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シリーズ:進化し続ける産総研のコーディネーション活動(第10回)
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スタートアップ・アドバイザーによる成功確率の高いベンチャー創出活動


スタートアップ・アドバイザー 冨士岡 芳樹(ふじおか よしき)

冨士岡 芳樹の写真
打ち合わせ中の筆者(2010年7月7日)

スタートアップ・アドバイザーとは

 産総研は内外の技術シーズを基に、高い成長性が期待される新規ベンチャー企業を自ら創出し、技術を社会へ移転することを重要なミッションの一つとしています。技術の発明者である研究者と協力して、事業化へ向けた活動(スタートアップ開発戦略タスクフォース、以下TF)を行うのがスタートアップ・アドバイザー(SA)です。SAは、内外の技術シーズの発掘からTFにおけるビジネスモデル・ビジネスプランの構築、創業後の経営面まで一貫して統括します。

SAに就任するまで

 旭化成株式会社で社内の赤字プロジェクトや事業部の建て直し、営業譲渡、および新規事業の立ち上げを数多く手がけてきました。定年退職後、最初は自分で起業するつもりでいたのですが、知人から話をいただき2008年3月、SAに就任しました。現在、三つのTFを担当しています。

顧客に「安心感」を与えるベンチャーを目指す

 「良いものを作れば売れる」と信じている人が多いように感じますが、実際には買い手はその企業の継続性や安定性などを意外に重視します。

 私が旭化成時代に新規事業を立ち上げた際も顧客に安心感を与えることに注力してきました。大企業でもそうなのですから、ベンチャー企業ではなおさらです。特に日本のマーケットで「安心感」はとても重視されます。新製品の採用を決める会議において、「製品の良さ」だけで反対者を説得することはできません。資本金が多い、大企業が出資しているなど、充分なアフターケアや万一商品に不具合が発生した場合でも損害賠償能力があることをアピールして、安心感をもってもらうことが重要なのです。創業に際しては、そういう点を意識して欲しいと思います。

 また、ある程度の資本金が重要なのは顧客に安心感を与えるためだけではありません。製品にもよりますが、創業してから本格的な営業活動を開始したのでは、売り上げを計上するまで、3年程度は見込む必要があります。その期間をもちこたえる資金が必要なのです。ですから、それまでの期間を短縮するために、TF期間中に試作品の提供や共同研究など前もって顧客候補と良好な関係を構築するような、創業前からの努力も重要です。

顧客との付き合い方

 ベンチャービジネスの世界では、研究者つまり「先生」も、「出入りの一業者」になってしまうと思っておいた方が無難でしょう。製品の良さを説明するにしても、あまり居丈高に理屈ばかりを並べていると、聴く側のお客は「こんな良い物を買わない奴は馬鹿だ」と言われているような気分になるかも知れません。自分が物を買う時の判断基準に想像力を巡らせてみてください。

専門外は人に任せる

 産総研と兼業しながら腰掛け感覚で起業を考え、経営陣も周囲の関係者で固めるケースが見うけられますが、これは賛成できません。ベンチャーの起業だけを考えてきた人でさえ成功確率は千三つとはいわないまでも百三つ程度かといわれる世界です。うまく行く可能性は低いと考えるべきでしょう。研究者は、技術開発以外の未経験分野は専門スタッフにまかせるのが望ましいと思います。

研究者に期待すること

 「本格研究」の概念は浸透してきているようですが、いざ創業の話が具体化し始めると研究者の腰が引けていくのを寂しく感じることがあります。

 今まで耳障りなことばかり述べてきましたが、周到な準備をしスタッフを整えて、ベンチャー企業を立ち上げ、成功すれば、途方もない資産と名誉が転がり込んでくるのも事実です。産総研がもっているベンチャー創出・支援の制度はとてもユニークで効果的な制度なので、ベンチャー創出を本気で目指す人が今後も増えてくれることを期待しています。


このページの記事に関する問い合わせ:イノベーション推進本部 ベンチャー開発部 http://unit.aist.go.jp/incs/ci/

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