展示の双方向化
博物館や美術館、各種展示会など実世界上のイベントでは、来場者がただ展示物を見るだけでなく情報発信に参加する、双方向性のある展示が求められるようになってきました。これまでにも来場者のコメントを壁に貼(は)ったりネット上で公開したりして、来場者の声を可視化する試みはなされていましたが、多数のコメントがランダムや時系列に列挙されるだけで、すぐに埋もれてしまっていました。今回、データの構造化(属性情報の付与)が集合知により簡単に行えるシステムを開発して、イベント来場者が参加できる展示物を実現しました。
コメントカードをその場でアートに
この研究では、イベント参加者が感想や考察を自由に記述したコメントカードの集まりを会場内でアート作品として展示できるシステムを多摩美術大学と共同で開発しました。このシステムは多摩美術大学が開発した、カード間の意味のつながりを幾何学模様として可視化するシステムと、産総研が開発したデータの意味を属性情報として簡単に追加できるシステムとを組み合わせたものです。
産総研の開発したシステムは、データを入力する各ユーザーが属性を自由に定義(例えば「人」のデータには「身長」や「体重」などの属性があると定義)できるようにすることで、みんなの協力によって徐々にデータと属性定義が増えていく新しいデータベースシステムです。何を属性とすべきかを簡単に判断できるように、入力するデータに応じて、過去に誰かが定義した属性をシステムが推薦する機能も持っています。これまで、属性などのデータ構造は専門家が事前に決めていたのに対し、みんなの知識(集合知)によってデータを構造化していくことで、より高度な検索や分類を可能にします。この技術により、イベント参加者が作成した多種多様なコメントカードを分類し整理する作業をその場で行いながら、同時にコメントカード集合をアート作品として、会場内で展示できるようになりました。
このシステムは2011年2月に国立新美術館で開催された第14回文化庁メディア芸術祭協賛展にて公開され、来場者による3,100作品への属性付与に成功しました。
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| 図 来訪者が感想や意見を自由に書き込んだ無数のコメントカードから一部を取り出して表示するとともに、コメントカード間の関係性をもとに幾何学模様を描き出す。 |
今後の予定
さまざまな可視化のアプローチをとりながら、参加者一体型展示システムの開発を継続して行う予定です。また、データ構造化システムについては、コメントカードに限らない多様なデータ、例えば組織がもつノウハウや体験に基づく知識など不定形な情報を対象としたシステムへの展開に取り組みます。

濱崎 雅弘 はまさき まさひろ