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鉛筆で空気電池の空気極を描く

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金属触媒を使わないグラフェン空気極を用いたリチウム空気電池

周 豪慎の写真周 豪慎 Zhou Haoshen しゅう ごうしん
周連絡先
エネルギー技術研究部門
エネルギー界面技術研究グループ 研究グループ長
(つくばセンター)
東京大学大学院工学系研究科
特任教授(兼)(本郷)

1985年中国南京大学卒業、1994年東京大学博士号取得。1994年理化学研究所、1997年旧電子技術総合研究所に入所。現在は物質の表面や界面でのイオンの拡散、挿入、脱離を伴う現象を解明するとともに、クリーンなエネルギー変換デバイスの創出を目指しています。特に、革新的な蓄電池の開発に挑戦しています。

リチウムイオン電池とリチウム空気電池の現状

 現在のリチウムイオン電池には、電気自動車用にはエネルギー密度が足りないという問題があります。そこで、理論上エネルギー密度が高いリチウム空気電池が注目されており、私たちもその研究開発を行っています。リチウム空気電池の空気極は、高温焼結によって作成された金属あるいは金属酸化物などの超微粒子を触媒とし、高い比表面積をもつカーボンを担持ホストとして、接着剤のバインダーなどと混合した触媒層と、撥水(はっすい)処理した空気拡散層から構成されるため、合成プロセスはとても複雑です。

開発したリチウム空気電池

 リチウム空気電池の空気極の開発中に、グラフェンが、酸素還元触媒効果をもつことを見いだしました。鉛筆の芯はグラファイトであり、鉛筆で描画した表面には、グラファイトから剝離したグラフェンが含まれています。そこで、固体電解質の表面に鉛筆で電極を描画してグラフェンを酸素還元触媒とする空気極を直接作成しました。この簡便な手法によって、「金属リチウム/有機電解液/固体電解質/空気極」という構造を作ったところ、不可逆容量が小さく、充放電が可能なリチウム空気電池を実現できました。

 筆跡の重さベースで0.1 A/gまたは0.25 A/gの電流密度で、それぞれ950 mAh/gまたは550 mAh/gの放電容量をもち、15回程度の繰り返し充放電が可能であることを確認しました。

 その後、サイクル特性が劣化するものの、市販の消しゴムで空気極を除去し再度鉛筆で描くという簡単な手順で再生が可能であることも確認しました。

図1
図2
図1 鉛筆で描く空気極とリチウム空気電池のイメージ 図2 図1に対応したリチウム空気電池の充放電曲線

今後の展開

 この研究成果を基に、固体電解質の表面にグラフェンを酸素還元触媒とする空気極を作成するという簡便なプロセスによるリチウム空気電池の実用化、さらに、全固体型リチウム空気電池の実用化を目指して研究開発を進めていく予定です。


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