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シリーズ:進化し続ける産総研のコーディネーション活動(第15回)
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企業へのより効率的な技術移転に向けて


技術移転マネージャー 門田 芳明(もんでん よしあき)

門田 芳明の写真
打合せ中の筆者(2011 年1 月21日)

技術移転マネージャーへの道

 製薬企業の研究所にて長年創薬研究に従事した後、ライセンス部門に異動し、医薬品導入、国内R&D部門への技術導入、社内開発医薬品の導出、最後は海外グローバル企業の日本の窓口として、日本のバイオベンチャーや公的研究機関からの創薬シーズや基礎技術のライセンス業務に従事しました。

 企業時代は導入側として目利きを行っていましたが、現在は産総研の技術移転マネージャーとして、創薬研究者として培った疾病(しっぺい)の分子機構などの基礎知識やバイオテクノロジー技術、ライセンス部門での経験による製薬企業などのバイオ関連企業が求めているニーズ情報、また多くのバイオベンチャーや基礎研究者の技術・研究を評価してきたことによる研究・技術の目利きを産総研の技術移転に役立てています。

企業への技術移転に向けて

 企業のライセンス部門時代、数多くの公的研究機関やバイオベンチャーの研究者と面談し、研究内容を聞かせていただきました。その大部分が「学術的にはとても興味深く、面白い。しかし、現段階では企業での応用は難しい」あるいは、「あまりにも初期すぎるので、研究ステージを上げてから再度紹介願いたい」との評価結果となってしまい、公的研究機関などと企業との間で大きなギャップがあることを痛感しました。公的研究機関などとの提携窓口として対応されている企業の担当の方は同様の感想をもっていると思います。

 どうすれば、産総研などの公的研究機関から企業へ技術移転、あるいは提携の機会を増やすことができるのか。業界にもよると思いますが、公的研究機関の研究者がもう少し業界状況を理解し、企業のライセンス戦略やニーズを把握して、研究に取り入れる必要があるのではないかと感じています。例えば製薬業界では、医薬品開発は特異なプロセスをもち、また製薬企業は研究戦略や提携に関しても独特な考え方をもちます。研究者がそれらを理解し、研究に取り入れれば、企業とのギャップは小さくなり、提携の機会はより増えるものと思います。産総研技術移転室では今後、産業界情報やニーズの把握に努めていきたいと思っていますが、企業の皆様にも、研究戦略、ライセンス戦略やニーズを積極的に提供していただきたいと思っています。もちろん、企業の経営戦略に密接に関わる内容ですので、限られた情報になるとは思いますが、興味をもっている創薬ターゲットや技術などの詳細な研究ニーズを冊子としてまとめ、公表している製薬グローバル企業などもあるので、提携の機会を増やすために、より踏み込んだ提供を企業の皆様にお願いしたいと思います。

 なお、旧知の企業ライセンス担当者より、「企業が公的研究機関に求めるものは、企業ではもち得ない革新的な技術や、最先端の基礎研究から生み出される新規シーズである」と常々聞かされています。当然ですが、単なる企業ニーズの解決法ではなく、既成観念にとらわれない柔軟な頭脳のまま、企業のニーズをも取り入れた研究に注力しなければ、価値のある提携には結び付かないのは言うまでもありません。

今後に向けて

 日本のバイオ産業が欧米を凌駕し、より発展するためにも、公的研究機関と企業との連携強化は必須だと思われます。その中で産総研に求められている役割は大きいと考えています。産総研の革新的な独自技術・研究を企業に近づけるのは技術移転マネージャーの役割です。今後、より一層企業との懸け橋となるよう活動していきたいと思っています。

表
製薬企業の場合を例とした提携における留意点

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