ゲート絶縁膜の重要性
携帯電話やパソコンなどあらゆる情報機器には集積回路(LSI)が多数搭載されており、そのLSIの中では数億個のトランジスタが高速で演算を行っています。ゲート絶縁膜はこのトランジスタを構成する材料で、電流をスイッチする重要な役目を担っています。ゲート絶縁膜を薄くすると、演算速度が速くなり、動作電圧も下げられるので、LSIの高性能化や低消費電力化につながります。しかし同時に漏れ電流の増大という問題を引き起こし、LSIの大きなエネルギー浪費を招きます。長年にわたってゲート絶縁膜にはシリコン酸化膜(SiO2)が使用されてきましたが、その材料限界が明らかになり、近年ゲート絶縁膜を高誘電率材料に置き換える研究開発が世界中のデバイスメーカーで進められています。
開発したゲート絶縁膜
今回私たちは非晶質膜の結晶化反応に着目して、薄膜内部の伝熱現象を利用した熱処理技術を考案し、高誘電率材料の結晶膜をシリコン基板上に直接合成することに成功しました。
左図は、シリコン基板上に合成した高誘電率材料(ハフニウム酸化物:HfO2)結晶膜の高分解能電子顕微鏡写真です。結晶膜とシリコン基板の結晶格子が直接結合して整列しており、エピタキシャル薄膜が生成していることがわかります。
右図は、電気的に換算した絶縁膜厚(シリコン酸化膜換算膜厚)と漏れ電流の関係です。HfO2結晶の誘電率はSiO2のおよそ5倍の大きさなので、2.5 nm厚さのHfO2結晶膜によって0.5 nmという世界トップクラスの薄さの換算膜厚を実現できました。さらに、厚いHfO2膜にトンネル電流を抑制する効果があるのでSiO2膜の場合に比べて漏れ電流を6桁も小さくすることができました。
この開発ではLSIの製造現場と同等の製造装置を使用しており、製造技術への展開は容易であると考えられます。また、この技術が実用化されれば、今後10年にわたるゲート絶縁膜の開発が大きく前進すると期待しています。
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| シリコン基板上に直接成長した高誘電率結晶膜(HfO2)の電子顕微鏡写真(左)と漏れ電流の比較図(右) | |
今後の予定
今後はプロセス耐性、電気特性のばらつきや信頼性などの系統的な評価へと展開し、低消費電力デバイスの開発に貢献していきたいと考えています。

右田 真司 みぎた しんじ
