|
シリーズ:進化し続ける産総研のコーディネーション活動(第14回) |
[ PDF:820KB ] | |
新組織体制の中でのベンチャー開発活動 |
スタートアップ・アドバイザー 高橋 通(たかはし とおる)
スタートアップ・アドバイザー(SA)就任の動機私は民間事務機メーカーの開発部門の経験が長く、研究開発の担当役員として新規テーマや新規事業に関わってきました。退職後、産総研の知人に誘われて2007年3月にSAに就任しました。動機と期待は、企業ではできなかった最先端技術に触れることへの知的な興味と刺激です。そして「製品化」「事業化」「起業」といった面のアドバイスで多少なりともお役に立てているかなと思っています。 新組織体制への期待起業志向の技術開発は「R&D(研究と開発)」ではなく、「R for D (開発のための研究)」です。そのため起業アドバイスも「起業前から」より「研究開始当初から」関わる方が、より効果的にアドバイスができると考えています。そう言い続けていたら「それなら知的財産にも関わって欲しい」と言われ、知財コーディネータも兼務してきました。 当時、産総研の研究成果の実用化を橋渡しする組織は技術移転の方法によって知的財産部門、産学官連携推進部門、ベンチャー開発センター、産総研イノベーションズ(いずれも旧称)などがありましたが、組織的に離れていて連携もあまりスムーズではありませんでした。2010年10月にイノベーション推進本部が発足したことで内部組織間の壁は低くなり、より一体的なコーディネーション活動を定常的に行える可能性が増したと思い、新組織に期待しています。 「多才」よりも「多彩」研究から実用化へのさまざまな過程においては、いくら優秀であっても独りの研究者の「多才」では足りず、「多彩」な専門家の協力が不可欠です。われわれSAもただベンチャー起業だけを目指すのではなく、例えば「このテーマはベンチャーより共同開発の方がよい」、「最初はベンチャーを起業して、ある規模で会社を売るのがよい」など、「多彩」な選択肢を提供することで「事業化志向の研究の全過程」に役立つことが求められていると思っています。 実用化のためのスキル民間在籍当時、私が研究者に言い続けたことがあります。「群れるな、頑固たれ。ただし、説得の技術を身につけよ。」です。前半は研究の「心」です。産総研の研究者にはしっかりした「心」をもった人が多く見受けられ、心配はしていません。頑固なくらいでないと独創的な研究はできません。しかし、一旦得た独創研究を「実用化」しようとすると、簡単には理解してもらえないことが多いのが現実です。研究中の「自由」と比べて「不自由と無理解」に癇癪(かんしゃく)を起したり、研究に逃げ帰ったりします。後半の「我慢強い説得」は、研究を実用化へ向け完成させるための「スキル」です。研究者は、「研究の心」を曲げたり騒がせたりせずに淡々とこの「スキル」をこなして欲しいと思います。そのお手伝いをするのもSAの大事な役割です。 ただ、SAとして「研究者の頑固に対応するには頑固を以ってするのが有効」というのも私の経験から得た「スキル」です。そのため、研究者ととことん話し合います。時には大声になることもあります。びっくりされますが相手もその場では引き下がりません。しかしそんな「両者一歩も譲らず」のホットな状態を経ると、次に会った時には確実に何か変わっています。頭が冷えると理解が進むからです。SAと研究者は異なる世界を補完する関係ですから、相互理解が難しい面が当然ありますが、だからこそ必要なパートナーです。SA活動の醍醐味でもあると思っています。 |
このページの記事に関する問い合わせ:イノベーション推進本部 ベンチャー開発部 http://unit.aist.go.jp/dsu/ci/
|