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シリーズ:進化し続ける産総研のコーディネーション活動(第13回) |
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技術の統合を加速しwin–winの連携を — 研究開発機関におけるコーディネーションを見据えて — |
イノベーションコーディネータ 綾 信博(あや のぶひろ)
イノベーションコーディネータへの道1989年に工業技術院 機械技術研究所に入所し、主に超微粒子・ナノ粒子の製造や計測、解析の研究を行ってきました。研究所の企画室での勤務や、フォトン計測・加工技術のプロジェクトに関わった縁もあり、既に産学官連携コーディネータとして活躍していた齊藤 敬三、志村 洋文の両先輩に誘われ、2007年4月から産学官連携推進部門に異動し、2009年11月に産学官連携コーディネータになりました。主に、ナノテクノロジー・材料・製造分野の企業や、包括連携協定の相手方である伊藤忠商事株式会社(以下、「伊藤忠」)を担当しています。また、「粉/粒子」「レーザー」などのキーワードに関係する分野横断的な連携構築にも携わっています。 「粒子」の分野は幅広いことから、工業技術院当時から多くの研究所やさまざまな企業と交流できたこと、企業13社と旧4研究所が参画した「フォトン計測・加工技術」や、「ナノ機能合成」のプロジェクトに関わったことを通じて、内外の多くの方々と本気で議論できたことが、今に活きていると感じています。 コーディネート活動への想い「自分の研究費は自分で獲ってくるものだ」と学生時代に指導教官から教えを受けたこともあり、入所直後からしばらくは外部資金を獲得し、ほぼ一人で仕事をしていました。しかしその後、上述の「フォトン計測・加工技術」のプロジェクトに、調査研究の立案から最後のとりまとめ・評価まで深く関わったことが、チームの総合力で勝負する仕事の面白さを感じるきっかけとなりました。 今は「win−win」の連携、すなわち、富を奪い合うゼロサムではなく、係わる人や組織の皆にメリットがあるような連携の構築を図ることが使命だと認識しています。例えば、包括連携協定を結んでいる伊藤忠との間では、中小中堅企業を含む3〜4社以上の連携による共同研究開発が進められています。この中で伊藤忠は、主に市場調査・ビジネスモデルの構築と研究資金提供を担い、産総研と中小中堅企業などの得意技術の統合によるマーケットを見据えた開発が加速されています。参画者全てが投資した資源以上の利益を享受できることが期待されています。 産学官連携活動は人の輪(和)により形成されるものではありますが、仲良しクラブではなく、時には厳しいディスカッションや交渉を経ます。コーディネータは、ビジネスのプロフェッショナルである企業と、その分野の研究のプロフェッショナルである研究ユニットを結ぶバッファ層としての役割のみならず、時として共同技術開発の企画やマネジメントにも深く係わります。そうした中で、プロフェッショナルにふさわしい仕事をやり遂げることこそが喜びです。連携の構築で終わりではなく結果を求めたい、世の中の役に立つ技術の開発と実用化の一助になりたいと思います。 新たな可能性大田区の中小加工企業の方々との交流を通じて、それぞれの得意分野の個別専門技術を周囲の技術とどう統合するかが大変な課題であることがわかりました。産総研で生み出された先端技術が前工程・後工程の技術と融合できずに実用化されない例も多くみてきました。他方、学術的な研究開発においても、ほかの応用分野では既に解決され産業化にまで至っている課題を、別の分野の学協会ではそれを知らず新しい課題として扱うような例も増えているように感じます。 科学技術が高度化・細分化した中で、高度な技術や知識を統合していくことや新たな適用を実現することが、産業技術の発展には必要不可欠です。コーディネータの仕事の一つは、技術のユーティリティーを向上させ、技術の統合を実現することですが、「人」やその「ネットワーク」の力だけでは自ずと限界があります。私自身、かつては研究者としての立場で、さまざまな技術の所在とその適用範囲を示すナビゲータシステムの開発を行ってきました。 世の中にはさまざまな立場から連携を支援する組織や人材が増えてきていますが、こうした技術や仕組みの開発を推進することは、研究開発機関としての産総研におけるコーディネータにとって独自のミッションの一つになると考えています。産業界や学界の意見を聞きながら、こうした取り組みをコーディネーション活動の一環に位置づけ、ぜひ強力に進めていきたいと考えています。 |
このページの記事に関する問い合わせ:イノベーション推進本部 http://unit.aist.go.jp/collab-pro/ci/coordinator/contact/tsukuba.html
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