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シリーズ:進化し続ける産総研のコーディネーション活動(第12回) |
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研究活動と知的財産の切っても切れない関係 |
イノベーションコーディネータ 山中 裕(やまなか ひろし)
コーディネータへの道もともとは無機系材料の研究者ですが、2005年度の産総研第2期開始時に関西産学官連携センターから知的財産部門に異動したのが知的財産との本格的な付き合いの始まりでした。ここでの2年間は、外部研修をこなしながら、文字通り、オン・ザ・ジョブ・トレーニングの日々でした。関西に戻って知的財産コーディネータに、2010年10月にはイノベーションコーディネータになりましたが、今でも知的財産制度への対応には精一杯の状況です。 研究者にとっての知的財産さて、産総研では学会での口頭発表や論文発表の前に特許出願することが推奨されています。研究成果という共通点をもつ論文と特許ですが、社会的貢献においては、学術面か産業上かという異なった基準をもっています。例えば、個々の例から一般法則を導くと立派な論文ですが、特許では新規性がないという理由で認められにくいものです。特に研究機関の人間にとっては、事業と切り離された知的財産は実感がわきません。 しかし、特許や著作権は社会制度として存在しますので、交通ルールと同様に避けて通れません。権利を行使しないならば特許はなくても問題ないと思われるかもしれませんが、権利範囲が明確でない技術は、安心して使うことができません。研究者としては、リサーチツールの場合などに自分が侵害行為を行ってしまう可能性がありますし、講演や論文で引用を行う場合には著作権の問題が起こり得ます。一方、技術情報としての特許の利用価値も見逃せない点です。 研究機関からの特許の問題研究機関からの出願で問題となるのは、調査が不十分で従来技術との差が不明確なもの、実用化を想定できずに課題が的外れなもの、実施例が少なく権利範囲が限定されてしまうもの、自らの学会発表により新規性を失っているものなどです。逆に、重要な部分に触れずに明細書の記載内容が不備な出願や、権利化が認められないほど広い請求の範囲をもつ出願も問題となります。 知的財産マインドの向上を目指してこのような状況の下、技術移転を念頭において、研究ユニットにおける知的財産戦略策定を支援しています。個々の案件において弁理士との橋渡しをすることで研究者の知的財産マインドの向上に努めながら、質の良い知的財産、すなわち産業界で実施していただくために使いやすい強い知的財産にすることを目指して、知的財産の高度化、周辺特許のポートフォリオ化、ノウハウ化などを検討しています。 知的財産を核とした連携への取り組み研究所にとっての事業戦略は研究戦略そのものです。単に研究ポテンシャルと研究パフォーマンスの向上だけでなく、知的財産戦略も加味されたうえで産学官連携を通して産業界への貢献を目指すような研究戦略でなくてはなりません。産総研では、2010年度から技術移転マネージャーを採用してライセンス交渉や契約にも自ら取り組むなど、明示的に技術移転の強化に取り組んできました。そして10月には、新たにイノベーション推進本部という部署を発足させ、分散していた研究関連業務全般について組織の再構築・強化を図りました。内外からの多様なニーズに専門家のチームで一元的に対応することで、連携協力体制の充実を目指しています。
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このページの記事に関する問い合わせ:関西産学官連携センター http://unit.aist.go.jp/kansai/sangakukan.html
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