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1GHz超のEMI試験用暗室の性能評価

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マイクロ波光伝送システムと平面波スペクトル分解を用いた新しい性能評価法

飴谷 充隆の写真飴谷 充隆 あめや みちたか
飴谷連絡先
計測標準研究部門 電磁波計測科
電磁界標準研究室 研究員
(つくばセンター)

2008年の入所以来、ミリ波ホーンアンテナ利得校正システムの開発やEMI用電波暗室性能の高精度評価法に関する研究に従事。今後は、ミリ波帯におけるホーンアンテナ利得標準の維持・供給を継続し、ミリ波帯でアンテナパターン校正システムの開発やEMC分野で電磁波計測技術の高度化に貢献したいと考えています。

EMI試験の現状

 電子機器から放射される電磁波の干渉によるほかの電子機器の誤作動が社会的な問題となっています。電磁波の干渉を防止するには、電子機器から放射される電磁波の強度を商品化前に試験する必要があります。これをエミッション試験またはEMI(Electro Magnetic Interference)試験と呼びます。日本や欧州の規制では、2010年10月よりEMI試験の上限周波数が1 GHzから6 GHzに変更され、これまでの1 GHz以下の測定法とは異なる新たな測定法が必要になります。

 EMI試験は、周囲反射をできるだけ低減するために電波暗室[1]で行います。しかし、反射波の完全な除去は難しく、反射波の混入がEMI測定結果に影響を与えます。したがって、電波暗室の反射性能を定量的に評価することは、正確なEMI測定に不可欠な技術です。また、周波数が高くなると、信号伝送に用いる同軸ケーブルの伝送損失が大きくなり、1 GHz以下の測定で用いていたケーブルでは暗室の性能評価が難しいという問題があります。

開発した性能評価法

 これまでにCISPR[2]などで提案されているEMI暗室性能評価法は、反射波の発生箇所の特定まで考慮していませんでした。私たちは図に示すLN光変調器[3]を用いたマイクロ波光伝送装置を共同開発し、同軸ケーブルによる伝送損失を最小限に抑え18 GHzまでの電界分布測定ができるようになりました。また、電界分布自動測定装置で、ターンテーブル上の電界分布を測定し、平面波スペクトル分解[4]によって反射波の強度と到来方向が推定できます。これらにより1 GHz〜18 GHzの周波数帯にわたり、魚眼カメラで撮影した映像と比較することで反射点の探索が容易にでき、暗室性能改善への手がかりが得られました。

図
マイクロ波光伝送装置と電界分布自動測定装置による電波暗室性能評価の流れ

今後の展開

 今後はマイクロ波光伝送装置をより高周波化するとともに、円筒走査法を導入して測定時間の短縮に取り組む予定です。またこれらの手法を活かして実際のEMI試験測定の高精度化を目指します。


関連情報:
  • 共同研究者
    黒川 悟、小見山 耕司(産総研)
  • 共同研究企業
    住友大阪セメント(株)
  • 参考文献
    M. Ameya et al.: Proceedings of ISAP, 233, 37−40 (2010).
  • 用語説明
    [1] 電波暗室
    外部からの電磁波を遮断し、内部で電磁波が反射しないように設計された部屋。
    [2] CISPR(国際無線障害特別委員会)
    無線障害の原因となる各種機器からの不要電波に関し、その許容値と測定法を国際的に合意することによって国際貿易を促進することを目的として設立されたIEC(国際電気標準会議)の特別委員会。
    [3] LN光変調器
    LiNbO3(ニオブ酸リチウム, LN)の結晶による電気光学効果を利用したデバイス。光信号をマイクロ波で変調し、光ファイバーで伝送する。
    [4] 平面波スペクトル分解
    任意平面の電界分布を、特定方向に伝搬する平面波の重ね合わせで表現する手法。

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