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4Vで動作するカーボンナノチューブ電極キャパシタ

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小型・軽量の高性能マイクロキャパシタへの道を開く

畠 賢治の写真畠 賢治 はた けんじ
畠連絡先
ナノチューブ応用研究センター
上席研究員
(つくばセンター)

東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻修了。工学博士。2003年より産総研旧ナノカーボン研究センターに所属。2005年より旧ナノカーボンチーム長、2008年よりスーパーグロースCNTチーム長(現在は兼務)。世界最先端のナノテクノロジー分野において、研究のための研究ではなく実際の社会に役立つこと、研究を通して社会に貢献することを目指しています。

キャパシタの現状

 キャパシタは化学反応を伴う二次電池と異なり、急速に充放電ができ、劣化が少なく長寿命のデバイスとして注目されています。電気自動車用などに大型・大容量キャパシタの開発が進む一方で、小型家電製品・携帯電子機器・移動体通信などの用途には小型で軽量なキャパシタが必要とされています。

 これまで、キャパシタの電極には、比表面積の大きな活性炭が使用されてきましたが、3 V以下の電圧しかかけられず、寿命が短いという問題があり、活性炭電極に代わる、長寿命、高性能な電極の開発が求められています。

新しいキャパシタ電極の開発

 単層カーボンナノチューブ(CNT)は、繊維状であるため結合剤を使わずにシート化することができ、導電性があり、比表面積が大きく、表面に官能基がないなど、キャパシタ電極として理想的な特性をもつことから研究開発が進められてきました。しかし、これまでの合成法による単層CNTは、不純物を取り除く工程で品質が劣化するため、十分な性能が確認されていませんでした。

 そこで当研究センターでは、スーパーグロース法により合成した炭素純度の高い単層CNTを電極として使用し、活性炭電極と性能を比較しました。

 活性炭電極キャパシタでは、0〜3.5 Vの完全充放電試験を1,000回繰り返すと充電容量は46 %も減少しますが、この単層CNT電極を用いたキャパシタは0〜4 Vの完全充放電試験を1,000回行っても充電容量は3.6 %しか減少しませんでした。

 さらに、導電性が良く集電体を必要としない単層CNT電極をパッケージ化された製品中で使用した場合の性能を試算したところ、市販の電気二重層キャパシタデバイスよりも高いエネルギー密度(17 Wh/kg)、パワー密度(24 kW/kg)でした。一般にキャパシタは二次電池よりもエネルギー密度が小さいのですが、単層CNT電極は、重量当たりのエネルギー密度が市販の鉛二次電池と同程度のデバイスを実現できる可能性があります。集電体を使用しないキャパシタには、軽量化、製作工程の簡素化などのメリットもあります。

図1   図2
図1 単層CNT電極の走査型電子顕微鏡画像(左)と、集電体なしの単層CNT電極を用いたキャパシタの構造(右)   図2 デバイスを作成した場合の性能推定値(従来品との比較)

今後の展開

 高純度単層CNTキャパシタ電極を利用して、高電圧で動作する軽量なマイクロキャパシタの実現を目指します。将来は、小型軽量で高出力を必要とする携帯電子機器やユビキタスデバイスにも応用していきたいと考えています。


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