
研究の内容
図1にCNTひずみセンサーの作製法を示します。シリコン基板上に合成した垂直配向単層CNTフィルムを基板からはがし、伸縮性のあるシリコーンゴムの基板に、フィルムの配向方向が水平になるように並べ、イソプロピルアルコール(IPA)に浸漬(しんせき)させます。この後、IPAが乾燥する際に、フィルム内の単層CNT同士を引きつけあわせて高密度化し、同時に単層CNTフィルムを基板に引きつけ、ファンデルワールス力で密着させます。このようにして、伸縮性基板の上に、高密度化した配向単層CNTフィルムのウエハーを作製できました。この作製の際に、配向単層CNTフィルムの配向方向を、基板をひずませる方向と直交するようにして、CNTひずみセンサーを作製しました。
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| 図1 CNTひずみセンサーの作製法 |
CNTひずみセンサーの応用として、呼吸・発声・手の動き・足の動きをモニタリングするデバイスを試作しました。図2に測定結果を示します。膝(ひざ)の動きをモニタリングするタイツ(図2 a)では、膝を曲げるとひずみが加わって電気抵抗が増加し、伸ばすとひずみが解放され電気抵抗が小さくなりますが、足の動きに伴う電気抵抗の変化が検出できています(図2 b)。また、ジャンプをするための膝の素早い屈伸動作と、着地に伴う衝撃を吸収する動作も検出できました。また、手袋の指それぞれにCNTひずみセンサーを取り付け(図2 c)、指を動かすと各指の形状をすべて判別でき、データグローブとしての利用の可能性を確認できました(図2 d)。 これらのCNTひずみセンサーはデバイスとしての耐久性に優れるため、複数の人間が繰り返し利用できます。
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| 図2 CNTひずみセンサーを利用した膝や手指の動きのモニタリング |
今後の予定
今回開発したCNTひずみセンサーは、人体の素早く大きな動きも測定できるため、ウェアラブルデバイスへの応用が可能です。例えば医療分野において、リハビリテーションの際に患者の動きを妨げずにモニタリングすることや、呼吸モニターやデータグローブとしての利用も考えられます。また、コンピューターゲームの入力装置としてレクリエーション分野への応用も考えられます。将来は企業などとの連携を進め、デバイスの実用化研究を進めていきたいと考えています。

山田 健郎 やまだ たけお
