目的・社会的背景
空港で車いすを利用する搭乗者が保安検査場を通過する際は、車いすの金属部材が探知機に反応するため、保安検査員のボディーチェックを受けなければならず、時間的、精神的な負担となっています。これを解決する車いすを開発するには、フレームを竹などにするばかりでなく、軸やフットレスト、ブレーキなどの強度部材を非金属製とすることが必要でした。
そこで私たちは日本航空とサン創ing、3者による共同開発をスタートさせました。サン創ingは、日本有数の竹の産地である大分県にあって県の技術支援を受けて竹フレームの車いすを商品化していました。これをベースにして空港用車いすを作りたいと考え、金属を使用せず、竹デザインの良さをそのまま活かした上でJIS走行耐久性試験に合格するために何度もトライ&エラーを繰り返し、完成まで4年近くを費やしました。
開発技術
試験では走行中に車輪が段差に衝突しジャンプして路面に落下する衝撃が20万回繰り返されるため、単なる非金属部品への置き換えでは、応力が車輪のフレーム取り付け部に集中して破断してしまいます。この難題に対し、これまでの車いす(車輪は1点支持でフレームに取り付け)では用いられることのなかった2点支持型キャスター車輪を開発しました(図1)。2点間の長い距離で炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製の軸がたわむことで衝撃を緩和し、応力集中を回避して試験に合格しました。
また、フットレストについては、金属を使用しないと跳ね上げ時に干渉が起きてしまうのを、円筒カム機構※を利用し、跳ね上げると自動的にフットレストが取り付け棒から離れるように設計しました。
さらに、竹やプラスチックなどを用いて駐車ブレーキ時のロック機構を実現するにはカムの強度に問題がありました。この解決に、竹製レバーでタイヤを挟むロック構造を導入しました。これにより、車いすユーザーが弱い握力で握っても十分な制動力を発揮するブレーキを開発できました。
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| 図1 ベースとなった1点支持型キャスター(左)と、開発した2点支持型キャスター(右) |
今後の展開
開発した非金属部品の技術を日本航空とサン創ingに移転しましたので、安定的に製造できるよう、引き続き助言などを行います。この車いすは2011年より大分、羽田、伊丹の各空港に配備、搭乗客に貸与され好評を得られています(図2)。さらに各空港へ展開される予定です。また、今回の成功をきっかけに、製造業のみならず、公共交通などのサービス産業とも連携して、新しい形のイノベーションと国民の安心・安全への貢献に取り組んでいきます。
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| 図2 羽田空港JAL車いす貸し出しカウンターにて |

岩月 徹 いわつき てつ
