福祉機器の現状
現在のさまざまな福祉機器は、障がい者の個々の状態に合わせた特注品として開発されているため、高価であり多くの方が利用しにくい状況です。近年、ネットワーク技術が進み、通常の一体型の機器でも、モジュール化された各機能がネットワークを介して接続された構成になりつつあります。このシステム開発の概念を福祉機器開発に導入することで、一人ひとりに対応した福祉機器が安価に提供されると期待できます。
開発した技術
産総研では、住環境をロボット化した空間型ロボットの開発を進めています。さまざまなロボット要素部品(RT要素)をモジュール化し、それらを統合したシステムの構築を容易にする共通ネットワークプラットフォーム(RTミドルウエア)の開発を行っています。
厚労省障害者自立支援機器等研究開発プロジェクトの下、住宅モデルの設計を株式会社ミサワホーム総合研究所、住環境モデルの評価を国立障害者リハビリテーションセンター研究所に協力頂き、障がい者が自立して住みやすい住環境モデルとして構築しました。
住環境モデルには大きく三つの装置を導入しました。
1.ジェスチャー入力装置は、ステレオカメラを用いて人の動作を検出するために、人体形状を3次元的に高速計算し、高度な動作識別機能を実現しています。このため、身体機能の障がいでリモコンや機器を操作することができない方でも、手や肩、頭部の動きによって命令を送ることができます。
2.音声入力装置は、発話に障がいをもつ方でも操作できるよう、周囲の雑音に強く、不明瞭な音声でも認識可能な音声認識技術を利用しています。
3. アクティブキャスターは、キャスターにモーターを組み込んだ装置で、移動させたい物にこの装置を固定することで、遠隔から容易に操作ができ、ユーザーのニーズに応じてさまざまな物に取り付けることができます。
以上の各装置を初めとして、家電機器を制御する赤外線リモコンなどをRTミドルウエアという共通の枠組みでモジュール化し、住環境内に配置することで、障がいのある方にも使いやすい入力装置で、健常者と同じように家電製品や住宅設備を操作できる住環境モデルとなりました。このように各装置を共通の枠組みでモジュール化することで、図のように、ユーザーに応じて、必要な部分だけを適宜入れ替えられるので、容易に安価なシステムを提供できます。
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| 共通ネットワークプラットフォーム(RTミドルウエア)を介して各機器が連係動作するシステム構成図 |
今後の展開
既に事業化されている福祉機器も含めてモジュール化し、共通ネットワークで利用できるよう進めます。これによって障がい者に限らず、高齢者や健常者の生活の質も向上できるシステムをユーザーレベルでも手軽に構築し、安価に購入できるようになります。今後もモジュール化の技術開発や標準化活動を進めていきます。

谷川 民生 たにかわ たみお