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シリーズ:進化し続ける産総研のコーディネーション活動(第20回) |
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「我こそは」と思う研究者は、ぜひ積極的なアピールを |
スタートアップ・アドバイザー 古川 博之(ふるかわ ひろゆき)
SA就任までの経歴私はIT企業で長年、商品企画などに従事してきました。シリコンバレーにも3年近く駐在し、日本で利用できそうな新技術の探索や日本の技術の売り込みを行い、ベンチャー企業が生まれる雰囲気に身を置き、その活力を体感しました。 その後、日本でBSデジタル放送局の社長として、テレビのリモコンによるショッピングといった双方向サービスの事業化を目指したり、シリコンバレーの駐在経験を活かしてベンチャー企業の立ち上げなどを行ったりしてきました。その縁で興味ある案件の紹介を受け、約3年前にSA(スタートアップ・アドバイザー)に就任しました。また、現在もコンサルティング会社の代表取締役を務めています。 SAとしての活動興味ある案件とは乱数発生器で、その商用化に関するTF(※注)を担当しました。研究開発はうまくいっていたのですが、顧客になる予定の半導体業界は事業環境が厳しく、創業の機会をうかがっているところです。その後、ちらつき知覚(フリッカー)を用いた簡便な疲労計測技術に関するTFも担当して、こちらは昨年創業しました。携帯電話で疲労を測るということで、多方面の方々から関心を持っていただいています。 現在担当しているTFでは、計測標準研究部門の研究者の皆さんと共に、時間周波数の遠隔校正の事業化を目指しています。これはとても産総研らしいプロジェクトです。計測標準は、とても重要なので、ぜひ起業してもっと社会に広めたいと考えています。研究者の方々の長年の熱心なPR活動が功を奏し、ヒットをコツコツ重ねる「堅い商売」と言いますか、堅実なマーケット開拓が期待できそうです。事業化をうまく進めるためには技術が良いだけでは不十分で、顧客を獲得することが不可欠です。国際的にも関心が高い事業になりそうですが、残念ながら先日の震災により資金のめどが立っておらず、資金調達に奔走している状況です。 産総研に来て感じたこと想定したとおりではありますが、研究者の皆さんは個性も目指す方向も違います。実用化やビジネス志向の人もいれば、あくまで研究に軸足を置きたい人もいます。研究者のスタンスや研究テーマによって「成果の出口」を変えていく必要があります。研究成果の社会還元には、当然ながら会社設立以外にも多様な選択肢があるからです。また、良い研究成果がすぐ事業化に結びつくとは限らないし、良い論文を書くことと良い商品を生み出すことでは目指す技術開発の方向が異なることが多いので、「研究」と「(実用化のための)開発」は、別の人間が考えた方が良い場合もあります。そのためにも産総研内外にチームを作り協力して進めていくことが重要です。もちろん私もその一員として今までやってきており、いろいろとアドバイスしてきましたが、それだけでは不十分です。研究者に事業化するとはどういうことなのか、研究活動との違いもあることについて理解してもらうことも重要です。 今後、産総研に期待することベンチャー創業に際しては兼業や利益相反など、研究者が越えねばならない課題があります。私たちSAも創業に際しての出資などに条件や制約があります。公的研究機関としての立場を守りつつベンチャーを起こすには、これらの制約で身動きが取りにくいのも事実です。またこれらの制度の多くは「事業がうまくいくこと」を前提に作られていますが、現実には必ずしもそうとは限りません。そうした点を踏まえれば、今後の制度改善も必要ではないかと思います。 SAとしての時間は残り少なくなってきましたが、今後も時間の許す限り、良い技術シーズを発掘していくつもりです。産総研の中にはきっと良い素材がまだ眠っていると信じています。研究成果を事業化したい、と考えている研究者の方は、ぜひ積極的にアピールしてほしいと思います。 ※注: TF =スタートアップ開発戦略タスクフォース。SAと研究者がチームを組み、通常2年かけて研究成果の事業化を目指すプロジェクト。 |
このページの記事に関する問い合わせ:イノベーション推進本部 ベンチャー開発部 http://unit.aist.go.jp/dsu/ci/
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